山の恵み

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ユーレーの旧製品。製品名でいうとルックス・アルビー・スベルト(よく「ズベルト」と書かれていて、私も長い間そう教わってきましたが、これは正しい読み方ではなく「スベルト」が正しい読み方です。)の三種類についてである。
私はいつも古い自転車部品の話を書いているくせにちっとも説明をしないので、たまにはちょっと説明をしようかと思う。ネットオークションでこれらのユーレー製品を「新品」として出品してあるうちのかなりのものが実は新品ではない。ユーレーのこの三種は、基本的に鉄製でクロームメッキが掛けられているので、少しやすりを掛けて磨き、再メッキすれば新品同様に見えてしまう。またこれらを同時代で見ていた経験のない人には、新品がどういう状態なのかわからない。これはしかたないところなので、ポイントになるところを少しお教えする。
もちろん製品情報を知っている者は、完全分解できるこの時期のユ−レー製品を見て「この年代のボディとこのプーリーケージでは年式が合わない」とか「このプーリーが使われたのはもっと後の時代だ」とかいうことがわかってくるのだが、それは頭で覚えたものではなく、まず経験的に直感が働き、「これはなにかおかしい」と先に何かが反応してしまってわかるところも少なくない。でもこれは経験がものをいうところなのであって、それを経験のない人に求めるわけにはいかない。
そこで、わかりやすい方法をお教えする。この二枚の写真をよく見てほしい。いずれもユーレールックスのワイヤー止めの部分である。ワイヤーを止めるのに横穴が開いたボルトが配置されており、それにワイヤーを通してネジで締めるというのはわかりやすいのだが、当時のユーレー製品では、さらに固定を強化するために「コ」の字型の金具が装着されている。この金具が、新品の時には上の写真のように上下が平行になっている。しかし一度使用すると下の写真のようにつぶれてしまうのである。しかも新品では必ず上の写真のような銅色をした短いピンがささっており、これをなぜかたいがいの人は捨ててしまうので、使用した製品にはこれが付いていない。この金具は一度使用したあとに元通りの形にはならないので、ここのつぶれ具合で新品なのかどうかはわかる。
オークションをよく見ていると、この部分がわからないような写真にしている人も何人もいる。そういう場合は要注意である。要注意というのは、一度ワイヤ−を固定したことがあるという程度の新古品ではなく、いくつかの製品を組み替えてそれらしい形にしてある「二個一」「三個一」の場合があるからだ。ユーレーはこれが可能なのである。丁寧に作られた二個一なら問題はない。私だって自分が使うユーレー製品をこのように組み替えることはある。でもそれが使用を前提にするものであれば良いと思うのだが、新品を作り上げて値を上げてやろうとする輩の意図が見える時は腹が立ってしまう。また大好きな部品がそのように金儲けに使われていることに対して悲しみを感じてしまう。
ユーレー三製品のうちスベルト・アルビーは価格が高くないのでこんなことをして新品扱いする人は比較的少ない。アルビーでも古い製品では値が張るのだが、古いアルビーはそもそも新品がほとんどなくなっているので、「アルビー65新品」などとあったらもうそれだけで眉につばを付けているのではと疑ってしまう。だからまず問題はないと言えよう。問題はルックスである。
ルックスという変速機は販売されていた時期がジュビリー発売前までなので、60年代末期までである。(もちろん流通在庫があったので70年代に入っても販売している自転車店はあった。)その頃ルックスがどういう位置づけだったのか。日本製変速機の信頼性が高くなかったことから、スベルトなどは安価なモデルにも多用されていた。日本のメーカー社にもスベルトが採用されたものがいくつもあった。だからスベルトはエントリーモデル用としてよく売れていた。アルビーはもう少しスポーツ製を狙った階層に多く売られた。私も最初のオーダーにはアルビーを採用した。もちろんその決定は自分自身というよりも、自転車を教えてくれた先輩サイクリストたちのアドバイスによるものだった。「これから本気で走るならアルビーを使いなさい。これならどんな山道を走ろうともきちんと対応してくれる信頼できるものだよ。ほらこうやって自分も使っているよ。」こうして教えてくれたのだった。アルビーはだから、本格的に自転車を始めようという人たちに多く使用された。こういう人々は、私もそうだったように、あまりお金を持っているわけではなく、頑丈でなおかつかっこいい自転車がほしいと考えていたのであり、アルビーは金額から見ても格好の変速機だったのである。
ルックスはどうか。ルックスは、アルビーよりもかなり値が張っていた。私の記憶でいえば1970年代当初、スベルトは1500円、アルビーは2500円。そしてルックスは8000円くらいした。ちなみにイデアル90軽合ベース(もちろん黒の内曲がりで4mmベース)も8000円であったので、これはかなり高価な部品だったと言えよう。こういう価格から見ても、学生に買える部品ではなかった。だから当時すでにある程度の収入のある年配サイクリストが買っていた部品だったのだ。そうなると買ったまま使わずに取っておくということがあり得た。私たちはとにかく買ったらその場で取り付けて走り出すものだったのだから。こういう経緯からルックスの新品が今でも突然出てくることは大いにあり得る。また年齢から見ても物故されることもあるので、そういう遺品の中から新品ルックスが出てくることもあり得る。ルックス新品という触れ込みのものが出てくる下地はこういうところにある。
もちろんここだけ見て新品かどうか見分けよなんていうものではない。他にも注意するべきポイントはあるのだが、少なくともここを見るだけでもだまされないで済む人はいるのではないかと思う。
この写真では上は本当に新品、下は中古である。
 
