虫撮る人々

虫、クモ、その他小さな生き物を撮る人々の輪が広がるといいなと思う

昆虫

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全126ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]

カメノコテントウとクルミハムシの生と死のドラマ

昆虫記者、日本国内編
〇カメノコテントウとクルミハムシの生と死のドラマ
 5月初めの連休が終わると、昆虫の季節は全開ですが、会社勤めに関しては7月半ばまで祝日がない地獄のような期間に入るわけで、生活面では全壊状態になります。
 週末に高尾方面に出かけたりすると、それはもう、虫だらけで、撮っても、撮っても、撮り切れないほど写真を撮るのですが、休みが少ないのでとても整理しきれない状況に陥ります。ブログを書く時間も厳しくなります。ブログはある意味、撮った虫の写真の保管場所、整理棚的な役割を果たすので、さぼってばかりいると、後が大変になります。
 こんな時になぜかマンションの大規模修繕なんてものが、重なってきて、ベランダの虫と、虫の食樹を片付けなければならなくなって、地獄のような日々です。
 当然、ブログの内容はなげやりにならざるを得ません。
 とりあえずビール、じゃくて、とりあえず何でもいいや、ということで、クルミの木で展開される、弱肉強食、生と死のドラマです。
 初夏のクルミの木の常連と言えば、カメノコテントウとクルミハムシですね。「ですね」って、そんなの聞いたことないという人がほとんどでしょう。
 まずは、テントウムシの幼虫とは思えない、巨大さのカメノコテントウの幼虫です。
f:id:mushikisya:20190616164845j:plain
カメノコテントウの幼虫。クルミ、エノキなどにいる。
f:id:mushikisya:20190616165006j:plain
とてもテントウムシの幼虫とは思えないビッグなカメノコテントウ幼虫
 そしてクルミの木で交尾するカメノコテントウのカップルです。のどかな風景ですね。
f:id:mushikisya:20190616165110j:plain
クルミの葉上で交尾するカメノコテントウのカップ
 そしてお腹パンパンのクルミハムシの♀。
f:id:mushikisya:20190616165251j:plain
クルミハムシの♀のお腹は卵でパンパン
f:id:mushikisya:20190616165339j:plain
よく見るとクルミハムシ♀のお尻に♂がしがみついていました。情けない姿です。
 クルミハムシがどっさり卵を産むと、どっさり幼虫が発生して、クルミの葉はぼろぼろに。昔、学校の理科の時間にやった葉脈標本のようになります。
f:id:mushikisya:20190616165454j:plain
クルミの葉を食べるクルミハムシの幼虫
f:id:mushikisya:20190616165538j:plain
クルミハムシの幼虫に食べられた葉は葉脈標本のように
 水酸化ナトリウム溶液なんか使わずに、ハムシの幼虫を使って葉脈標本を作るのもいいでしょう。でも、最近の理科の先生は女性が多くて、虫が大嫌いな人も多いようなので、無理でしょう。
 
 カメノコテントウとか、クルミハムシとか、のどかな風景を見るためには、高尾駅から延々と歩くか、殺人的に混んだ小仏行きバスに乗るかしなければなりません。
 週末の小仏行きバス乗り場は、こんな大混雑です。
f:id:mushikisya:20190616165722j:plain
高尾駅から小仏行きのバスは大混雑
 終点の小仏も大混雑です。
f:id:mushikisya:20190616165837j:plain
小仏バス停もすごい人に。2台連なって運行するので、乗り切れないことはない。
 ほとんどの人はここから、小仏峠、城山、景信山、高尾山方面へと登っていきます。でも昆虫記者は、ここから登るのではなく、下ることが多いので、小仏バス停から先は、人影もまばらになります。
 
