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▼註
01;『朝日新聞』16.12.19朝刊3面。安倍さんはまた「世界でもあまり例がないことだ」とも付け加えた。
02;『中日新聞』16.12.5-20:44。
03;『朝日新聞』16.12.26朝刊2面。なお、ウラジオストクでの日露首脳会談後、ロシアのラブロフ外相が北方領土での共同経済活動について「日本側に…議論する用意があると感じた」などとしたのだが、野上官房副長官は「そのような議論はしていない」などと述べて否定していた(時事通信、16.9.3-0:45)。
04;択捉島や国後島で養殖や観光などの産業を育成するという。ロシアは極東開発に注力するため、15年に「先行発展地域」と呼ばれる新しい特区制度を作っている(『朝日新聞』16.6.4朝刊7面)。
06;『朝日新聞』16.11.23朝刊3面。
07;自民党は98年参院選で敗北を喫し、橋本さんは退陣(7月)することになるのだが、後任の首相には橋本政権で外相だった小渕さんが就き、その小渕政権ではそれまで北海道開発庁長官であった鈴木さんが官房副長官に就任したのであり、一連の対露外交は内閣の交代を経ても継続性を担保されていたと言えよう。
08;鈴木さんは田中外相と激しく対立し衆院議運委員長を辞任した後、汚職疑惑を受けて離党(02年3月)、03年総選挙には出馬しなかった(田中氏も外相を更迭され、後に秘書給与問題により議員辞職)。また、東郷和彦、佐藤優両氏などの鈴木さんに近いロシア通の外務官僚もパージされた。
09;『朝日新聞』16.12.16朝刊2面。
10;①健康長寿②都市づくり③中小企業交流④エネルギー⑤産業多様化・生産性向上⑥極東の産業振興・輸出基地化⑦先端技術⑧人的交流、というラインナップ。
11;とはいえ、先月10日、OPEC及びロシアなどOPEC非加盟の主要産油国はウィーンのOPEC本部で閣僚会議を開き、15年ぶりに原油の協調減産(今月から6ヵ月間)を合意(OPECとしては11月末に既に減産を合意)。非加盟国の中ではロシアが減産を主導したのだが(『日経新聞』16.12.11-3:14)、ロシアがそれにより原油価格の値下がりを食い止めようとしているのは明らかだろう。実際、減産合意を受けて原油相場は上昇基調にある。
12;EUは先月、15年2月のミンスク合意(ウクライナ東部紛争の停戦について露、独、仏、ウクライナ4ヵ国首脳が合意)が遵守されていないとして対露経済制裁を7月31日まで延長することを決めた。
13;極東開発の遅れは他にも相次ぐ汚職が原因の一つとなっていると指摘される。ロシアの中でも「辺境」に位置するアルタイ地方や沿海地方では、汚職や賄賂・癒着といった「ゆがみ」が目立っているという(『朝日新聞』16.8.30朝刊8面/.31朝刊10面)。
14;『朝日新聞』16.12.2朝刊13面。
15;『朝日新聞』16.5.18朝刊4面。
16;『朝日新聞』16.6.8朝刊5面。
17;世耕さんは経産省出身の長谷川首相補佐官などとともに昨年初めから「8項目提案」の立案を進め(当時は官房副長官)、経産相に就任(8月2日)すると9月1日からはロシア経済分野協力を特命担当。また、昨年2月16日には参院自民党有志約30人からなる「日露議員懇話会」を立ち上げて会長に就任。同懇話会では松山参院国対委員長が会長代行、野上官房副長官が幹事長を務めており、そのメンバーのうち10人が10〜15日にかけて訪露していて世耕さんはシュワロフ第1副首相やオレシュキン経済発展相、マントゥロフ産業貿易相などと会談。世耕さんのロシアとの関わりは実は長く、05年12月に「日露若手国会議員の会」を設立して会長を務めていた。安倍さんが昨年の内閣改造でロシア通の側近を経産相に充てたのは、「8項目提案」と北方領土での共同経済活動に向けた「ロシア・シフト」であったのだろうか。