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ツイアビの里を訪ねて

 
  「パパラギ」という本をご存じだろうか。パパラギとはサモア語で白人のこと、西洋人のことだ。20世紀の初頭宣教師に案内されて、ヨーロッパを訪れたサモア人のマタイ(酋長)の青年がその見聞記を話した。
 
  その内容を、ドイツ人が訳しドイツで出版したところ、ミリオンセラーとなった。 1920年のことだ。その後各国語に訳され、日本でも文庫や子供の絵本になり、また高校の英語の教科書にも使われている。
 
  第一次世界大戦後のヨーロッパが近代文明の最先端にあり、かつ科学や経済万能の社会に人々が少し疑問を投げかける時代状況が、この本の出版の背景にあると言われている。
 
  ツイアビと呼ばれたこの酋長は
パパラギは丸い金属と部厚い紙の金というものを神のようにあがめ、・・・時間を椰子の実を切るときのように細かく分け、どれだけ残っているとか足りないとか騒いでいる・・・病気の人々だ」
と厳しく言っている。
 
  さてサモアに来る前にこの本を読み、今の現実のサモアはどうなのかなと、今もツイアビのような考えは健在なのかを確かめたいと思っていた。しかしゆっくりではあるが、サモアもアメリカを代表とする西欧社会に向かって進んでいる。この本を知るサモア人はほとんどいない。ただツイアビのいた村ティアベアは地図にのっていた。観光地になっているのだろうか。
 
  先日この村へ行くことができた。アピアから海岸沿いに東へ、さらに山に入り、南へ折れ、1時間半ほどで目的の村の入り口ティアベア・タイについた。アスファルトが切れたところからでこぼこ道を3キロメートル程行く。途中歩いている農婦を同乗させてあげ、覚束ないサモア語で会話した。毎日バナナや椰子の木の植えてある農場へ、その手入れのために、この坂道を行き来していることがわかった。
 
  手に50センチメートルほどの草刈り用の刀を持っている。料金所があり、村の女の人が出てきた。入村料車1台で40ターラ(約1500円)をとられた。少し高い。やがて海沿いの村についた。看板も何もない。農婦はツイアビの墓は向こうにあると指さして別れて行った。
 
酋長ツイアビの墓
イメージ 1
 
  息をのむような静かな美しい湾だった。雨季の合間の久しぶりに晴れた日で、海の深緑、うすい青色、砂浜の白いベージュが色分けされてくっきりと輝いている。大きな広い葉の木の並木、椰子の木、砂浜に黄色の花の群、ファレが遠慮がちにいくつか建っている。人の気配はするが、見えない。ツアビイの墓らしき建造物は白くがっしりとした縦長の四角の石で、水色に塗った屋根付きの柱が四本ある。何の文字もない。ただ一基ぽつんと建っている。
 
  私達は黙々と海岸を歩いた。砂は白いが珊瑚や貝殻でざくざくしている。きれいな色の貝殻を背負った小さなやどかりが砂の中にいる。裸足になって歩くと足の裏が痛い。山からの水が海に入るところで、川の流れに足をつける。流木が横たわっている。どこまで行っても何もなさそうなので、木陰に坐って湾の絵を描いた。
 
  風に吹かれて椰子の木の葉が大きくしなっている。海の中に潜って魚を捕る人の黒い姿がみえる。銛を使っているようだ。そういえば浅瀬には漁船が一艘つながっていた。こんな美しい海の中で泳ぎたかったと水着を持ってこなかったことを悔やんだ。海に石を飛ばして遊んだりした。
 
  帰り道白い蚊帳が半分吊ってあるファレに、人の姿があった。手を振ると応えてくれた。海から魚を持って漁師が帰ってきた。子供を連れた若い夫婦らしき人が出てきたので、村のことなど聞いてみた。人口は50人くらいの村だろうか。はっきり答えはかえってこない。
 
  ツアビイという酋長がいたことは知っているらしい。村はかって栄えていたこともあったようで、建設途中でそのままになっている教会か集会場跡もあるらしい。それも何年前のことなのかはわからない。2人は気の良い人なつっこい顔をして、親切に話してくれる。さようならと手を振って別れた。
 
  やはりこの村は観光地化されていなかった。金儲けも時間のやりくりもなく、人々は静かに平和に暮らしている。多分日が昇れば起きて農場へ行く、漁へ行く、畑仕事をして、食事をして暗くなれば寝る。山の崖の草は刈ってあり、車で通る道は用意してある。山際にきれいな花が咲いている。馬が繋いである。
 
  時代に取り残された過疎の村といえば、そうかもしれない。そういえば本の中でツアビイが「パパラギは来なくていい。自分たちはこのままで幸せだ」と言っていたのを守っている村かもしれない。
 
  アピアの町の中は車があふれ、スーパーマーケットには色鮮やかなプラスチック製品が並んでいる。この海岸にはプラスチックごみはひとつもなかった。海と空、椰子の木とファレ、それらの穏やかな気品のある色合いと静けさのある村を見ることができたことに感動した。どうぞこの村がこのまま続きますようにと願いながらこの村を去った。
 
    「パパラギ」日本語版は日本で売っています
    英語版 「PAPALAGI」 パパラギ TUIAVII 
    KODANSHA ENGLISH LIBRARY 、 2007
 
ウポル島南東部に位置する村ティアベア・タイ
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