 クルミの木の下にカメノコテントウの蛹がありました。
f:id:mushikisya:20190616170123j:plain
カメノコテントウの蛹
 抜け殻になった蛹の隣には、羽化後間もないカメノコテントウ。
f:id:mushikisya:20190616170217j:plain
蛹の抜け殻と、羽化後間もないカメノコテントウ
 あまりにものどかな自然の営み。そのどこに生と死のドラマがあるのでしょう。
 発見しました。カメノコテントウがクルミハムシの卵らしきものを食べています。
f:id:mushikisya:20190616170346j:plain
クルミハムシの卵らしきものを食べるカメノコテントウ
 そうなんです。テントウムシは肉食の種類が多いのです。ナナホシテントウとか、ナミテントウとかは、アブラムシを主食にしていますが、大型のカメノコテントウは、そんなものではお腹がいっぱいにならないので、ハムシの幼虫を主食にしています。
 その中でも特にお気に入りのお肉が、クルミハムシの幼虫なんですね。幼虫を食べている現場を探したのですが、みつかりません。
 ならばどうするか。カメノコテントウとクルミハムシの幼虫を一緒にして、観察するしかないですね。捕まえて一緒にしてみました。
 気が付いたら、もうカメノコテントウが、クルミハムシの幼虫にかぶりついていました。なんと残酷なのでしょう。動物虐待で訴えられそうです。
f:id:mushikisya:20190616170451j:plain
クルミハムシの幼虫を食べるカメノコテントウ
 しかし、これが自然界の掟なのです。昆虫記者は、研究者としての興味から、ちょっと手を貸したにすぎません。
 人間界では、ハムシはたいてい害虫、肉食テントウは益虫とされていて、ハムシ幼虫の大量虐殺は「益」、つまり良いこととされているのです。良いことをちょっと手助けしたにすぎないのです。
 カメノコテントウは、クルミの木ばかりでなく、エノキにもいます。特に都会ではクルミが少ないので、エノキが定宿です。
 つまり、クルミハムシの幼虫だけでなく、エノキハムシの幼虫も、カメノコテントウの好きなお肉ということになります。
 試しに、クルミの木にいたカメノコテントウを、代用食のエノキハムシの幼虫と同居させてみました。
 すぐにかぶりつきました。
f:id:mushikisya:20190616170644j:plain
エノキハムシの幼虫にかぶりつくカメノコテントウ
f:id:mushikisya:20190616170743j:plain
エノキハムシの幼虫もカメノコテントウにとってはおいしいお肉です
「な、な、なんと、残酷なことをするんだ」と非難の声が上がりそうですね。若干やり過ぎました。反省です。
 でも、これも人間界的判断では善行であり、研究者的には大切な調査です。
 ハムシのお肉をたらふく食べたカメノコテントウは、栄養状態の良さそうなオレンジ色の卵をたくさん産みました。
f:id:mushikisya:20190616170850j:plain
カメノコテントウの卵
f:id:mushikisya:20190616170919j:plain
こちらはクルミハムシの卵と孵化したばかりの幼虫
 でもハムシはもっとたくさん卵を産みます。カメノコテントウがいくら頑張っても、数で圧倒するハムシを駆逐することはできないのです。
 
 ついでにもう一種類、カメノコテントウと同じくらい大型のテントウムシを見つけました。ハラグロオオテントウです。悪そうな名前ですね。
f:id:mushikisya:20190616171101j:plain
ハラグロオオテントウも大型のテントウ
 こちらはクワの大害虫であるクワキジラミの幼虫を食べます。腹黒ですが、益虫、正義の味方なのです。

〇都会の水郷のカルガモ親子とイトトンボ夫婦

昆虫記者、日本国内編
〇都会の水郷のカルガモ親子とイトトンボ夫婦
 今の季節、水辺の公園を回っていると、どこかでカルガモ親子に会うものですが、都会の公園だとテレビ取材班が繰り出すほどの大ニュースになります。都会の人々は自然に飢えているんですね。
 なんてことを言いながら、昆虫記者も東京の都市公園カルガモ親子を見たりすると、飽きることなく眺め続けてしまいます。小さな子供は何でもたいていかわいいものです。そして、少し大きくなると憎たらしくなるものです。
 今年のカルガモ親子との出会いの場は、葛飾区の水元公園でした。「虫撮る人々」なのに、なぜ虫(この公園には山ほどいます)よりもカルガモ親子を優先するかと言うと、虫より圧倒的に鳥の方が人気があるからです。悲しいことですが、事実です。
f:id:mushikisya:20190609103006j:plain
水本公園のカルガモ親子。なんとかわいく、なんと憎らしいのでしょうか
 Hatenaブログのグループでも、昆虫は野鳥に圧倒的大差で敗北しています。悲しいことですが、事実です。
 なぜ、虫が負けるのか。それは親子関係が薄いから。たいていの虫は卵を産みっぱなし(一部のカメムシは卵と幼虫を守ります)ですが、鳥はちゃんと子育てをします。そして、虫の子供(幼虫)はあまりかわいくないケースが多い(一部のイモムシを除く)ですが、鳥の子供(ひな)はたいていかわいいです。
 つまり、昆虫グループが野鳥グループに大差で敗北している主な理由の一つに、カルガモ親子のかわいさがあるということです(頑張れ昆虫グループ)。
f:id:mushikisya:20190609103207j:plain
昆虫グループが野鳥グループに負ける要因はカルガモ親子にあり
 そう考えると、かわいいと思っていたカルガモ親子が、妙に憎たらしくなってきますね。「お前ら、かわい子ぶってるんじゃねえよ」とか叫びたくなりますが、野鳥グループからの激しいバッシングが予想されるので、控えた方がいいでしょう。とりあえず「カルガモ親子は可愛いです」ということで。はい、納得です。
f:id:mushikisya:20190609103326j:plain
 
