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以前さる人をお見舞いに病院に行ったとき、
折悪しく検査か何かで病室にいなかった。
しょうがないので少し待つかとその人のベッドサイドにあった椅子に腰掛け、ベッドに放り出してあったスポーツ新聞を手に取り、特に興味もない記事を目で追っていた。
何気なく隣のベッドを見ると、目に包帯を巻いた中年小肥りの男の人、傍らに娘と思われる小学生の低学年くらいと思しき女の子と、母親だろうと思われる女性。
女の子、無邪気にベッドの周りを駆け回り飛び跳ねる。危なっかしいな。なんて思っていたら、言わぬことはない、ビターンと音を立ててコケた。
それが、僕の座っていた目の前だったので、咄嗟に抱き起こし、大丈夫?と聞いた。
すると、娘、礼も言わず母親の元に駆けていき、その背中に隠れる。
母親が気を遣い、どうもすいません。ほら、ちゃんとお礼言いなさい。とか定型の展開。
いいんですよ。怪我なかったっすか?それよりちょっとお尋ねしたいんですけど、このベッドの人、どこ行ったんですかね?と話の接穂に聞いてみる。
さぁ・・ちょっと分かりませんけど・・。
そうですか。すいません。ここの人、大人しく入院してますか?と病人が帰ってきた時のネタ仕入れ。
母親、微苦笑で、そこの人、病室で隠れてタバコ吸ったり、ベッドの下にお酒隠したりしてよく怒られてますよ、次に何かやったら強制退院だって怒られてましたよ。ここで堪えきれなくなったのか声を出して笑う。
・・ぷぷ。アホや。ええコト聞いた。
少し打ち解け、先程から気になっていたことを聞いた。
あの・・ご主人は何のご病気で?と寝ているか起きているのか分からない旦那さんに気を遣って小声で。
ああ、糖尿病で失明してしまって・・それでもお酒を止めなくて・・もう・・本当に・・と涙声。
しまった・・。聞かでものことを聞いてしまった。ていうか、糖尿病って失明するんだな。
そこから、子供の将来、旦那の仕事、旦那の介護などこれからの心配を山盛り聞かされる。
大変だ。聞いているだけで、絶望に打ちのめされそうだ。
母親の周りで無邪気に遊ぶ娘を見て、危うく涙腺が決壊しそうになり、いたたまれなくなり、あぁもうこんな時間だ、行かないと・・なんて見え透いた嘘をついて病院を後にした。
見舞いに行ったのに、当人には会えずだ。
といった10年以上前の話の、あの日の娘さんがする、またはおそらくしたであろうことが、本当の苦労。彼女には何の非もない、オヤジが酒飲みだっただけ。
一方、ベッキーとかファンキーとかキヨとかノリPとかあの娘さんのオヤジがしたのは、苦労とは言わない。
だって、その前に楽しい思いしてるから。自分がしたいと思ってしたことの結果だから。事が発覚あるいは破れてドツボみたいな顔しているそういう人を何故か励ますやつがいるけど、あれっておかしくない?その影にたくさんのいわれのない被害者がいることを気遣わないと。
鬼借金した奴が、借金の返済をさも大変なことのように言うが、
それは勿論何に遣ったのかにもよるが、その借金が単に遊興費であったりした場合、いくら返済が苦しかろうと、それは苦労とは言わない。楽しんだことの当然の対価としての支払いをしているだけのこと。
苦労とは言わない。
そう考えると、自分も苦労なんてこれっぽっちもしてない。
そんな気がする。
でも、苦しいこともそれなりにあった、とも思う。
じゃああれは何だったんだろう。
どうしてだったんだLOW。
何が原因だったんだLOW。
LOWLOWLOW。
どんどん下へ下へ。
疑問が疑問を呼び、これまで割と明確に掴んだと思っていた答えまで疑わしくなってきて、
うわわ。侵食される。疑問の群れに侵食される。そないなことって、ありません?
「グラスホッパー」 2015年 日本 監督 瀧本智行
婚約者が暴走した車に跳ねられ他界。
生きがいを失くし、茫然自失の日々を送る。
ある日、あれは仕組まれた事故だったと匿名のハガキ。
復讐のために、どこからか送り主も分からぬメッセージにすがり、調べろと言われた組織に潜入を試みる。
みたいな始まり。
様々な人間の思惑が交差し、それぞれの闇をぶつけ合う。
テンポよくて、少しみるつもりが、一気に観た。
善哉。
そう思いました。
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