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何かが起こるとよく官が民を指導するといいます。またマスコミも官は何をしているのかといい官の責任を追及します。官尊民卑の思考になれてこれを無責任な丸投げと言ってはいけないと思います。はたしてそうでしょうか。
プールで残念な事故が起きました。プールを運営していた人たちは管理会社に丸投げしていたことが無責任であるというマスコミの論調ですが、はたしてこの人たちが直接調べていたなら危険性を察知できたのでしょうか。あるいは契約先のやっていることをこの人たちが現場でチェックしていれば問題点を見つけることが出来たのでしょうか。水難訓練の講習を受けた監視員が一人も居なかったというような書類をつきあわせれば見つけられることは出来たかもしれませんが。
金網がはずれたら死亡事故が起こるかもしれない。針金で留めることはボルトでとめることに比べ危険性が高いからこれは危ないと察知できたでしょうか。また現場の監視員がこの危険性を教育されていて何が異常で、異常のレベルに応じて適切な訓練を受けていているか判断できるでしょうか。
恐らく出来なかったと思います。公務員は数年で異動します。昨日まで水道料金や議会など無関係なことを担当してきた人がいきなり、教育委員会に異動したらその職務の中にプールも入っていたというようなことが実態ではなかったでしょうか。公務員の実態ーただ予算を取ってくることだけが仕事で、現場も見ず、汗もかかず、手も動かさないで自分の任期が過ぎるのをひたすら待つーということでは絶対に見つけることは出来ません。
わたしが品質管理を担当してきた経験からいうと何かが起こる前に、その兆候やポテンシャルを見つけるのはかなり研ぎ澄まされた感覚、経験、それになにより熱意が必要です。これは一酸化炭素事故で実際に死亡事故を目の前にしながら手をこまねいていたのに比べ非常に高度な能力が必要となります。こんなことは数年毎に異動する公務員に期待するほうが無理です。
これまでにプール建設以来、このプールに携わった人の中で誰ならこのポテンシャルに気づくチャンスがあった人は誰かと考えてみるとそれはメーカの人ではないでしょうか。労災事故ではハインリッヒの法則があります。一つの死亡事故の背景に29件の重大事故があり、さらにその背後には300件のヒヤリとした事件があるという法則です。
プールを作ったメーカはおそらく過去の事故事例やヒヤリ体験などを持っているはずです。経営者に品質第一のセンスがあり、過去の事例を役立てようとすればこのような能力を持った人の育成が可能です。過去の実績や、信用が重んじられるゆえんです。
あるいはプールの管理を専門にやっている会社があってその会社が危機管理の専門家を育てているならそれも可能でしょう。こういうことには専門性が必要です。社運をかけて育てなければ育ちません。
官に専門性を持たせ責任ある仕事を期待するのは無理ではないかと思います。危機管理専門の民間組織を育て、それに適切な費用を払ってチェックさせる、そして責任をとらせることしかありません。わたしはこの事件の最大の原因はプール管理業務の発注の仕方、発注先の選択が正しくなかったことにあると思います。
最近起こったことで残念なことが2つあります。監査法人が不正に絡んで、不正決算を見抜けなかったことと、建築確認に会社が構造計算の不正を見抜けなかったことです。いずれも高度な専門性の必要な監査業務です。プールの安全管理もこれに劣らず専門性が必要です。官に頼らない民間のチェック機能が正しく機能しなかったことで、これからの日本のために残念でなりません。こういう会社は早く世の中から退出してもらって、強い会社が育つことを祈りたいと思います。
おそらくこの一件も競争入札だったのではないかと思いますが、こんなことが仕様書に書けるのでしょうか。安ければいいというものではありません。官が民を指導するなどという思い上がったことをやめ、民の力を借りる工夫を入札制度上もすべきだと思います。
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