 水辺の虫の中では、比較的かわいいということで、人気があるのはトンボです。特に細く、小さいイトトンボは、たくさんいて撮りやすく、弱々しく可憐なので、昆虫バッシングの対象にはなりにくい存在ですね。
 水本公園の菖蒲田付近に圧倒的に多いのは、オオイトトンボです。アジアイトトンボやアオモンイトトンボよりはるかに多いです。名前にオオ(大)が付きますが、さして大きくはないので、虫好き以外には全く相手にされません。カルガモ親子に群がるカメラマンたちに、足元のオオイトトンボの存在をアピールしても、足蹴にされるだけです。悲しい。
f:id:mushikisya:20190609103421j:plain
スイレンの葉にとまるオオイトトンボ
f:id:mushikisya:20190609103453j:plain
オオ(大)が付きますが、さして大きくないオオイトトンボです
 しかし、しかし、イトトンボの場合は、カルガモと違って交尾や産卵の様子を簡単に見ることができるのです。地球の自然の営みを目の当たりにすることが、いとも簡単にできるのです。鳥の交尾なんて、ほんの一瞬、♂が♀の背後でバタバタやったら終わりですが、イトトンボは、♂♀の長い尾が結び合ってハート型を作って、ねちっこく交尾します。しかも、産卵の際にも、♂が♀の首根っこをがっちりホールドした態勢で、立ち合い出産するのです。「これはもう、感動ものですね」なんて言っても、カルガモ撮影隊は振り向いてもくれません。悲しい。
f:id:mushikisya:20190609103800j:plain
交尾中のオオイトトンボ、右のカップルのハート型の絡みに注目
f:id:mushikisya:20190609103948j:plain
オオイトトンボの産卵
f:id:mushikisya:20190609104059j:plain
細い水草に卵を産み付けているのが分かります
 たまに赤いイトトンボがいますが、たいていはアジアイトトンボとかの幼体です。大人になっても赤いベニイトトンボは東京では非常に少なくなっています。
f:id:mushikisya:20190609104150j:plain
よく見かける赤いイトトンボはたいてい幼体
 
 こちらは、オオイトトンボよりかなり地味なクロイトトンボです。「交尾、出産の感動シーン」なんて言う昆虫記者の声も、だんだんと糸のようにかぼそくなってきます。もはや誰の耳にもとどきません。悲しさの極致です。
f:id:mushikisya:20190609104438j:plain
クロイトトンボの交尾
f:id:mushikisya:20190609104508j:plain
クロイトトンボの産卵
 ええい、やけくそだ。こうなったら、水辺の汚らしい虫で報復だ。
 というわけで、スイレンの隙間に浮かぶヒシの葉を食い荒らすジュンサイハムシの群れです。
f:id:mushikisya:20190609104543j:plain
スイレンの葉の隙間に何やら汚らしい集団が
f:id:mushikisya:20190609104629j:plain
ヒシの葉を食べるジュンサイハムシの群れでした
 おっと、いけない。これでは昆虫グループがさらに苦境に陥りますね。ならば、水辺の葦原で見られる金色のハムシはどうでしょう。スゲハムシの仲間です。
f:id:mushikisya:20190609104720j:plain
スゲハムシの仲間
 湿地に多く生えるハンノキにも、昆虫グループを支える虫がいます。ミドリシジミですね。今頃はキラキラと緑色に輝く羽で飛び回っていることでしょう。しかし、昆虫記者が水元公園ミドリシジミに出会ったのは、5月中旬なので、まだイモムシです。
f:id:mushikisya:20190609104754j:plain
ミドリシジミの幼虫
f:id:mushikisya:20190609104842j:plain
ミドリシジミの幼虫は、ハンノキの葉のこんな隠れ家の中にいます
 だれにも注目されない悲しいイモムシですね。
 鳥にも、虫にも興味のない人々にとっても、水元公園は憩いの場です。広い水辺を眺めていると気分が晴れやかになります。昆虫グループの苦境で気分が落ち込んだ時にも、こういう景色は役立ちます。
f:id:mushikisya:20190609105158j:plain
f:id:mushikisya:20190609105242j:plain
f:id:mushikisya:20190609105255j:plain
 都会の喧騒に疲れたら、ぜひ都会の水郷で傷ついた心を休めて下さい。

