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鍵盤楽器奏者にとって盲点になっているのが「イントネーション」の問題です。
「イントネーション」とは「音高が合っている」という意味の音楽用語で、in-tone(音に入っている)から来ています。
私は昔、ピアノ以外の楽器は皆ほとんど単旋律を奏でていることに気づき、音数の多いピアノに比べて何てラクなんだろうと思ったことがあるのですが、じつはそれはとんでもない間違いで、浅はかな誤認だったのであります!
ピアノ以外の楽器と歌にとっては「イントネーション」が大切で、カザルスは「演奏の本質的な要素の一つである」と言っています。
現在の音階が成立するまでには歴史があり、ピタゴラス音階は純正5度の積み重ねから導かれたもので、横につながったメロディーを弾く時には、この「線的イントネーション」が用いられます。
また和音の成り立ちは、自然倍音によるところが大きいとされ、縦の和音の音程を合わせる時には、倍音の比率から生じる「和声的イントネーション」を使用します。
実際に演奏すると、「線的イントネーション」では平均率に比べて、短2度は狭く、長3度は広く、短6度は狭くなりますが、「和声的イントネーション」では平均率に比べて、短2度は広く、長3度は狭く、短6度は広くなります。驚くべきことに、単旋律を弾く時と、重音や合奏のときでは、まったく逆のイントネーションになってしまうのです。その両者を、自由自在に使い分けているのが、楽器奏者の達人なのですね!
このような微妙な音感は、ピアノを用いたソルフェージュの訓練では身につけることができません。
海野義男は、「名演奏家、優れた弦楽四重奏団やオーケストラ等には共通して美しいイントネーションがある。音楽性ゆたかな人たちは、美しいイントネーションを自然に会得するからである。」と言っています。
自然に会得・・・できたらいいですね!
先日、チェコフィルの室内楽を聴いたとき、弦の出だしの音程がけっこう悪かったのです。
ところが、合奏になると途端に絶妙なハーモニーがぴたりと決まるのです!
あれが美しいイントネーションというものなのでしょうね。
他の楽器奏者から見たら、ピアノ奏者がどんなふうに見えるのか・・・想像するだに恐ろしいですね!
インターネット古書店で『弦楽器のイントネーション』を800円で入手しました。
詳しいことを知りたい方におすすめです。
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はじめてコメントいたします。私はフルートを趣味で吹いていますが、フルートは指遣いさえあっていればそれなりに音が出るので、一人で吹いていると、ピッチとかに対しても鈍感になりやすいような気がします。まして、ここで書かれているイントネーションに至っては、細かく調整することは構造上不可能なのかもしれません。
(いえ、プロのフルーティストであれば、基本のピッチに関しても、A=440Hzと442Hzの違いを聞き分けたりするのでしょうけど)
2009/11/10(火) 午前 6:51 [ ふう ]
ふう様、こんにちわ。コメントありがとうございます。
フルートがご趣味とのこと、いいですね! 私もフルートが好きで、2年ほど習ったことがありますが、今では全然吹けなくなってしまいました。
モダンフルートでは、古楽器のフラウト・トラヴェルソより音高の微調整は難しいと思いますが、ヴィヴラートがかけられるのですから可能なのではないでしょうか。
弦楽器がピアノと合わせる際、正確なイントネーションと平均率の誤差は、ヴィヴラートでカバーしているそうですね。
それにしても日本人が「良いイントネーション」を身につけるのは至難の業ですね。日本人が日本語を話す時、日本語の抑揚など考えずに自然に話していますが、ネイティブのヨーロッパ人は同様に、生まれた時から「良いイントネーション」をたくさん聴いて育っているわけですから、外国人が少しぐらい真似をしても、悲しいかな、なかなかネイティブのようには演奏できませんね。
外国の音楽を演奏することの難しさは、ここに大きな原因があると思います。
でも悲観的になっていても仕方ないので、とにかく良い音楽を聴いて、楽しい音楽を実践していきましょう!
2009/11/10(火) 午後 10:04 [ mus*io*2013 ]