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建築業界、もう一度、官製不況が起こると言われています。
それは何か。
建築士法の改正が現在、段階的に行われています。
最初に書いておきますが、この改正は、内容的にはそれほど悪い改正ではありません。
姉歯事件を受けて、構造設計一級建築士という資格が一級建築士の上に造られました。
これまでは「どんなに大きな建物でも、設計者は一人。」という事が法律の前提になっていたので、デザインも構造も設備も、一人の元請け建築士が全責任を持って設計する事になっていました。
構造設計は、元請け設計者である一級建築士が外注した人(資格は問われない)が行ない、元請け建築士は、その内容の全てを理解した上で、自分の設計図書の一部として使用してい(る事になってい)たのです。
私も含め、普通の真面目な(もしくは臆病な)建築士達は、構造設計を頼むのに素人に頼んだりしません。しかし、営利目的最優先の企業は、「無理を聞いてくれる構造屋」を使っていました。無理を聞いてくれれば、一級建築士だろうが二級だろうが、無資格だろうが構わなかったのです。
私達が外注先として頼んでいる「一級建築士資格を持ち、構造の勉強を修了してきた構造屋さん」は「あれも出来ない、これも出来ない」と言います。
しかし、無資格の構造屋さんはそれほどうるさい事を言わないのでしょう、これまでは便利に使われて来ていました。姉歯さんですら一級建築士を持っているんですよ。その資格を持たない人が構造設計をした建物が日本には大量に建っています。
さて、それらの無資格の構造屋さん達は、今回の法改正で構造設計は出来なくなりました。「計算能力と構造の知識だけは非常に高いのだが、建築士試験にはどうしても合格出来ない」という人もいたかもしれませんが、その保証は誰も出来ません。今回の法改正では、最低限の能力を持つ事を資格試験により証明された者にしか構造設計が出来ない事にしました。
今回の一連の法改正で、数少ない、本当に有意義な改正点です。
しかしここで問題が・・・
私達がこれまで構造の外注を頼んで来た、本物の構造屋さん達に仕事が殺到しています。今まで、デタラメな所に頼んでいた大手が頼み始めたのではないかと思いますが、これだけの建築不況だと言われている中で、構造設計を今すぐ出来る人が見当たりません。
今、私が出したい物件があるのに、知り合い数カ所で3月まで手をつけられない、みたいな事を言われています。
今の市況で、構造設計者が不足しているのです。建築の景気が回復したとしても、おそらく、日本では現在のペース以上で建築は出来ない(小規模な住宅等は除きます)のです。これが何を意味するか・・・。
政府は、今回の法改正については評価されるべきですが、これまでに、構造設計者の育成を怠って来た事は、日本経済に致命傷を与えてしまう政策ミスだったかもしれません。
交通事故を無くしたければ、車を無くせば良いのです。
それをせずに、安全を確保する為にはどうすれば良いか?その知恵を絞るのが政治家であり、官僚である筈です。それが出来ないのなら、彼らは不要です。
あ、そうそう、最後にもう一つ。
親戚の構造屋さんに「それなら、今後、構造屋さんは安泰ですね。人を雇って、高値でどんどん仕事を受ければ良いじゃないですか。」と話したところ、「こんな安い値段で、責任ばかり増えて、もう疲れた、と廃業する人も多い」とか。元々、商売上手ではなく、理系のコツコツと真面目に働く事を信条としている人達。こんな構造屋さん達の性格も、今後の経済的な大惨事の原因となるかもしれません。
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