葛西で崩れ去ったビロードの夢とイモムシ超百科

 わが家からバス1本で行ける葛西臨海公園は、週末の朝に寝坊した時の定番スポットです。
 葛西と言えば、葛西臨海水族園。でも入園料700円はとても払えないので、9月15日からの高齢者無料週間にでも行こうと思います。
f:id:mushikisya:20190602165409j:plain
葛西臨海水族館。柵の外から撮ったまるで入場したかのような写真
 その水族館脇のクスノキで見つけたのがビロードハマキの幼虫。葉っぱが何枚か束ねてあったので、不審に思って中を覗き込むと。
f:id:mushikisya:20190602165548j:plain
 ジャジャーン。いました。ビロードハマキの幼虫です。まず、名前がいいですね。ビロードのソファーに座って、葉巻をくゆらす。かつての大富豪の生活が思い浮かびます。
f:id:mushikisya:20190602165611j:plain
重なった葉の中に隠れていたビロードハマキの幼虫
 
f:id:mushikisya:20190602165713j:plain
夏向きの涼しげな色合いのビロードハマキ幼虫
 大富豪は700円をけちったりしないものですが、昆虫記者は大富豪ではないので、けちります。葛西臨海水族館は、最初の大きな門を入ると、滝のように水の流れ落ちる壁に面した広場があるのですが、ここまでは無料です。この無料の空間にギフトショップがあり、ギフトショップの裏には、自販機が並んだ屋根付きの休憩スペースがあります。
f:id:mushikisya:20190602165847j:plain
臨海水族館入口の滝のような壁
f:id:mushikisya:20190602170027j:plain
f:id:mushikisya:20190602170058j:plain
ギフトショップ裏の休憩スペース。ここまでは無料で入れる
 この無料の休憩スペースは、空いていて非常に過ごしやすいところです。700円を惜しむ貧乏人には最適の休憩所ですね。
f:id:mushikisya:20190602170954j:plain
青い表示のゲートから先が有料となります。
 
 話をビロードハマキに戻します。幼虫は夏向きのすがすがしい色合いです。薄黄色のレモネードの中にタピオカの粒が浮かんでいるようですね。
 持ち帰ったら、すぐに蛹室を作って、その中で、蛹になりました。透明なハンモックに揺られて、宙に浮かんでいるような状態は気持ちよさそうです。
f:id:mushikisya:20190602170221j:plain
葉を束ねた蛹室
 
f:id:mushikisya:20190602170249j:plain
宙に浮かぶビロードハマキの蛹
 そして成虫は、これまた美しいこんな姿になるはずでした。
f:id:mushikisya:20190602170343j:plain
ビロードハマキ成虫はこんな姿になるはずでした。
 
 しかし、しばらくして蛹室を開いてみると、寄生蜂か寄生蝿の蛹が転がっているだけでした。大富豪の夢はおろか、きれいな蛾を羽化させる夢さえも、かなわなかったのでした。
 なぜそんな不幸に見舞われなければならないのか。よく考えてみると、前回の鎌倉恐怖体験編で、イノウエケイコさんの著書を紹介するつもりで、結局失念してしまったことに思い当たりました。
 こうした不義理が、不幸を招くのですね。
 ということで、ここでイノウエさんの御著書の「キモカワ!イモムシ超百科」を紹介します。
f:id:mushikisya:20190602170451j:plain
モカワ!イモムシ超百科。幼虫、蛹、食痕、成虫等、すべてが分かる超百科です。
 