入閣した世耕さんの後任の官房副長官となった野上さん(ともに参院細田派所属)は「日露若手国会議員の会」にも参加し、日露議員懇話会の幹事長であるだけでなく、昨年9月15日に発足した「ロシア経済分野協力推進会議」(「日・露・中央アジア交流促進会議」のロシア関連部分を改組)の議長でもあり、対露外交を職掌として引き継いだのだったと言えよう。他にも安倍さんはロシア通の鈴木さんから対露外交に関するアドバイスを都度受け、昨年1月22日には原田日露関係担当大使(元駐露大使)を任じるなど「ロシア・シフト」を敷いているのだが、ロシア側では昨年8月に起用されたワイノ大統領府長官(同副長官から昇任)がかつて東京のロシア大使館に勤務し、日本語に長けた知日派である。しかしその他方、これまでほぼ毎年来日するなど知日派の代表格として知られてきたナルイシキン氏は昨年10月に下院議長を退任(後任は大統領府第1副長官だったボロジン氏)、対外情報局(SVR)長官に異動したため、国外での諜報活動を統括するというその職務上、これまでのように「政権の対日関係の窓口役」を務めるのは難しくなったとみられる(『朝日新聞』16.9.24朝刊11面)。また、経済協力でロシア側窓口であったウリュカエフ氏は昨年11月、国営石油最大手ロスネフチからの収賄で拘束(14日)、経済発展相を解任(15日)され、エーリン同省次官が大臣代行(『朝日新聞』16.11.17朝刊13面)を務めたのを経て先月には財務次官だったオレシュキン氏が後任に起用された(30日)。ウリュカエフ氏はロスネフチが国営石油会社バシネフチの株式を取得するのに便宜を図り、見返りを求めたとされたのだが、ロスネフチによるバシネフチ株取得はプーチン氏が認可した案件であってウリュカエフ氏が便宜を図る必要性は乏しい状況だったほか、ウリュカエフ氏に脅された格好のロスネフチのセーチン社長がプーチン氏の「長年の側近」でウリュカエフ氏をはるかに凌ぐ実力者であることなどから「事件の構図自体が不可解だ」とされ、「エネルギー関連企業の民営化をめぐる対立など、政権内部の抗争が背景にある可能性がある」とされた(『朝日新聞』16.11.16朝刊3面)。
18;ところで、近年ロシアでは上述のワイノ氏の前任者のイワノフ前大統領府長官などのプーチン氏側近の退任が相次いでいる。すなわち15年8月にはロシア鉄道会社のウラジーミル・ヤクーニン社長、昨年4月には連邦麻薬取締局のビクトル・イワノフ長官、5月には連邦警護局のエフゲニー・ムロフ長官、7月には連邦税関局のアンドレイ・ベリニヤノフ長官、8月には大統領府長官のセルゲイ・イワノフ氏(前出)が退任したのである(そのうちビクトル・イワノフ氏は連邦麻薬取締局が組織改編で廃止されたことによる退任)。それについては来年の次期大統領選を見据えた世代交代と指摘されており、「自身が立候補しないことも視野に、今から新大統領体制への移行に向けた準備を進めていると見ることもできる」と同時に、「再選をにらみ、うるさ型の有力者を一線から退けることで、自身の権力基盤を固めようとしているという解釈も可能だ」とされている(『朝日新聞』16.8.16朝刊6面)。
19;『朝日新聞』16.11.2朝刊7面。他方、マトビエンコ氏は領土問題についてはロシア側の従来の姿勢を崩さず、北方領土でのロシアの主権下での共同経済活動に言及していた。
20;『朝日新聞』16.11.8朝刊7面。
21;バム鉄道は、モスクワ-ウラジオストク間(9288㎞)のシベリア鉄道に対し「第2シベリア鉄道」と呼ばれる。極東をアジアと欧州などを結ぶ交通・物流の拠点とする狙いから、国営ロシア鉄道会社はシベリア鉄道やバム鉄道の大規模改修を進めているという。また、中国が「一帯一路」を推進していることや中央アジア諸国で経済が発展していることからアジアでは鉄道網の整備(カザフスタンは中国と欧州・中近東を結ぶ「陸の物流ルート」の中継地となることを目指し、中国国境のホルゴス経済特区付近に「ドライポート」(陸の港)を建設)が進んでおり、シベリア鉄道もエカチェリンブルク(シベリア最西部)からカザフスタンを経て中国西部へ(西ルート)、ザバイカリスク(中国およびモンゴルとの国境に近い)から中国北東部へ(北ルート)それぞれ結ばれている(『朝日新聞』16.11.29朝刊11面)。
