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〜高橋虫麻呂の『兎原処女の伝説』の歌から見える誤った愛〜
サブタイトル:オヤジブログは自由だ!遠出編
ですが、残念ながら私には万葉集を読み解く学識はありません。
なのでニキタマの万葉集さんのお力に頼らせていただきます。
まずは高橋虫麻呂の万葉歌ですが、先に私なりの異訳を紹介します。
【高橋虫麻呂の『兎原処女の伝説』についての万葉歌異訳】
葦屋(あしのや)の菟原娘子(うなひをとめ)が八つばかりの幼い時から 振り分け髪に 髪を束ねる年頃に成長するまで
(一言:「振り分け髪に 髪を束ねる年頃」というのは、十代前半だと思われます。)
|隣の家の人にも姿を見せず 家に籠ってばかりでした。
(一言:つまり今で言う引きこもり、もしくは出不精というこですね。それならさぞかし透き通るような白い肌の少女だったことでしょう。ですが、現代の私たちが想像する青白い細面で、か細い女性ではなかったと思われます。なぜなら、当時の美人は、下膨れのおたふく顔が絶世の美女だったようですから。)
そんなものだから、なおさら娘子の評判は村中の評判となり、一目見たいものだと、やきもきして垣のように取り囲んで男たちが「ぜひ私の妻にしたいものだ。」と噂していました。
中でも渟壮士(ちぬおとこ)と 菟原壮士(うないおとこ)の二人が最後まで競い合い、共に求婚しました。
(一言:男たちの中で二人がとりわけうつつを抜かしていたというだけではなくて、きっと他の男たちよりかなり高い身分で、二人に関しては同等の位だったのかもしれません。日ごろから公の地位においても争ていた。)
そしてその二人の対立は、単なる恋敵とは思えない常軌を逸したもので、焼き鍛えた大刀の柄を握り締め、白木の弓や、靫(ゆぎ:矢を幾本も入れて携帯するための開口した筒)を背負って、
(一言:つまりいつ刀を抜いて切り合ったり、矢を射ってもおかしくない一触即発の状況だったということですね。やはやもう・・・・子供か?)
娘子の為なら「例え火の中、水の中、」と相対して争いました。
そんな二人の様子を見た娘子は、母にこう言いました。
つまらない私のために勇士たちが争うのを見ていますと、
(一言:まだ幼かったであろう娘子にしてみれば、「いい年した大のおじさんが、子供じみた喧嘩をして・・・・、ほんと、バカみたい。」と思っていたかも。)
生きていたところで 一緒になることなど出来ましょうか?
(一言:娘子がそう言わなければならないほど、その母は、娘子の意に反してどちらかの男との婚儀を、願ってもない玉の輿だと思っていたのかも。「これで由緒ある家柄と縁戚を持てて、母親としての自分は左団扇だわ。」と。)
黄泉でお待ちしておりましょう。
(一言:ようするにどちらの男も好みのタイプではなく、ひょっとしたら思い人がいたのかも。)
どちらの男を選ぶかについては本心を隠したまま、ひどく嘆いて娘子が死んでしまいました。
(一言:ほらやっぱりどちらの男も嫌いやったんや。この記述だと娘子の死因は自殺とは限りませんよね。ひょっとしたら、あまりの自身の身の不幸から、失意の中病を得て亡くなったのかも。母親からも、「ねえ、どっちらの方の家に嫁ぐつもり?はっきりしなさい。」なんて言われて誰も信じられずに。)
茅渟壮士(ちぬおとこ)は、その夜娘子の夢を見ました。「これはきっと娘子が本当は私を愛していたのだけれど、菟原壮士(うないおとこ)の手前、そうとは言えず、あの世から私を呼びに来たに違いない。」と、亡霊に魅入られたたかのように後を|追って亡くなってしまいました。
(一言:なんでそうなるかな?)
残された菟原壮士(うないおとこ)は、天を仰ぎ|泣き叫び、地団駄踏んで歯ぎしりし叫びわめき、相手の男に負けてなるものかと、
(一言:やれやれ、そんなことを争って死に急ぐなど、この男こそおバカです。何で薄命に終わった思い人の冥福を祈って弔うという考えはうかばないのだろ。そうすることが、愛する女を思う、男の道だと思うんですが。)
肩掛けの剣を佩(は)き、佩(は)き緒(お)を結んで身のまとい、
(一言:当時の刀には佩(は)き緒(お)という身に装着するための紐がついていました。時代劇の侍のように、帯に二本差ししていたわけではなく。)
あの世まで娘子の後を追って行ってしまいました。
(一言:あの世に行くのに何で刀を身につけるのでしょう?黄泉の国の魔物から娘子を守るため、それとも先にあの世に行った恋仇を切るため?変なの)
そんな二人の男の末路を知った親族たちは、寄り集まって相談し、未来永劫 |記念にして遠い将来まで|語り継ごうと、
(一言:記念するどころか、美談でも悲恋でもなくて、二人の男の末路は、未来永劫、子々孫々まで語り継がれては恥ずかしいくらいのお話だとおもうのですが・・・・。)
娘子の墓を真ん中に造り、壮士の墓をその左右に造り置いたといいます。
(一言:なんと、死してなお娘子を挟んで二人の恋敵が立ち並ぶなんて、娘子にしてみれば、あの世に行ってやっと望まない二人と縁が切れると思っていたのに、あろうことか二人が両脇にいすわるなど、これはもう悲劇以外のなにものでもないのでは・・・・。)