 もちろん、ビロードハマキも紹介されていて、「宙に浮いているようで神秘的」な蛹の写真も掲載されていました。
f:id:mushikisya:20190602170711j:plain
イモムシ超百科、ビロードハマキのページです。
 さすがイモムシ専門家。
引っ越し予定のはてなブログからの転載です
〇鎌倉の休日の恐怖体験、首だけの蛇と骸骨
 「北鎌倉で降りて歩いてみませんか」なんていう歌詞がありましたね。「源氏山から北鎌倉へ、あの日と同じ道程で」なんていう歌詞もありました。
 北鎌倉駅前は、鎌倉駅前とは全く違って、ひっそりと静まり返ったところです。列車が到着すると、観光客がたくさん降りてきますが、目指すのは神社仏閣なので、たいてい裏側の出口から出て、円覚寺、明月院方面へと向かいます。駅前には、派手なカフェやレストランや土産物屋なんかは、ほとんどありません。閑静な街並みを維持する努力があるのでしょう。
 しかし、昆虫記者一行は、駅の目の前の円覚寺には行きません。すぐ近くの明月院にもいきません。縁切寺の東慶寺になど、絶対行きません。足を延ばして建長寺にも行きません。
 なにせ、狙いはイモムシ、毛虫ですから。どうしてこうなったかと言うと、イモムシ専門家のイノウエケイコさんが、旅に参加しているからです。
 それはそれは、恐ろしい、おどろおどろしい、イモムシ、毛虫旅になることが予想されますね。
 ということで、最初の画像は、クヌギの木の洞から顔を出したアオダイショウです。
f:id:mushikisya:20190602115250j:plain
木の洞から顔を出すアオダイショウ。地獄の門番のようです。
「うわー、やめてくれー」という悲鳴が聞こえてきます。せっかく読者になってくれた人々が雪崩を打って、あるいは潮が引くように、去っていく様子が目に浮かびます。
 これもみな、イノウエケイコさんのせいです。イモムシ、毛虫を見ると鳥肌が立つという人は「ここで引き返した方が身のため」という警告ですね。
 閑散とした北鎌倉駅前から、静かな山道へと分け入っていきます。
f:id:mushikisya:20190602115500j:plain
閑散とした北鎌倉駅前
 するとすぐに現れたのは、どくろ顔のヒロバトガリエダシャク幼虫。ここから先は危険という表示ですね。イノウエケイコさんのようなエキスパートが一緒でないと、立ち入り禁止の危険地帯ということです。
f:id:mushikisya:20190602115537j:plain
どくろ顔のヒロバトガリエダシャク幼虫
f:id:mushikisya:20190602115626j:plain
気の弱い人は帰れと威嚇するヒロバトガリエダシャク
 今ならまだ引き返せます。気の弱い人は、今からでも駅裏に回って、円覚寺と明月院に行きましょう。
f:id:mushikisya:20190602115725j:plain
円覚寺には行きません。
f:id:mushikisya:20190602115801j:plain
明月院にも行きません。
 しかしイノウエさんは前進します。すると、頭に血痕のついた黒い毛虫が現れました。ヒメヤママユの若齢幼虫です。
f:id:mushikisya:20190602115840j:plain
頭に血の赤がにじむのはヒメヤママユの若齢幼虫
f:id:mushikisya:20190602115926j:plain
この時期を過ぎるとただの緑色の毛虫になってしまうヒメヤママユ
 ミズキの葉を巻いていたのは、キアシドクガの毛虫幼虫。
f:id:mushikisya:20190602120036j:plain
ミズキに多いキアシドクガ幼虫。1本の木に百匹ぐらいいることも。
 せっかく鎌倉に来て、おしゃれなカフェも、土産物屋も、なーんにもない山道で、毛虫を撮影する人々って、どうなんでしょう。
 キアシドクガにカメラを向けているのがイノウエケイコさんです。その後ろで、カメラ操作など指導しているのが、昆虫写真家の森上信夫さんです。
f:id:mushikisya:20190602120233j:plain
イノウエケイコさんと森上信夫さん
 その後も次々と、イノウエさんにとっては可愛い、一般人にとってはおぞましいイモムシ、毛虫が次々に登場しました。
f:id:mushikisya:20190602120356j:plain
オオノコメエダシャクの幼虫
f:id:mushikisya:20190602120438j:plain
シャクガの仲間は歩かせれば分かるそうです。
 