22;シベリア鉄道は1891年3月末にロシア皇帝アレクサンドル3世が建設の勅書を発布し、5月末に着工されたのだが、その資金は、ドイツ帝国銀行が1887年以来、ロシア債権の引き受けを停止してベルリン金融市場がロシアに対し閉ざされた状態にあったなか(中山治一『帝国主義の開幕』89頁)、主にフランスのパリ金融市場から調達された。着工の前年(1890年)にはフランスの孤立化を進めてきたドイツ宰相ビスマルクが失脚し独露再保障条約が失効したのだが、するとフランスは孤立の打破に動いてロシアとの接近を図った。すなわちフランスはロシアが対仏接近に舵を切るまで、シベリア鉄道建設のためのパリ金融市場での借款供与を拒否するという形でロシアに圧力を加えたのだった(同上96頁)。実際、両国は徐々に接近していくことになり、92年には露仏軍事協定、94年には露仏同盟が結ばれたのだが、シベリア鉄道は今も昔もロシア関連の外交コンテンツとなっていると言えよう。
23;サハリンと北海道を送電線で連結する構想。プーチン氏は「極東のエネルギー資源を安く周辺国に供給し、一大エネルギー圏をつくる構想」を掲げており、9月にウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムでは安倍さんなどを前に地域を「文字通り『つなぐ』事業」による極東の経済統合を唱えた。既に欧州とは石油・ガスパイプラインや送電網で結ばれ、クリミア併合によりエネルギーのロシア依存脱却が探られた後もドイツでガスパイプライン「ノルド・ストリーム」の拡張が進められるなどむしろ相互依存を強める動きも見られているといい、ロシアは「極東でも、似たような関係の構築をねら」っているという(『朝日新聞』16.11.8朝刊7面)。
24;『朝日新聞』16.11.4朝刊3面。ロシアによる東京電力福島第1原発の廃炉技術支援や、日本のIT技術を用いたロシア南西部ボロネジの街づくりなどについては、閣僚級会合の段階で合意。
25;バム鉄道の延伸については、「日本は海運が発達し、欧州便の鉄道へのシフトは進みにくい」ことが指摘されているほか、ロシアの鉄道関係者さえ延伸を「夢物語」と評しているという(『朝日新聞』16.11.29朝刊11面)。
26;エネルギーブリッジ構想は、「巨費の割にメリットが乏しい」ことや「送電網やパイプラインの接続でロシア依存が高まると、それなしで国の経済が立ちゆかなくなりかねない」ことから優先事業には加えられなかった(『朝日新聞』16.11.8朝刊7面)。ところで、6日には米国からシェールガス由来のLNG7万㌧が日本に初めて輸入されたのだが、そうしてエネルギー調達先を多様化することは日本のエネルギー安全保障に適うに違いない。
27;『朝日新聞』16.11.2朝刊7面。JBICとフランスのコファス(COFACE)及びイタリア外国貿易保険(SACE)の計3行による協調融資となり(産経ニュース、16.10.20-7:20)、計6億㌦程のうちJBICは1/3を引き受ける。
28;『朝日新聞』16.12.17朝刊9面。
29;『朝日新聞』16.11.13朝刊3面。
31;12年7月25日の第2回総会で会長に選出され、幹事長には当時衆院議員だった小池都知事(元防衛相)が就いた。議連は超党派で、民進党の榛葉参院国対委員長(元外務副大臣)は副会長。なお、首相に復帰した安倍さんと都知事に転じた小池さんは、ともに活動から離れてしまっているか。
