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文化人類学の講義

 
カルチュアショックという言葉がある。自分と全く異なる文化圏に入ったときに受ける衝撃だ。始めてサモアの市場に入ったとき、体に刺青をしている人やはだしで歩いている人が、自分をじっと見ているようで怖かった。しかし今は普通にみなにこにこしているように思える。
 
  文化はそれぞれの土地に適応するように発展してきた。どんなに不思議に思える習慣もそれを守ってきた人々の暮らしの智恵と事情があるのだろう。サモアに暮らして、1年目、今年の1月にサモアの文化をもっと知りたくてサモア大学の文化人類学のクラスに入った。大学は2月から6月が前期、7月から11月が後期の2学期制だ。
 
  前期だけのクラスがあったので手続きをして、インターナショナル社会人学生として、学生証を受け取った。登録の前日までに、ホールに机と椅子が用意され、担当教官と相談するコーナーが設けられる。その後会計へ自分で行って授業料を支払うしくみだ。
 
  授業料1,025ターラ(約35,000円)、サモア人の学生の4倍もするが仕方がない、しっかり授業を受けることにした。1回1時間半の授業を週3回受ける。先生はサモア人の70歳の文化人類学の学位を持っている男性、学生は私以外にもう一人のインターナショナル学生がいた。といっても顔はサモア人と一緒だ。
 
  トケラウというサモアの北方、船で2日かかるという小さい島出身。その島はニュージーランドの自治領に入っているので、ニュージーランド国籍だという。英語も達者な牧師の娘さんだ。他は皆サモア人15人のクラスだった。
 
  サモア大学へは前から日本語の授業の手伝いに時々来ているので、図書館の人も私を半分は先生、半分は学生として貸し出しの本の期間を長くしてくれるなどの優遇をしてくれた。
 
海辺のファレ
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  授業は「文化とは何か」という定義から始まった。文化は人間のみが持つもので、あるグループの中で親から子へ教えられ、伝えられてきたもの。時代に応じて少しずつ変化発展しながら、その社会の価値観や基盤をつくっているものと教わった。
 
  先生は英語とサモア語の両方を使って、アカデミックなことを大体一方的に話していく。例としてサモアの文化を紹介し、日本のことは突然私に尋ねたりしてくる。質問があるとていねいに応えてくれる。講義だけではなく、エッセイ提出と実際に人々にインタビューしてサモアのマタイ制度や家族制度、経済活動などの実例を集めてくるフィールドワークの課題もあった。
 
  幸い文化人類学者の卵ともいうべき、若い韓国人で、オーストラリアの大学から研究に来ている青年を紹介してもらいフィールドワークを助けてもらった。彼はウポル島とサバイィ島の間にあるアポリマ島という小さい島に住み、その島の自給自足の経済がどのように近代化の影響を受け、変化してきたかの博士論文を書いている。
 
  将来大学で教えることを希望している彼は、1年半のサモア人の家族の中での生活でサモア語もしゃべるようになり、私の通訳をしてくれた。漁船でしか渡れないその島に彼のつてで行き、ファレに泊めて貰いマタイ(酋長)の人から、村の組織や家族、生活のこと等を聞かせてもらった。
 
  クレーターでできたその島は住人80人の桃源郷のような美しい島だった。彼から教えて貰ったサモア研究の本も3冊読み、私のフィールドワークのレポートは無事完成した。
 
  6月に最後の試験があった。9時から12時までの3時間、8問の問題から5問選び、論文形式で答えを書くものだった。サモアの結婚の制度について、親戚関係の歴史的意義、社会における経済の変遷とか、文化の定義とその例をあげよ、等々、若者に交じってなんとか汗をかきながら書き上げた。
 
  世界がグローバル化され繋がり会って来れば来るほど、未知の文化を知りたいという関心が高まり、文化人類学はこれからますます研究される学問であると思った。
 
Samoan Dance
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