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〜高野山:金剛三昧院のご本尊、愛染明王と経典(2014年5月4日)〜
サブタイトル:オヤジブログは自由だ!高野山編
【高野山を紹介した過去のページ】
愛染明王と密教経典→金剛峯?
金剛三昧院のご本尊、愛染明王は運慶作で、源頼朝公等身念持仏です。 尼将軍と称された源頼朝の妻であった北条政子により納められました。
愛染明王は平安時代に既に祀られてはいましたが、民間には不動明王に遅れて信仰され始め、本格的に崇拝の対象とされるのは鎌倉時代になってからでした。その際に、日本ではまだ『大蔵経(だいぞうきょう)』も編纂されておらず、今日のような中国密教やチベット密教との交流もなかったために、愛染明王の典拠とされるのは『瑜祇経(ゆぎきょう)』だけでした。それゆえ、本格的な修法を整えるために『瑜祇経(ゆぎきょう)』の本文である先の「此名金剛王」の文章に「菩薩」の二字を補って「此の名を金剛王菩薩という」のように固有名詞として読むことによって、愛染明王の典拠を「金剛王菩薩」や『理趣経(りしゅきょう)』に説く「金剛薩埵(こんごうさった)」と同尊とし、広くインド密教に繋がる存在としました。
【大蔵経(だいぞうきょう)とは】
仏教聖典を総集したもの。〈一切経(いつさいきよう)〉〈三蔵(さんぞう)〉とも呼ぶ。元来,〈大蔵経〉の呼称は漢訳の〈三蔵〉に若干の中国人の著したものを加えたものを指したが,現在ではその他の国語によるものも広く総称する。すなわち,漢語のほかに,パーリ語,チベット語,モンゴル語,満州語のものがあり,西夏語のものも一部現存する。漢語やパーリ語から日本語に訳したものもこれに準じて扱われる。また,元来は〈大蔵経〉に編入される書物の基準は厳格に決められ,それ以外のものは〈蔵外(ぞうがい)〉と称されたが,近年日本で編纂(へんさん)されたものでは,より広範囲のものも含めている。 【瑜祇経(ゆぎきょう)とは】
空海により日本に『金剛頂経(こんごうちょうきょう)』がもたらされ、これをもとに日本で派生したとされる経典。
【理趣経(りしゅきょう)とは】
大乗仏教の漢訳密教経典の一つ。「金剛頂経」系テキストの内、第六会に含まれる『理趣広経』とよばれる文書の略本。真実の理法そのものである法身の大日如来が金剛薩埵(こんごうさつた)のために般若の理趣(根本の理法)を説いたものとされる経典。
この『初会金剛頂経』は、空海が伝授されるまでに、大日如来→金剛薩埵(こんごうさった:大日如来の教えを受けた菩薩)→龍猛→龍智→金剛智→不空→恵果→空海と伝授されました。
空海は806年に帰国し、日本に初めて、『初会金剛頂経』に基づく実践体系を伝えたのです。
そして、金剛三昧院ご本尊の愛染明王は、日本密教において上記したように空海によってもたらされた『金剛頂経(こんごうちょうきょう)』類に属するとされる漢訳密教経典の『瑜祇経(ゆぎきょう)』に由来します。
この経典は正式名称を『金剛峯楼閣一切瑜伽瑜祇経(こんごうぶろうかくいっさいゆがゆぎきょう)』といい、同経典の「愛染王品第五」に愛染明王が説かれているそうです。
私たち俗世の凡人は、ここまで詳しく経典の名を知る必要などないのですが、この経典の名:『金剛峯楼閣一切瑜伽瑜祇経』の中の『金剛峯』が、高野山の総本山である『金剛峰寺』という名称の由来だとを伝えるために記しました。
更に詳しく述べると、『瑜祇経(ゆぎきょう)』の修法(壇を設けて本尊を安置し、護摩をたき、手に印を結び、口に真言を唱え、心に観念をこらし本尊と一体化することによって、目的とする願いを達成しようとするもの。)では、息災・増益・敬愛・降伏の『四種法』の利益を祈願するもので、その功徳( 善い行為を積み, あるいは修行の結果、むくいとして得られる果報、恵みという意味)として、「能滅無量罪 能生無量福」(無量の罪を滅して、無量の福を生じる)とも説かれています。