32;ACは96年にカナダ、デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、ロシア、スウェーデン、アメリカの8ヵ国で発足。北極圏の持続可能な開発や環境保護について先住民団体が話し合う機関で、軍事・安全保障は扱われないという。オブザーバー国としては06年10月にイギリス、オランダ、フランス、ドイツ、ポーランド、スペインの6ヵ国、13年5月には日本の他に中国、インド、イタリア、韓国、シンガポールの6ヵ国が加盟。オブザーバー国は評議会の意思決定に直接関わることはできないが、会議で意見を表明することができるほか、北極に関する情報収集が容易になるという利点がある。北極圏には各国の領有権主張を凍結した南極条約のような取り決めがなく、北極評議会の8ヵ国がルールづくりを主導している(『朝日新聞』13.5.16朝刊10面)。
33;『朝日新聞』13.5.16朝刊10面。なお、日本でも文科省が12日、北極海周辺を冬季も含めた通年航行が可能な砕氷観測船を建造する方針を固めた(『朝日新聞』17.1.12-18:56)。砕氷もできる北極観測船は国内初となり、建造費は300億円程度を予定。早ければ18年度から建造に着手するという。
34;アイスランドの国土の0.3%に当たる300平方㌔メートルの土地にゴルフ場とホテルを建設する構想で、中国の投資家は880万㌦での買収を提案。しかし、土地の1/4を所有するアイスランド政府は買収を認めなかったという(『朝日新聞』13.5.16朝刊10面)。
35;「メルマガ」、12.7.25。中国政府はその小学校跡地に総領事館を移転するとしていたのだが、それは市民の反対で中止になった。中国は11年9月、アイスランドでも首都レイキャビクの大使館を約500人が収容できる5階建てビルに移転し「話題になった」という(『朝日新聞』13.5.16朝刊10面)。
36;『朝日新聞』16.5.21朝刊8面。レーン氏は、当時現職閣僚だった島尻前沖縄・北方担当相(海洋政策担当相を兼務)や国交副大臣だった山本元参院幹事長代理とも面会し、意見交換した。
37;『読売新聞』16.10.01-15:00。ロシアは月探査なども視野に宇宙開発を積極化させていてプーチン政権は予算を増額させているのだが、日本との経済協力の中では例えば具体的には、ボストーチヌイ宇宙基地(アムール州)の開発を提案。ロシアはボストーチヌイ基地を現在運用しているバイコヌール宇宙基地(カザフスタン)に代わる新たな主力基地とする方針で、昨年4月28日には同基地からの初のロケット打ち上げを成功裏に遂げた。今後、大型ロケット用の発射台の整備なども計画されているものの、建設工事(12年に開始)を巡る汚職事件があったほか、建設費用は当初の1300億ルーブルから5000億ルーブルに膨張し、さらに25年までに5600億ルーブルを投入する見通しといい(『朝日新聞』16.4.28-15:54)、難航している。なお、ロシアは先月1日、ISSに物資を届ける補給船「プログレスMS04」をバイコヌール基地から打ち上げるのには失敗したのだった(『朝日新聞』16.12.3朝刊13面)。
38;プーチン氏は昨年6月25日に中国の習国家主席と北京で首脳会談し、中国が唱える「一帯一路」とロシアが主導する「ユーラシア経済連合」の連携を確認。また両国は在韓米軍へのTHAAD配備に揃って反対するなど安全保障分野でも協調し、南シナ海問題でロシアは中国が当事国間の解決を主張するのを支持している(『朝日新聞』16.6.26朝刊7面)。
39;『朝日新聞』16.10.18朝刊3面。昨年6月25日には新世代中型運搬ロケット「長征7号」を海南島の文昌衛星発射センター(海南省)から打ち上げるのに成功し(『朝日新聞』16.6.26朝刊7面)、9月25日には世界最大の電波望遠鏡「天眼」(貴州省)が稼働を始めた。「天眼」は「きわめて弱い電波も受信できるため、天体観測や地球外の生命体の探査などが進むと期待されている」という(『朝日新聞』16.9.26朝刊7面)。
40;『朝日新聞』15.11.27朝刊13面。