その謂(いわ)れを聞いて、私こと高橋虫麻呂は、墓に眠る3人はみな知人でも親族でもなく、遠い昔の伝説の人だけれども、亡くなったばかりの身内の喪のように声あげて泣いてしまったことよ・・・・・。
(一言:あれあれ、本当ですか?高橋虫麻呂さん。それも声をあげて?悲恋、美談、滅びの美学とでも?文人としての人間味とは、こうしたものなのでしょうか?) 【総論】
この伝説は何を語っているのでしょう。
自らの思いを封印したまま若くして亡くなった兎原処女。そして自らの思いのままに兎原処女に争うように求婚し、結局は兎原処女の後を追った渟壮士(ちぬおとこ)と 菟原壮士(うないおとこ)。娘の思いを理解し、その命を救ってやれなかった母。愛に準じた二人の男を哀れと思い、娘の思いをくめなかった男たちの親族。それら全ての登場人物の思いのすれ違いと勘違いが、物語の悲劇を招いた。努々(ゆめゆめ)忘れることなかれと伝説は語っているのではないかと、私は思うのです。
えっ?「伝説なんだから、硬いこと言いっこなし。」ですって? 以下は原文、読み、良識ある訳のご紹介です。
●文字は原文、●文字は読み、●文字はその意味です。
1⃣ 葦屋之|菟名負處女之|八年兒之|片生之時従|小放尓|髪多久麻弖尓|並居|家尓毛不所見|牢而座在者|
あしのやの|うなひおとめが|やとせこの|かたおひのときゆ|をばなりに|かみたくまでに|ならびをる|いへにもみえず|こもりてをれば|
2⃣
見而師香跡|<悒>憤時之|垣廬成|人之誂時|智<弩><壮>士|宇奈比<壮>士乃|廬八燎|須酒師競|相結婚|
みてしかと|いぶせむときの|かきほなす|ひとのとふとき|ちぬおとこ|うないおとこの|ふせやたき(枕言葉)|すすしきほい|あいよばい|
3⃣
為家類時者|焼大刀乃|手頴押祢利|白檀弓|<靫>取負而|入水|火尓毛将入跡|立向|競時尓|吾妹子之|
しけるときは|やきたちの|たかみおしねり|しらまゆみ|ゆきとりおいて|みづにいり|ひにもいらむと|たちむかひ|きほいしときにに|わぎもこが|
4⃣
母尓語久|倭<文>手纒()|賎吾之故|大夫之|荒争見者|雖生|應合有哉|<宍>串呂|黄泉尓将待跡|
ははにかたらく|しつたまきつち(枕言葉)|いやしきわがゆえ|ますらおの|あらそふみれば|いけりとも|あふべくあれや|ししくしろ|ししくしろ(枕言葉)|よみにまたむと|
5⃣
隠沼乃(枕言葉)|下延置而|打歎|妹之去者|血沼<壮>士|其夜夢見| 取次寸|追去祁礼婆|後有|菟原<壮>士伊|
こもりぬの(枕言葉)|したはへおきて|うちなげき|もがいぬれば|ちぬをとこ|そのよいめにみ| とり続き|おひゆきければ|おくれたる|うなひおとこい|
6⃣
仰天|❓於良妣|❓地|牙喫建怒而|如己男尓|負而者不有跡|懸佩之|小劔取佩|小太刀取り佩き|冬❓蕷都良|
あめあふぎ|さけびおらび|つちをふみ|きかみたけびて|もころをに|まけてはあらじと|かけはきの|おだちとりはき|ところづら|
7⃣
尋去祁*婆|親族共|射歸集|永代尓|標将為跡|遐代尓|語将継常|處女墓| 中尓造置| <壮>士墓|此方彼方二|
とめゆきければ|うがらどち|いゆきつどひ|ながきよに|しるしにせむと|とほきよに|かたりつがむと|おとめはか| なかにつくりおき|をとこはか|このもかのもに|
8⃣
造置有|故縁聞而|雖不知|新喪之如毛|哭泣鶴鴨|・・・・・・・
くりおけ|ゆえよしききて|しらねども|にひものごとも|ねなきつるかも|・・・・・・・ 1⃣
葦屋(あしのや)の| 菟原娘子(うなひをとめ)が|八つばかりの|幼い時から |振り分け髪に 髪を束ねる年頃に成長するまで|隣の|家の人にも姿を見せず |家に籠ってばかりいたので|
2⃣
一目見たいものだと |やきもきして| 垣のように取り囲んで|男たちが妻に問う時|茅渟壮士(ちぬおとこ)と |菟原壮士(うないおとこ)の二人が|(枕言葉)|最後まで競い合い|共に求婚したが |
3⃣
その時には |焼き鍛えた大刀の|柄を握り締め|白木の弓や|靫を背負って |娘子の為なら水にも|火にも入ろうと |相対し|争った その時に|
4⃣
娘子が|母に言うことに|(枕言葉)|つまらない私のために |勇士たちが|争うのを見ていますと |生きていたところで |一緒になることなど出来ましょうか|(枕言葉)|黄泉でお待ちしておりましょう |
5⃣ (枕言葉)|どちらの男を選ぶかについては本心を隠したまま|ひどく嘆いて|娘子が死んでしまうと |茅渟壮士(ちぬおとこ)| はその夜娘子を夢に見 、|後を|とりつづき後を|追ってしまったの|
残された|菟原壮士(うないおとこ)は |
6⃣
天を仰ぎ|泣き叫び|地団駄踏んで|歯ぎしりし叫びわめき|相手の男に|負けてなるものかと|肩掛けの |剣を佩き|あの世まで
7⃣
娘子の後を追って行ってしまった |そうして男の親族たちが|寄り集まって |とこしえの未来にまで|記念にしようと |遠い将来まで|語り継ごうと |娘子の墓を| 真ん中に造り |壮士の墓を|その左右に | 8⃣
造り置いたという |その謂れを聞いて|見知った人ではないけれども |亡くなったばかりの身内の喪のように | |
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