【愛染明王について】
●愛染明王とは
愛染明王は、『瑜祇経(ゆぎきょう)』の中で、三世(過去世・現在世・未来)の三界(欲界・色界・無色界)の中にあって、他の一切が誰もこの尊を越えることができ無いので、この尊の名前は金剛の王とされ、『金剛頂経』の中で最勝の名前で、教主である金剛薩埵がこの尊を定めて、一切の諸仏の母とした)とも讃えられていて、これに基づいて金剛界で最高の明王と解釈される場合があります。これに対して不動明王は胎蔵界で最高の明王と解釈される場合があり、たとえば東京都の金龍山浅草寺や、千葉県の成田山新勝寺等では両界の最高の明王として不動明王(胎蔵界)・愛染明王(金剛界)の両尊が祀られています。この日本密教における大日如来や如意輪観音、如意宝珠等を中心として、左右に不動明王と愛染明王の二体を祀る形式は非常に古く、他にも京都や高野山の古刹の寺院などに現在も少なからず見かけることができます。
●愛染明王のお姿と信仰
衆生(生き年生けるもの全て)が仏法を信じない原因の一つに「煩悩(ぼんのう)・愛欲により浮世のかりそめの楽に心惹かれている」ことがあるが、愛染明王は「煩悩と愛欲は人間の本能でありこれを断ずることは出来ない、むしろこの本能そのものを向上心に変換して仏道を歩ませる」とする功徳を持っている。
愛染明王は一面六臂で他の明王と同じく忿怒相であり、頭にはどのような苦難にも挫折しない強さの象徴である獅子の冠をかぶり、叡知を収めた宝瓶の上に咲いた蓮の華の上に結跏趺坐で座るという、大変特徴ある姿をしている。
もともと密教における蓮華部の敬愛を表現した仏であるためその身色は真紅であり、後背に日輪を背負って表現されることが多い。
また、『瑜祇経』第五品に記される偈頌(げしゅ)である「衆星の光を射るが如し」の部分を再現した天に向かって弓を引く容姿で描かれた姿の高野山金剛峯寺に伝えられる「天弓愛染明王像」や、京都神童寺像、山梨県甲州市の放光寺像などがあり、更には、日蓮筆と伝える「愛染不動感見記」の馬に乘る八臂像や、両頭など異形の容姿で描かれた図像も現存する。
愛染明王信仰はその名が示すとおり「恋愛・縁結び・家庭円満」などをつかさどる仏として古くから行われており、また「愛染=藍染」と解釈し、染物・織物職人の守護仏としても信仰されている。さらに愛欲を否定しないことから、古くは遊女、現在では水商売の女性の信仰対象にもなっている。
日蓮系各派の本尊(曼荼羅)にも不動明王と相対して愛染明王が書かれているが、空海によって伝えられた密教の尊格であることから日蓮以来代々梵字で書かれている。なお日蓮の曼荼羅における不動明王は生死即涅槃を表し、これに対し愛染明王は煩悩即菩提を表しているとされる。
●戦国武将:直江兼続の兜
●愛染明王の姿の特徴とその意味
いわゆる愛染明王の姿の特徴は、一面三目・六臂で、頭上には獅子の冠を頂き、冠の上には五鈷鉤が突き出ていて、その身は赤色で宝瓶の上にある紅蓮の蓮華座に、日輪を背にして座っている。これらの相が示すその象徴的な意味は以下のようになる。
2.頭上に獅子の冠を頂き、髪の毛を逆立てて怒髪天を突くさまを表すのは、百獣の王である獅子が吼える
とあらゆる猛獣もすぐに静かになる譬えのように、憤怒の怒りの相と獅子吼によって諸々の怨敵を降伏し て、一切衆生を救済することを表している。
3.冠の上に五鈷鉤が突き出ているのは、衆生の本有(ほんぬ)の五智を呼び覚まして、邪欲を捨てさせて正 しい方向へと導くことを意味し、愛染明王の大愛が衆生の心に染み入り、仏法の真実を体得せしめることを 表している。
