札幌医大病院の高度救命救急センターで一昨年夏以降、
多剤耐性緑膿(りょくのう)菌が検出された入院患者のうち、
少なくても十人は院内感染だった。
同病院の発表によると、感染者のうち三人が死亡し、
一人は感染が直接の死因になった可能性があるという。
病院側は当初、院内感染の可能性は低いとしていた。
危機管理意識に甘さがあったのではないか。
緑膿菌は自然界に広く分布する細菌だ。
たとえ医療機関といえども菌が院内に入り込み、繁殖する可能性はある。
ましてや、高度救命救急センターは、抵抗力が弱まった重症患者が治療の対象だ。
センター内の感染予防を、一般病棟以上に徹底しておく必要があったはずだ。
その当たり前とも言えることが実行されていなかった。
外部医師らによる原因究明の調査で、一部の職員は手洗いの励行や手袋、
マスクの着用などを適切に行っていなかったことがわかった。
医療器具を使用するときや患者を介助する際にも、清潔さを保つための配慮が十分ではなかった。
調査報告では、患者がシャワー時に利用する共通ベッドなどの汚染や
カテーテル類挿入時の感染予防策の不徹底が、
感染拡大につながった可能性が高いと結論づけている。
院内感染に対する職員の認識の甘さを指摘したとも言えよう。
感染がわかった後の病院の対応も不十分だった。
昨年五月には三人が相次いで感染していた。
感染経路を調べたが、院内感染を示す情報はなかったといい、抜本的な対策を講じなかった。
多剤耐性緑濃菌は抗生物質が効かず、抵抗力の弱い人が感染すると肺炎などで死亡する場合もある。
その脅威を考えれば、菌の遺伝子検査など徹底調査と追跡が必要だっただろう。
そうすれば、その後の感染拡大を防げた可能性もある。
感染防止の実動部隊となる感染管理室の専任職員が看護師一人だけだったことも、
積極的な対応をとれなかった理由の一つだ。
今月から看護師一人を増員したが全国の高度救命救急センターの中には、
専任の医師を配置しているところもある。さらに拡充に向けた検討が必要だろう。
この問題は、同大の医師が学会に発表する論文の中で、
感染の事実や死亡者数を紹介したことから発覚した。
それまで大学側は感染の事実を公表していなかった。
こうした密室性が市民の医療不信をさらに増大させる。
札幌医大だけではなくすべての医療関係者は留意してほしい。
2008/04/26, 北海道新聞
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