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忘れてしまいたいことを忘れられず、覚えていたいことを覚えていられず、
とかく人の頭というのは思うままにならない。
コンピュータのように取り敢えず全部覚えておいて、いらない記憶だけ簡単にデリート出来てしまえば、
どれだけ楽だろうかと思うけど、そうできないところに、人間らしさ、個性などが顕れるのであれば、これは出来るようになればなったで困ったものだとも思う。
思い出というのは、感情に付着した記憶で、感情というものが記憶のプライオリティを司っていると思うんですね。
いつまでも覚えているどうにもくだらないことも、その時に大きく感情が動いたことを示唆するし、重要な事のはずなのに、全然覚えていないことは、その時に心ここにあらず、他のことに気を取られていた可能性がある。
感情というOSがその人の記憶を取捨選択する。
ただでさえ少ない容量なのだから、良いことばかり覚えていたいけど、そう都合よくいきません。
負の感情に付着した記憶はオールデリートしてしまいたいけど、感情がある以上それも叶いません。
厭な記憶は地縛霊にも似て、
いつまでも、その人を責め苛むけど、
いつか、時間の中に埋もれ、怨みや憎しみが薄れていき、笑い話に変わる頃、成仏するんじゃないか。とか。
覚えていること忘れていること、そこに個性がね。その人の輪郭がね。なんだったら中身がね。
「her 世界でひとつの彼女」 2013年 アメリカ 監督 スパイク・ジョーンズ
世界でひとつの彼女というタイトルから察せられるとおり、この彼女は人間じゃないんですね。
時代背景は、少し未来、近未来ってやつです。離婚調停中の妻への想い断ち難く、離婚届にサインできず一年に渡る別居生活を送る男が主人公。
心配する仲間が、女性を紹介してくれたりするが、どうにも気持ちが乗らない。
ある日、街中で新しいOSソフトを手に入れる主人公。
これが、メチャンコ賢いOSで、何もかも一瞬で記憶し、その人の考えに沿った提案までしてくる。
しかも人間の気持ちまで理解して、心のある人と変わらない、もしくはこちらの情報を全て持っている分、人以上の話し相手になる。
OS相手に心の中を打ち明けて話す優しい時間を過ごすうち、彼はOSに恋をして、OSも彼に恋をする。
しかし、蜜月は長く続かず・・。
って感じの話ですが、
鑑賞後、藤子不二雄Aの良質人情SF譚を読んだ時と同じような、
どこか寂しく、しかし前向きで、哀しいが、これもきっといい思い出に変わるだろう予感。的な何とも静謐な感動が残りましたよ。
善哉。
そう思いました。
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