4.一面三目で身体が赤色であり、その身を五色の華鬘で荘厳する点は、三つの眼は法身と般若と解脱を 意味し、世俗面においては仁愛と知恵と勇気の三つの徳を表す。身体が赤く輝いているのは、愛染明王の 大愛と大慈悲とがその身体からあふれ出ていることを意味し、五色の華鬘でその身を荘厳するのは、五智 如来の持つ大悲の徳を愛染明王もまたその身に兼ね備えていることを意味し、両耳の横から伸びる天帯 は、「王三昧」に安住して如来の大法である真理の教えを聞くことを表している。
5.六臂として手が六本あるのは、六道輪廻の衆生を救う意味をもつ。また、左右の第一手は二つで
「息災」を表していて、左手の五鈷鈴は、般若の智恵の音と響きにより衆生を驚愕させて、夢の如きこの世 の迷いから覚醒させることを表し、右手の五鈷杵は、衆生に本有の五智を理解し体得させて、愛染明王の 覚りへと到達せしめることを表している。6.左右の第二手は二つで「敬愛」と「融和」とを表していて、左手 の弓と右手の矢(箭)は、二つで一つの働きをするので、この世の人々が互いに協力して敬愛と和合の精 神を重んじ、仏の教えを実践する菩薩としての円満な境地に至ることを意味している。また、愛染明王の弓 矢は、大悲の矢によって衆生の心にある差別や憎しみの種を射落とし、菩提心に安住せしめることを意味 し、いわゆる矢は放たれるとすぐに目標に到達することから、愛染明王への降魔や除災、縁結び等の祈念 の効果が早く現れることをも表している。
6.左右の第三手は二つで人生の迷いや煩悩による苦しみの世界を打ち払う「増益」と「降伏」とを表してい て、左手に拳を握るのは、その手の中に摩尼宝珠を隠し持っていて、これは衆生が求めるあらゆる宝と財 産や、生命を育むことを意味していて、右手の赤い未敷蓮華(みふれんげ)は、それらの衆生の財産や生 命を奪おうとする「四魔」[34]に対して、大悲の鞭を打ち振るい、魔を調伏することを表している。
7.愛染明王が座っている紅蓮の蓮華座は、「愛染三昧」の瞑想から生じる大愛の境地を実現させた密教 的な極楽浄土を意味していて、その下にある宝瓶は、仏法の無限の宝である三宝を醸し、経と律と論の三 蔵を蔵することを表している。また、その周囲に宝珠や花弁が乱舞するのは、愛染明王が三宝の無尽蔵の 福徳を有することを意味している。
●愛染明王十二大願
愛染明王は仏としての誓願に基づき、生きとし生きるもの全てを諸々の苦悩から救うために十二の広大な 願いをかなえるとされ、その内容は以下のようになる。
●歴史的資料
9世紀当時のチベットの歴史書である『バシェー』(dBa bzhed)によると、
空海と同時代の人物であるインドの密教行者グル・パドマサンバヴァが、国王ティソン・ディツェンの勅命によりチベットに初めて建立した国立の大密教寺院:サムイェー寺には、寺の入り口の左右には守護者である門神として、不動明王と並んで愛染明王が祀られていたといいます。サムイェー寺は歴史の変遷の中で立替がなされ、現在はチベット仏教で人気のある馬頭明王と金剛手菩薩に換えられてしまっています。
●愛染明王と不動明王
日本では、このの両尊を祀る形式が1338年頃に成立した文観の『三尊合行秘次第』に始まるとされています。
【金剛頂教とは】
「金剛頂経」は龍猛が南天竺の鉄塔のなかで感得したという伝説がある。この経典は大日如来が18の異なる場所で別々の機会に説いた10万頌(じゅ:仏・菩薩(ぼさつ)の功徳(くどく)や思想などを述べた詩句)に及ぶ大部の経典の総称であり、単一の経典ではない。
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