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小田実は、「何でも見てやろう」を書いて有名になった。世界中を回り、自分の等身大の目線でものを見て、書いた。べ平連(ベトナムに平和を世界連合)を作り、市民活動を続けた。私も「何でも見てやろう」の精神だけは持ち続けたい。
サモア国立大学日本語科のお手伝いに来てくださいと言われて、さっそく行くことにした。日本文化の一端として、折り紙、習字、海苔巻きつくり、ゆかたの着付け等を授業の中に取り入れて、日本語の理解を深めるのだ。2月から6月までの前期の授業だ。
サモア国立大学は十数年前に日本政府の資金で、アピアの郊外に、広大な敷地のキャンパスと校舎を建設し、3学部(経済、人文、看護)と附属の技術専門学校を擁する、学生数2、000人の現代的な大学として再出発した。門を入ると、大小の椰子の木々、美しく花を咲かせている大きな樹木、灌木の花々が咲き乱れるプロムナードが続く。
刈り込まれた芝生は丘に続き、遠くにも校舎が見える。正面玄関を入ると、大きな楕円形の屋根のファレがどんと構えて、サモアらしい雰囲気だ。式典やイベントに使うため、片側に舞台がある。普段は学生が集会を開いたり、ゼミの授業をしている人影がみえる。
美しい木枠の梁が大きな屋根を支えている。校舎はファレを中心に、渡り廊下でつながっている。教室は先生の権限で鍵がかかっているため、時間待ちの学生はホールや渡り廊下に設けられた木のベンチに坐り、本を読んだり、しゃべったりしている。
そこに坐り、スケッチをしていると、「あなたはアーチストですか」と声をかけられたりして、楽しい。名前や家族のことなどを聞いて、親しくなれる。南太平洋に浮ぶ聞いたこともない島から来ている学生もいるのだ。
語学は英語が中心で、中国語と日本語のみだ。フランス語もドイツ語もあったそうだが先生が不在のため開講できないのだ。日本語教室はLL教室のため、特別にエアコンがついている。椅子や机に小さく日の丸印がついているが、十数年の歳月で色褪せてみえる。
サモア国立大学 正面玄関
先生は日本に2年留学していた、サモア人の若い女の先生と、日本のJICAからの派遣ボランティアの先生の二人だ。テキストは手作りでプリントを渡している。遠い国日本のことを学ぼうとして、「あいうえお」から始め、あいさつが出来、カタカナで自分の名が書けるようになっていく。
私の日本文化を経験する日は、見て、さわり、味わうことができるので、皆楽しみにしていてくれる。折り紙は、色の名前を覚え、和紙の手ざわりを知り、折る、たたむ、ふくらませる、のばす、結ぶ等の動作とともに言葉を覚える。着付けにも海苔巻きでも動作の言葉が使え、なるほど体を使って覚えるとはこういうことだと納得する。ゆかたの帯もうまく結ぶことができるようになった。
学期最後の授業は日本文化を調べ、英語で発表するものだ。先生から本を二、三冊渡され、テーマを選び、インターネットなどで情報を集め、十分程度しゃべるのだ。私は順位を決めるジャッジ3人のうちの1人をさせてもらった。
学生の選んだテーマは日本の食、衣、人口問題、茶道、能、神前結婚、日本の城、雛祭り、日本の宗教と現代の思想等力量に応じて、よく調べて発表した。サモアには本よりもインターネットの時代が急速にやってきて、現代の若者らしく、コンピュータを駆使して、画像で実物をみせて説明するから説得力がある。
教会で牧師の演説を聞き慣れているからか、しゃべるときも日本の学生のように照れたりせず、堂々としているのには感心した。能について発表した学生が一位で、理解の深さ、英語力、構成力もよかった。
見てきたように能について話すので、聞くとDVDで見たそうだ。ともあれ日本を見たこともない若者が、日本文化を調べ発表し、多少深く日本のことを知ってくれたことを嬉しく思った。
茶の湯を発表した学生が利休の「一期一会」のことを話していたが、サモアで学生とこのような機会をもてたことこそ、私の人生でまたとない素晴らしい出会いであったと心から感謝した。そしてこれからのサモアでの人との出会いを大切にしていこうと思った。
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