コンピュータ・書評・お仕事の記録

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本書が「本が好き」プロジェクトからの献本として届いた日、いつもと異なるパッケージに先ず驚いた。中には美しいビニール袋に収められた分厚い書籍。ビニール袋を開くと、なんと小さな色紙が。著者からのメッセージが記載され、読者への並並ならぬ熱意と自著への愛情を感じた。
美しいカバー絵、重厚な装丁。気軽に申し込んだ献本依頼には釣り合わない、貴重な書籍を預かってしまったと、正直心配になってしまった。果たして、私は本書に対して適切な書評を記述できるのだろうか?アメリカの、そして彼の国の歴史には関心があるものの、この愛と熱意に溢れた書籍を預かる身として、自分は足りているのだろうか。

しかししかし、こうして申し込み、受け取ってしまったからには全力を持ってこれにあたり、できる限りの出力を持って応じるしかない。そう決心して本書を読み始めた。代表的アメリカ人、シンボル的アメリカ人といえば、私はリンカーンを思い浮かべるが、本書はワシントンを筆頭に挙げ、その人生を物語としてこの大著に綴っている。


私のアメリカ人のイメージは、豪快で、大食で、自由奔放、細かいことは頓着しない、フランクでフレンドリーと言ったものである。これまでに出会ったアメリカ人たちは、概ねこのイメージに当てはまっていた。もちろん例外も少なからずおられたが、その例外的な方々も、努めて私のイメージするような人であろうと努力しているように見えた。ベジタリアンで、内向的で、物静かなアメリカ人は、もちろん日本人だって同様なのだが、少なからずいて、どこか集団の輪に対して距離をとっているように見えた。すなわち、「アメリカ人として好ましく、あるべき姿」は私のイメージと大きくずれてはいないということと考えている。幸か不幸か、アメリカ人を毎週のように観察する機会があるので、この印象はこの10数年強まるばかりである。

フロンティアの国。力と経済力の国。人気者であることを何より希求する人々の国。

私は本書を読むことで、このような私のイメージするアメリカ人の内部、内心、生育歴的なものを理解したいと思っていた。果たして本書はそのような情報や理解を提供してくれるだろうか。


著者をググってみると、次のような解説にたどり着いた。
URL > http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C0%BE%C0%EE%BD%A8%CF%C2
アメリカ史学者。1977年大阪生まれ。2000年南山大学文学部人類学科卒、2002年同大学院修士課程修了、2009年「冷戦レトリックの形成過程 トルーマン大統領のレトリック戦略を中心に」で早稲田大学学術博士。早大助手、大阪大学外国語学部非常勤講師。専門分野はアメリカ政治外交史(冷戦初期)・アメリカ大統領の演説分析。

「本が好き」プロジェクト上に掲載された、著者からのメッセージには、本書の特徴として次のように書かれている。

URL > http://www.honzuki.jp/book/245826/
【著者からのメッセージ】
アメリカという国を作り上げた人々の物語です。他には絶対にない五つの特徴があります。


1、研究者が一般向けに書き起こした歴史読み物
2、大統領を中心に様々な人物が織りなすドラマ
3、日本人のために分かりやすく書いた本格的な通史 
4、時代考証に基づいて描かれた臨場感溢れる再現シーン
5、物語を彩る豊富な地図や挿絵

著者に関する解説と、著者によるメッセージを総合すれば、本書は現在日本で読むことのできる、一般向け専門書、読み物的専門書としてのアメリカ文化、アメリカ史書籍の白眉となるかもしれない一冊と考えられる。それもかなりのボリューム。そして恐らく十数冊に及ぶシリーズとなるであろう作品のまだ序章なのだから恐れ入る。本職をこなしながらこれだけの大著をなすとは、その苦労が思われ敬服するばかりである。

# 類書

類書といえば歴史上の人物の伝記は数多くある。しかし、それらの多くは児童向けであり、大人が読むには物足りない。収益を考えれば、本書の著者ほどの執筆者が、一般向けの伝記を書くことはあまり例を見ない。読んで楽しく、またしっかりと考証されている、これほどのボリュームの一般向け伝記を出版するというのは、出版社としてもかなり冒険ではなかったかと思われる。考えるにつけ、著者とそして出版社に感謝したい。

# 総評

読んだ感触として、これは気さくな大学教授の講義を楽しく聴講している雰囲気。大人の学習書、かつ娯楽書として大変優秀有益である。私の当初の目的、アメリカ人の内部、内心、生育歴的をうかがい知るということは、ある部分叶ったと思われる。つまり、アメリカ人の現実的理想像が、若きワシントンの姿であったろうと理解したことだ。苦学し、社会的に這い上がる野心を持ち、勇敢で人間的欲望を否定せず、しかしガツガツとしたところは恥じるというステレオタイプが、ワシントンから感じられたことだ。もちろん、ステレオタイプであり、全体を網羅したアメリカ人理解ではないことは心得た上で、しかしこれを彼らは決して否定しないであろうと思えたことだ。

読む気力さえ枠ならば、子供にも与えたい、図書館には常備したいシリーズと思われる。

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