41;『朝日新聞』16.11.10朝刊6面。「欧米で衛星打ち上げの市場が拡大していることを背景に、国内の打ち上げに関する制度を整えて民間参入をしやすくし、産業育成につなげる狙いがある」という。
42;『朝日新聞』16.12.2朝刊7面。欧米では月の水や小惑星の鉱物資源の開発に関する制度整備が進んでおり、工程表には太陽系内の小惑星にある天然資源の探査や開発をめぐる国際動向の情報収集も含まれたという。
43;先述の党特別委では河村さん(委員長)や塩谷総務会長代行(顧問)といった文科相経験者、山本元沖縄・北方担当相や山口総務副会長(ともに顧問)といった宇宙開発担当相経験者に加えて、今津元防衛庁副長官(委員長代理)、額賀元財務相、中谷前防衛相、浜田元防衛相(以上いずれも顧問)、佐藤正久参院副幹事長(事務局次長)といった国防政策に通じた幹部が名を連ねている。それも、宇宙開発が安全保障と不可分なものであることの表れだろう。
44;『朝日新聞』16.10.18朝刊3面。
45;『朝日新聞』16.3.29朝刊3面。
46;『朝日新聞』16.12.14朝刊2面「時時刻刻」。尖閣諸島が日米安保条約第5条(米国の対日防衛義務)の対象であることを譲れない日本にとって、北方領土を同第6条(米軍が日本国内で施設・区域を使用)の例外とすることは全くあり得ないとすべきであろう。事実、日本政府が返還後の北方領土を日米安保条約の対象外とすることを検討していると一部で報じられたのを受け、安倍さんは昨年10月31日、衆院TPP特別委で「そのような事実は一切ない」と答弁してそれを否定した(『朝日新聞』16.11.1朝刊4面)。
47;『朝日新聞』16.12.17朝刊9面。三菱はグループに米国の地方銀行大手ユニオンバンクを抱えているほか、米国が制裁を科していたイランなどへの送金が規制違反であるとして数百億円規模の和解金を米当局に支払った「苦い経験」もあるという。なお、ガスプロムへの協調融資を行う三井住友銀行の持株会社である三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)では河野雅治元駐露大使が取締役を務めている。
48;ところで、ロシアは広大な国土の東西両面で2正面作戦を展開することが果たしてどこまで可能なのだろうか。第2次世界大戦でソ連が日ソ中立条約を破棄して対日参戦(1945年8月)つまり東部戦線に兵力を投入できるようになったのは、ドイツが降伏(同5月)して西部戦線が収束するのを待つ格好だったのではなかったか。また、かつて露仏同盟によりロシアの同盟国であったフランスが日露戦争(1904〜05)の早期終結に奔走したのも、ロシアが対日戦のため東方に深入りすることで西方が手薄になり、フランスの敵国ドイツへの圧力が減じるのを好まなかったからであっただろう。西方では、ロシアに併合されたクリミア半島や親露分離派による紛擾の起きたウクライナ東部と同様ロシア系住民の多いエストニア、ラトビア、リトアニア(総称して「バルト3国」)で、「ロシア系住民の保護」を理由にロシアの介入を受けるシナリオが現実味を帯び、警戒感が高まっているといい(08年に廃止した徴兵制を15年に復活させたリトアニアでは昨年10月の総選挙で中道左派の社会民主党が敗れ中道右派「農民・緑の同盟」が第1党に躍進したのだが、両党や中道右派「祖国同盟」などの主要政党は「ロシアを主要な安全保障上の脅威と見る点で…一致」しており、国防政策の路線変更はないとみられると指摘された(『朝日新聞』16.10.25朝刊8面))、NATOは昨年7月8日ワルシャワ(ポーランド)で首脳会議を開いて今年からポーランドとバルト3国に、米英独加4ヵ国を中心に最大4000人規模の多国籍部隊を展開すると正式決定(米国がポーランド、英国がエストニア、ドイツがリトアニア、カナダがラトビアで中心的な役割を担うという(『朝日新聞』16.7.9-13:17))し、ルーマニアとポーランドではミサイル防衛(MD)システムの配備を推進。