f:id:mushikisya:20190602122046j:plain
たぶんヒメノコメエダシャクの幼虫
 
f:id:mushikisya:20190602120624j:plain
オカモトトゲエダシャクの幼虫
 
f:id:mushikisya:20190602120740j:plain
チャバネフユエダシャクの幼虫
 
f:id:mushikisya:20190602120811j:plain
たぶんヒロオビトンボエダシャクの幼虫
 
f:id:mushikisya:20190602120855j:plain
フクラスズメの幼虫
 
 最後は、お口直しに、ちょっと素敵な蝶で締めましょう。エノキの若葉に擬態していると思われるアカボシゴマダラ春型の終齢幼虫です。
f:id:mushikisya:20190602121005j:plain
アカボシゴマダラ春型の幼虫はエノキの若葉に擬態
 春型幼虫は若葉色にほのかにピンク色を乗せて、芽吹いたばかりの葉に体色を合わせています。アカボシゴマダラは成虫の蝶も、春型と夏型で別の種類のように、色合いが違いますね。
f:id:mushikisya:20190602121048j:plain
アカボシゴマダラ成虫の春型(上)と夏型(下)。別の種類のように見えます。
 お口直しの蝶はいかがだったでしょうか。と言っても、すでにこの記事を見ている人はほぼセロのなっているのではないかと懸念されます。すべてイノウエさんのせいです。
 そしていよいよ、地獄旅も終わり、源氏山経由で寿福寺裏の出口、寿福寺トンネルへ。
f:id:mushikisya:20190602121227j:plain
地獄門のような寿福寺トンネル
 まさに地獄旅にふさわしい、地獄門のような出口ですね。裏側には、鎌倉時代の墓である「やぐら」と思われる穴が開いていました。
f:id:mushikisya:20190602121313j:plain
寿福寺トンネルを抜けると地獄旅も終わり。
f:id:mushikisya:20190602121504j:plain
トンネルの裏側には鎌倉時代の墓「やぐら」らしきものが。
 ここを過ぎると、鎌倉駅はすぐそこ。普通の人々の明るく楽しい世界が待っています。

鎌倉の休日の財宝探し

鎌倉の休日の財宝探し

昆虫記者、日本国内編
鎌倉の休日の財宝探し
 GWの鎌倉はとんでもない混雑と想像する人が多いことでしょう。鶴岡八幡宮に通じる小町通りあたりは、それは、それは、大変なことになっていたと推察されます。
 しかし、外国人がドッと押し寄せる寺社やおしゃれな街並みだけが鎌倉の魅力ではないのです。鎌倉は東京近郊でありながら豊かな自然が多く残る場所でもあるのです。そして、その自然はあまり観光客には人気がありません。
 大仏ハイキングコースとか、ごく一部の知名度の高い散策路は少し人が多いですが、それ以外にも迷路のように森の中の散策路があるのです。そんなところを歩くのは、犬を散歩させる地元住民か、昆虫記者など、変わった趣味の人々が中心です。
 しかし、そんな観光客に見捨てられた自然の中にも、キラリと輝くお宝が隠されているのです。
 今回はそんな、キラキラ系のお宝をご紹介します。鎌倉は人が多いから嫌、という人は、もうすぐ閉鎖のヤフーブログの虫撮る人々の過去記事などを参考に、休日でもだれも歩いていない自然豊かな裏道を探索してみてはいかがでしょう。でも誰も歩いていないということは、つまり、虫好き以外には非常に人気のないコースということでもあります。そのへんは、最初から覚悟が必要ですね。
f:id:mushikisya:20190526161248j:plain
背中の金のⅩは財宝のありかを示すセモンジンガサ
 鎌倉の財宝と言えば、まず宝の地図がなければ話になりません。地図上には宝のありかを示す金色のⅩマークがあります。幕府の財宝が隠されている印ですね。でもこの印は、あちこちにあります。とくに桜の木のあるところに集中しています。
 そうなのです。お宝とは桜の木のことなのです。何のことはない、つまりは、宝のありかを示すと思われたⅩマークは、サクラの葉を食べるジンガサハムシの仲間の模様なのでした。
f:id:mushikisya:20190526161700j:plain
セモンジンガサハムシは背中の金色のⅩ文字が売りです。
 