なお、この二枚の写真を見てさらに他のことに気づかれた人がいれば、それはそれで胸の内にとどめておいてください。

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気が付きました。いーじゃないですか!!

ルックスって、下のパンタ?の支点付け根にワイヤーが擦るのが、気になるんです。それじゃ、B.B.下回しなんて凄く擦っている訳ですが。
アルビー式のパンタって、昔教えて貰った技を使わないと・・・一筋縄じゃ動かないのが好きならマゾ?

ステムやシートピラーも、ボルトがホームセンターになっていたり、色々ですね。
酷いと、革サドルで、締めておいてパッと手を離して写し、実際は、大股開き(下品で失礼!!)、器用な写真師もおられる様です。
バージン、もしくは、化粧の要らないティーンかは、吉原通いして・・・

カメラ、余りに調子悪いから、開けてみたらMライカにキャノンの機械が入っていたり、アメ公?梨地ボディに、釘の先端でKEROYONとネーム入れて写真隠し。
これでも、相場の1/10位で買うのが好きな性癖なら、また馬鹿やったの?で済みますがね。

心が洗われる話題で締めます。
本日、「シュッツとバッハ」の声楽、聴いて来ました。パイプオルガン演奏よりオルガン伴奏が良かった。
良く聴こえましたが、一列目が幸いしたのか?教えて頂けますか?

2012/2/18(土) 午後 11:03 [ Keroyon ] 返信する

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なるほどよくわかりました。
当時のアルビー、ルックスの価格差、未だルックスに憧れる人たちのいる訳。
今回のお話は、本来お店の自転車談義でご主人より詳しい常連さんたちから聞くべきものかもしれませんね。
自転車は、口伝の世界に属しているところがあり、普段山の恵みさんがいちいち説明をされないのも理解できます。
こないだは、サンプレの話題できっかけが出来たので、次の一台はと考えています。ただフロントトリプルを動かすのは、サンプレ、定番のカンパ以外の選択肢を模索中です。 削除

2012/2/19(日) 午前 0:09 [ 2694 ] 返信する

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変速機そのものの歴史よりも、こちらのブログでは、使われてきた歴史を語ってもらえることを大変興味深く読ませてもらっています。
昔は、ある変速機を選ぶということがどの店に通い、どんな先輩たちに囲まれ、自分自身どこを走り、何を重視するかまで表現するのだから、現在とは思い入れが違うのでしょう。
部品の区別や蘊蓄より大切で自分には、分かりにくいところだと思います。
またお話聞かせてください。 削除

2012/2/20(月) 午後 11:08 [ 2694 ] 返信する

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あるみって事ね。(心の声) 削除

2012/2/23(木) 午前 0:46 [ くりくり ] 返信する

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心の声に導かれ、世田谷の自転車屋で見たかもしれません、あるみって奴を。
世田谷恐るべしだなあ。 削除

2012/2/24(金) 午後 4:24 [ 2694 ] 返信する

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