また、軍事費については各加盟国が目標値であるGDP比2%を達成するよう増額することの重要性を確認した(『朝日新聞』16.7.10朝刊5面。現在、GDP比2%を超えているのは加盟28ヵ国の中で米国、ギリシャ、ポーランド、英国、エストニアの5ヵ国)。そしてEUは先月、対露経済制裁を7月31日まで延長することを発表した。NATOのストルテンベルグ事務総長はトランプ氏と昨年11月18日に初めて電話会談を行い「ひとまずNATOの重要性を確認した」(『朝日新聞』16.11.20朝刊7面)のではあったものの、欧州ではロシアに融和的なトランプ氏の大統領就任で米国がNATOへの関与に消極的になることが懸念されるなか独自の安全保障を模索する動きも出ており、NATOは先月ブリュッセルで開かれた外相理事会でEUと安全保障分野などで連携を強化することに合意(NATOとEUは22加盟国が共通で、トランプ氏当選前の昨年7月には既に軍事力強化の共同宣言に調印しており、先月の決定はかねてよりの方針の具体化でもあった(『朝日新聞』16.12.8朝刊11面))するなど、ロシアに対抗する動きを強めつつある。一方、ロシアは昨年10月、バルト海に面した飛び地カリーニングラード(NATO構成国のリトアニア及びポーランドの中間)で軍事演習を行い、核弾頭搭載可能でベルリンを射程内に納める弾道ミサイル「イスカンデル」を配備したのでもあった。しかし剰え先述のように東方で米国を念頭に国境防衛体制を強化し、南方の近東ではシリア内戦への軍事介入を行っているロシアにとって、東西両方で「戦線」を維持するのは本来キャパシティ・オーバーなのかもしれない。プーチン氏が昨年6月、国際経済フォーラム(サンクトペテルブルク)での演説で、対露制裁を科しているEUについて「最も近い隣人であり、重要な貿易のパートナーだ」「歩み寄る姿勢がある」などと述べて関係改善に乗り出す姿勢を明らかにしたのも(『朝日新聞』16.6.18朝刊11面)、ロシアが西方での負担軽減を模索しているのでもあるのを如実に表したのだったろう。
49;ロシアによるクリミア併合やウクライナ東部紛争は武力を用いた現状変更であるとせざるを得ない他方、ロシアが「帝国」として求心力を発揮しているのであると見ることもできるかもしれない。クリミア半島やウクライナ東部は元々ロシア系住民が多かったのであるし、08年8月に起きたジョージア紛争も、親露分離派の南オセチア自治州とアブハジア自治共和国がジョージアからの独立とロシアへの帰属を求めたものであった。また、モルドバ(旧ソ連の一角だがフィリプ内閣が親EU路線を進めていた)では昨年11月13日に行われた大統領選の決戦投票でロシアとの関係改善を訴える社会党のイーゴリ・ドドン氏が小差で勝利し、EUに加盟しているブルガリア(ロシアと同じスラヴ系)でさえ同じ日に行われた大統領選決戦投票で対露関係改善を求める社会党(野党)の推すルメン・ラデフ元空軍司令官が勝利、親欧米路線の与党が推したツェツカ・ツァチェワ議会議長は敗北、ボリソフ首相が辞任を表明したのだった(『朝日新聞』16.11.15朝刊11面)。わけてもクリミア半島とウクライナ、ジョージアでの動きは、プーチン氏の指導下でソ連崩壊の混迷から立ち直り「帝国」へと復活したロシアの求心力に呼応する一種の「民族自決」とも見做すことができるのではないか。ところで、元々ロシアの思惑でオスマン・トルコ帝国から独立(1878)したブルガリア(「大ブルガリア国」)は、しかしロシア主導の汎スラヴ主義には容易に靡かず、親露派のアレクサンダル公を廃位・追放して親独墺派のフェルディナンド1世を迎え(1886)、第2次バルカン戦争(1913)では前年にロシア主導で結ばれた「バルカン同盟」を離脱してセルビアなど同盟諸国と交戦(敗北)、翌年に始まった第1次世界大戦でも同盟国陣営に加わるなどロシアに反発することが意外と多く、現在もEUに加盟しているのであり、先の大統領選決戦投票の結果は予想外であったかもしれない。
