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ヴァン・ヴォークトによるデビュー第2作。


大変興味深いのが、不死人ヘドロックの不死性に関する記述。
私にとって、SFやファンタジー作品に登場する不死人と呼ぶべきもののイメージは

1. 神:唯一絶対の神。本来の不死の存在は、この神のみだろう。
2. 神々:ヤオロズの神よろしく、人から見れば不死にも等しいが、限られた命を持つ存在。不死といえば、 私はこの辺りまでをイメージする。
3. 精霊、妖精、妖怪:物理的な肉体を持つ場合、大変長命な種族で人間に対して無限とも思われる生を持つ。負傷は迅速に回復する。常人や多種族に比較して情緒の変動が薄い。不死と表現されても、結構死んでしまう儚い存在と私は捉えている。この辺りはもう不死人と呼べないのではないか。  
4. キャプテン・アメリカやハルク:超科学的な働きによって身体能力が人間をはるかに凌駕する。負傷も迅速に回復する。CAは冷凍保存によって現代世界に復活したため、長命であるかどうかは不明。明らかに不死ではない。
5. ゾンビ:腐敗、崩壊していく肉体を引きずりながら生きながらえる醜悪な存在。作品によっては急速に死に至るもの、肉体が朽ちた後、魂だけがさまよう存在になるものも?そもそも死んでいる、が長命なゾンビもあるようなので、どう分類したものか。

いずれにせよ、3以下は人間に対してはるかに長命であるが、死そのものからは逃れられていない。全くの不死の存在は、神や神々として描かれるようだが、ギリシャ神話のように死ぬ神々もある。その意味でMarvel作品に登場するソーなどはこれらの不死人たちよりもワンランク上の不死人ということになろうだろうか。

本作を読むと、どうもヘドロックの不死性というものがどれに該当するか判断に苦しむ。面白い不死人である。彼という不死人は作品中たった一人とされており、ミュータントかイレギュラーな存在である。不死の種族の一人ではないため、孤独を抱えており、しかしそれを超越しているかのようでもある。かといって神々ほどに超越しておらず、命の危険にも恐れを感じている。死ぬと上部の存在へ移行し永久に生きながらえる、などという類の不死性は持ち合わせない。それがために生き延びるためのあれこれ足掻きを繰り広げるあたり、やや泥臭くて「不死」人と呼ぶに躊躇しそうだ。分類すれば、4のアメリカやソー辺りなのだろう。


SF作品といえば、壮大な宇宙を飛び回る活劇が一番に想像される。本作品も例に漏れず、宇宙に飛び立ち、異星人とのコンタクトを経験する。驚異の科学力を持ち、人間とは異なる知性をもつ生命体とのせめぎ合いも描かれる。時間SFの要素も巧みに盛り込まれ、バイオテクノロジー的なエピソードもある。半世紀前の作品とはとても思えない贅沢な物語である。
それにも増して現代SF作品の雛型であると強く思わされるのは、本作品が家族の物語であったということだ。これは作品の終盤になって明かされることなので、未読の読者に配慮してここでは詳しくは触れないことにする。StarWarsがアナキンとルークというスカイウォーカーの血筋の物語を軸にしていることは周知のことである。これを持って「スケールの小さなファミリードラマだ」と断じる評論を読んだことがあるが、確かにそれは間違っていない分析である。しかしだからと言ってStarWarsがつまらない作品であると決めつけてしまうのはどうだろうか。私はそうは感じない。SFにせよ、どんなジャンルの作品であれ、人間(人格)が登場する作品に家族や個人の人間性を強く表現することは当然のことであるし、SF作品であってもこの人間表現が巧みに現れている作品こそ良作であると私は考えている。その意味もでStarWarsは素晴らしい作品であり、時代を超えて人に訴えるものを持っているのである。同様に、本作『武器製造業者』は冒頭では全くそのような人間物語の様相を示さなかったように思えて、読み終え、全体を俯瞰してみると、見事に「不死性」という異常な背景を持つが故の人間の苦しみと、死すべきものである普通の人間との間の交流を描いた稀有な作品となっていることに気づくのである。
本作品は、単に時代の最先端を突っ走ったSF作家の実験作などではなく、人間の人格をSFという道具を持って見事に描き出した文学作品といっても良いのではないだろうか。

大げさな書き方であったかもしれないが、現代のスピード感ある文章の作品群を読み慣れた読者には、やや退屈と感じられるかもしれない本作を、是非とも読んでいただきたいと推薦する理由をご理解いただけただろうか。




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