 同じジンガサハムシの仲間で、本家ともいえるその名もずばり「ジンガサハムシ」は、全身金色のがいます。でも全身茶色のもいて、当たりくじ、外れくじみたいな感じですね。
 今回のカップルは下の♀が茶色、上に乗っている♂が金色でした。でも葉裏にいたので、せっかくの金色もパッとしない構図になってしまいました。
f:id:mushikisya:20190526161929j:plain
ジンガサハムシには金色の当たりと、茶色の外れがあります。
 その金色を必死で撮ろうとしているおかしな人物は、旅に同行していただいた昆虫写真家の森上信夫氏です。大変なお仕事ですね。
f:id:mushikisya:20190526162026j:plain
苦闘する森上信夫氏
f:id:mushikisya:20190526162125j:plain
 売れる昆虫写真を撮る人(森上氏)と、遊びの昆虫写真を撮る人(昆虫記者)は、意気込みも根性も全く違います。
 ここは鎌倉の中心部からさほど離れていない場所ですが、小町通りのすさまじい人込みが信じられないほど、静かです。たまに聞こえてくるのは、虫捕りや魚取りをする子供たちの声。観光地のすぐ隣に、ホッとできる静かな自然がある。これが鎌倉の魅力かもしれません。
f:id:mushikisya:20190526162226j:plain
f:id:mushikisya:20190526162242j:plain
 
 日本のハムシの中では出色の美しさを誇るアカガネサルハムシもいました。普通はノブドウにいます。ハムシ界のタマムシとでも呼ぶべき、玉虫色のハムシです。
f:id:mushikisya:20190526162307j:plain
ハムシ界のタマムシ、アカガネサルハムシ
f:id:mushikisya:20190526162440j:plain
宝石ハムシとか、玉虫色ハムシとか呼ぶべきですね。
 カワトンボがたくさん見られる季節になりました。このトンボも金属光沢が美しい、財宝系の虫ですね。
f:id:mushikisya:20190526162545j:plain
 
 蛾の中にも、いいのがいました。オオギンスジハマキです。金ほどの値打ちはないですが、銀ですから、まずまずのお宝と言えるでしょう。
f:id:mushikisya:20190526162603j:plain
オオギンスジハマキ。渋い銀色のお宝。
 何と、蜂にもきれいなのがいました。さすが鎌倉ですね。クロムネアオハバチと言うらしいです。緑色の輝きが見事で、蜂にしておくのは惜しいような蜂です。
f:id:mushikisya:20190526162701j:plain
蜂にしておくのはもったいないクロムネアオハバチ
 きれいどころと言えば、やはり蝶を外すことはできません。まずは普通のナミアゲハ。いわゆるアゲハチョウです。
f:id:mushikisya:20190526162751j:plain
そこそこきれいなナミアゲハ
 そこそこきれいですね。そしてキアゲハです。アゲハチョウよりは、深みがありますね。キアゲハを見てからナミアゲハをみると、ナミアゲハはちょっと薄っぺらく見えます。
f:id:mushikisya:20190526162827j:plain
ナミアゲハより深みのあるキアゲハ
 小さいけれど意外にきれいなのがシジミチョウの仲間。これはツバメシジミの♂です。
f:id:mushikisya:20190526162900j:plain
ツバメシジミの♂
f:id:mushikisya:20190526162923j:plain
 
 メスはこれ。あまりきれいではありません。
f:id:mushikisya:20190526162948j:plain
ツバメシジミの♀
 蝶は♂の方がきれいという種類が多いですね。蝶よ花よとおだてられ、咲いて見せればすぐ散らされるのは、♂の方です。たいてい♂の方が短命で、交尾を終えると用済みとなります。派手な装いのせいで敵にも狙われやすく、長生きできないというわけです。その分、地味な♀はしぶとく生きながらえて、子孫を残します。人間の♀は「蝶よ花よ」と、ちやほやされた上に、♂より長生きでいいですね。
 
 春だけの蝶、ツマキチョウは、これが最後の生き残りでしょう。
f:id:mushikisya:20190526163044j:plain
春の名残のツマキチョウ
 最後の締めはカラスアゲハです。クロアゲハと比べるとはるかに美しいのに、カラスと呼ぶのは、あまりにも不当です。
f:id:mushikisya:20190526163117j:plain
きれいなのにカラスアゲハとはかわいそうな名前。
クジャクとまでは言わずとも、キジぐらいの名前にしてあげたいですね。

全126ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事