50;それはロシアのショイグ国防相が昨年3月に明かしたクリル諸島での海軍基地建設計画が具体化したものであるが、列島の中でも北方領土以外の土地を選んだのは「日本に一定の配慮を示した可能性がある」ともされた(産経ニュース、16.5.28-6:45)。
51;ショイグ氏は既に昨年3月、クリル諸島で「バル」と「バスチオン」および軍事用ドローン「エレロン3」を年内にも配備するとしていた(『朝日新聞』16.3.26朝刊7面)。また、ロシア太平洋艦隊は昨年7月22日、極東沿海地方の演習場で「バスチオン」試射に成功したことを発表していた(産経ニュース、16.7.22-23:36)。稲田防衛相は昨年11月25日、衆院安保委で北方領土の地対艦ミサイルについて「網走あたり、北東部あたりは入る」と述べて、北海道も射程圏内であるとの認識を示した(『朝日新聞』16.11.26朝刊4面)。日本はそもそもロシアからの脅威になお無関係ではなく、14年7月29日には小野寺防衛相が来日中のフランスのルドリアン国防相との会談で、フランスの建造した強襲揚陸艦(「ヘリコプターの空母」)2隻のロシアへの売却を中止するよう求めたこともあった(『朝日新聞』14.7.30朝刊4面。ルドリアン氏はその場では「売却方針は変わらない」との考えを示したのだが、実際には売却されなかったという)。
52;ティラーソン氏は13年、ロシア側からエネルギー分野での協力強化を評価されてプーチン氏の大統領令により「友情賞」(ロシアで外国人に授与される賞としては最高格という)を受けた。また、オバマ政権が14年に始めた対露経済制裁には反対であった(産経ニュース、16.12.13-13:29)。
53;『朝日新聞』16.12.1朝刊12面。
54;昨年2月24日にはプーチン氏とアサド大統領が電話会談して「国連安保理が指定するテロ組織との戦いを続けることが重要だという認識で一致」(『朝日新聞』16.2.25朝刊10面)。ロシアとトルコが主導して先月30日に発効したシリア内戦の停戦協定でもISとシリア征服戦線は対象外とされた。
55;両国は既に昨年7月14日、訪露した米国のケリー国務長官がロシアのラブロフ外相とモスクワで会談、「テロ対策で米ロ協力を進める必要があるとの認識を双方が確認」(『朝日新聞』16.7.16朝刊10面)している。また、ロシアは昨年6月、中国や中央アジア4ヵ国(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン)と構成する上海協力機構としてテロ対策の枠組み強化を検討(『朝日新聞』16.6.24朝刊15面)したほか、日本とも翌7月4日、モスクワで外務省高官による安全保障協議を行い、国際的なテロ対策などで協力を進める方針で一致している(『朝日新聞』16.7.5朝刊11面)。なお、実はテロ対策以外にも米露はこれまでパーシャルには提携することがあり、シリア内戦では昨年2月と9月に停戦協議を主導(2月停戦は2ヵ月、9月停戦は1週間もせずに破綻)し、5月3日にはラブロフ氏がジュネーブに米露共同の停戦監視センターを設けるとした(『朝日新聞』16.5.4朝刊7面)。また、アゼルバイジャン国内のナゴルノ・カラバフ自治州を巡って昨年4月に起きたアゼルバイジャンとアルメニアの紛争では、米露仏が共同議長を務める「ミンスク・グループ」が双方に停戦を呼びかけた(『朝日新聞』16.4.6朝刊11面。停戦は5日に発効)。
56;オバマ氏はまた、長崎に対しては自ら2羽の折り鶴を折り、それは6日、直筆の署名入りの手紙とともにケネディ駐日大使によって東京の在日米大使館で田上市長に届けられた(時事通信、17.1.6-20:49)。
57;『朝日新聞』16.12.16朝刊2面「時時刻刻」。
58;「昨年5月23日の記事」。
