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さて、廻由美子さんが「火の鳥」で演奏しているピアノは、ベーゼンドルファー290(インペリアル)です。彼女はこのピアノをこよなく愛しているそうで、実際に録音のために使われたのは、松本のハーモニーホールの楽器です。
ベーゼンドルファ−290は、エクステンドベースを持っており、普通のピアノより低音部が9鍵多くなっています。このような拡張された鍵盤を持つピアノを弾く場合、低音部に左手が飛ぶときに、目測が狂いそうになり、ドキッとさせられることがあります。やはり無意識のうちに、いつもの鍵盤の感覚を体が覚えているのでしょうね。
このエクステンドベースを持つモデル290インペリアルは、ブゾーニがベーゼンドルファー2代目に相談を持ちかけたことによって誕生しました。ブゾーニ(1866-1924イタリアの作曲家、ピアニスト)は、バッハのオルガン曲を数多くピアノ曲に編曲したのですが、「パッサカリアハ短調BWV582」を編曲する際、オルガンのペダルトーンをピアノで表現するために、どうしてもピアノの超低音が必要になったのでした。
こうして生まれたインペリアルは、弦の数だけではなく、音を響かせるためのピアノの命ともいえる響板の面積も広げることになり、外枠の形も変化したので、他のピアノとの違いが一見してわかります。広い響板は中音域の音色にも影響を与え、中低音域の減衰がゆるやかになり、ベーゼンドルファー特有の音色を与えました。
廻さんの「火の鳥」では、インペリアルの唸るような、地響きのような超低音を聴くことができます。このインペリアルは、バルトークも所有していたそうで、ベーゼンは近代音楽でも活躍しているのですね。ベーゼンの響きは柔らかいので、古典的な曲の方が相応しいかと思っていたのですが、また考えを改めさせられますね。
ベーゼンドルファー290インペリアルのエクステンドベースが活用される曲目を挙げておきます。
1,バルトーク
ピアノ協奏曲第二番(スコアに290の使用を前提とする記述)
ピアノ協奏曲第三番(エクステンドキーの使用を暗示する箇所がある)
2,ブゾーニ
もともとエクステンドキーの開発を求めたので、活用される可能性が多い。
3,ドビュッシー
前奏曲集第一巻「沈める寺」
4,ドホナーニ
ピアノ協奏曲(1889年、第一回ベーゼンドルファーコンクール委嘱作品)
5,マクダウェル
ピアノソナタ第二番 ト短調「エロイカソナタ」
6,リスト
超絶技巧練習曲 第11曲「夕映えの調べ」
7,マルティン
ピアノ協奏曲第二番
8,ムソルグスキー
組曲「展覧会の絵」〜終曲「キエフの大門」
9,ラヴェル
水の戯れ
鏡〜「道化師の朝の歌」
夜のギャスパール〜「スカルボ」
10,ワーグナー
歌劇「パルジファル」をウィーンフィルが上演する際、鐘のパートをチューブラーベルではなく、290インペリアルが受け持つ。
その他にも、演奏者のアイディアでエクステンドキーを使用したり、共鳴弦としての効果をもたらす曲が沢山ありそうです。とにかく作曲家というのは、常に新しい可能性を追求し続けているものなので、やはりみんな試してみているのですね。とくに、ベーゼンドルファーはウィーンで作られているので、ウィーンフィルのこだわりはよくわかりますね。
ところで福岡ではまだこの290インペリアルを見かけたことがないのですが、どこかにあるのでしょうか?ご存知の方は教えてください。どうぞよろしくお願いいたします。九州・山口でもいいですよ。
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