59;例えば小泉政権期や東西冷戦期には、日本は同盟国としての米国と密接に連携する一方、ロシアあるいはソ連との関係は冷却。太平洋戦争の際には日ソ中立条約(1941年4月)を結んだ上で南部仏印進駐(同7月)と対英米開戦(同12月)に踏み切った。また、日露戦争以降、日本はロシアとの接近を進め、ついに第4次日露協商(1916)によって米国を仮想敵とする事実上の軍事同盟関係を築いていたのだが、当時は満州問題や第1次世界大戦参戦問題で日米関係や日英同盟関係が動揺していたのだった。
61;時事通信、17.1.8-17:00。安倍さんはその日、長門市にある亡父・安倍晋太郎元官房長官の墓参をし、ロシアとの平和条約締結に向けて成果を出すことを誓った。中曽根政権で3年8ヵ月に渡って外相を務めた安倍晋太郎氏は対ソ外交に尽力し、平和条約締結を「悲願」としていた。なお、安倍さんが言及した「今年前半」の訪露について、ロシアのシュワロフ第1副首相は11日、モスクワでの世耕さんとの会談冒頭で4月になるとの見通しを示した(時事通信、17.1.12-1:19)。
62;『朝日新聞』16.12.14朝刊2面「時時刻刻」。先月15日の首脳会談でプーチン氏が日露2+2の再開を提案したのも「日米同盟にくさびを打ち込む狙いがあるとみられる」とされた(『朝日新聞』16.12.17朝刊2面「時時刻刻」)。また、プーチン政権高官は「1956年当時、日本がソ連に対する制裁に加わっていたら、日ソ共同宣言に署名できただろうか」とし、ロシア外務省幹部は「当時、日本は米国の同盟国ではなかった」ことを指摘しているのだが、それらは日ソ共同宣言(平和条約締結後の歯舞、色丹2島引き渡し義務)に疑問を投げかける内容で、冷戦時代のソ連に「先祖返り」したような主張である。
63;『朝日新聞』16.10.16朝刊7面。
64;経済成長と人口増加により電力需要が旺盛なインドは「原発外交」に積極的でモディ氏は昨年6月4〜9日にかけてアフガニスタン、カタール、スイス、米国、メキシコを歴訪し、そのうち米国ではオバマ氏との会談で米ウェスチングハウス社(東芝の子会社)から原子炉6基を導入することが決まったほか、昨年5月から申請中の「原子力供給国グループ」(NSG)加入について米国、スイス、メキシコからの支持を取り付けるのにも成功(『朝日新聞』16.6.10朝刊13面)し、同11月10〜12日には訪日して安倍さんと会談、日印原子力協定が締結された。なお、NSGの指針によれば、核不拡散条約(NPT)を「不平等条約」だとして拒否しNSGにも加入していないインドは本来核技術に関して外国の協力を得られないのであり、しかし08年から米国主導で「例外扱い」を受けて米国やフランス、日本と原子力協定を結んでいるのが現状である。インドのNSG加入に対し、中国は反対してインドがNPTに加盟するべきことを主張し、インドと核開発を競いカシミール地方の帰属を争うパキスタンは対抗して昨年5月にNSG加入を申請。しかし翌6月にソウル(韓国)で開かれたNSG総会で両国の加入は見送られ、継続審議となった(『朝日新聞』16.6.25朝刊13面)。昨年11月11日にインドが日本と原子力協定を結ぶと同月29日にはパキスタンのアクラム首相特使が来日、薗浦外務副大臣などと面会してNSG加入への支持を求めたのたが、日本がNPT非加盟の核保有国であるパキスタンとの協力に踏み切るのは容易でないとみられるという(『朝日新聞』16.12.2朝刊7面)。
65;ただし、ベトナム政府は昨年11月22日、ニントアン原発計画の撤回を決め、日露双方とも原発輸出事業が頓挫することになった。ベトナムでは昨年4月、親日派として知られるズン氏が首相を退任(後任はフック首相)したのだが、「新体制下で原発の安全性や財政面での不安が議論に上った模様」という(『朝日新聞』16.11.23朝刊3面)。
66;『朝日新聞』16.9.3朝刊6面「けいざい+WORLD」。
67;中山治一『帝国主義の開幕』50〜52頁。
(以上13,299字/合計25,885字)
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