|
〜大伴家持は『兎原処女の伝説』を虚構の物語伝説として歌を〜
サブタイトル:オヤジブログは自由だ!遠出編
今回も『兎原処女の伝説(うないおとめのでんせつ)』を題材にした万葉集の歌をご紹介です。
ニキタマの万葉集りには、「家持は『兎原処女の伝説(うないおとめのでんせつ』を虚構の物語伝説として見る立場で作歌している。
倭建命が走水の瀬戸を渡りかねたとき弟橘比売が海神に生贄入水して助け、のち櫛が流れ着いたという神話も混成か。」と解説されています。 【大伴家持の『兎原処女の伝説』についての万葉歌 異訳】
遠い遠い昔の神秘で不可思議な出来事として言い伝えられる話です。
血沼壮士(ちぬをとこ)と菟原壮士(うなひをとこの)は、現世での名誉を争うのだと、命も顧みず競い合って求婚したと伝えられます。
(一言:命あっての物種ですよ。だいいち、命も顧みずに、あまつさえ惚れた女の思いをも顧みずに、何んで名誉と言えるでしょう。)
葦屋の少女にまつわるお話として、伝え聞く話は、何と悲しいことでしょう。
美しく栄え、赤々と映える秋の葉の盛りのごときかけがえのない乙女の年頃であったろうに、「私がいるために二人は争いをやめません。」と、言い寄った男の両親に別れを告げて家を去って後、海辺に佇(たたず)み、
(一言:乙女はあなた方のおぼっちゃまが悪いのではなく、私が悪いのですと言いつつも、海辺に佇んだのは、この世に何がしかの未練があったと思える描写です。)
朝夕の潮が満ちてくるおり、幾重にも寄せ来る波になびく玉藻(たまも)の節の間ほどの、刹那にきらめく乙女の命を、朝にしか存在できない露霜のように、自ら消し去ってしまわれたという。
(一言:純なること、あるがままなること、小さく密やかな存在であること、はかなく弱々しい存在であることを、何度も表現を変えての表現ですが、いささかくどいです。)
そんな乙女の墓をここに定めて、後世に伝えようとした人も、話を聞き継ぐ後の世の人々に、さらに永く思いを寄せるようにと黄楊(つげ)で作った櫛をその塚に挿し込んだのであろうか?
今では根付いて黄楊の木に生育ち、葉が風に靡(なび)いています。まるで伝説が本当にあった出来事であったかのように。
(一言:ツゲ - Wikipediaによれば、 万葉集や新古今和歌集ではツゲを詠んだ和歌がいくつか登場するが、詠まれているツゲは植物そのものを指すのではなく、櫛、そして櫛の所有者である女性への恋慕の情を表現するために用いられているそうです。)
【総論】
恐らく古代人が、大げさなほどに感受性豊かだったわけではないと。
それはともかく、ツゲ - Wikipediaによれば、大伴家持の歌に限って言えば、ツゲの花の花言葉は「禁欲」「淡白」だそうです。いつの頃からこんな花言葉があるのかは知りませんが、いかにも兎原処女のイメージにピッタリですね。
以下は原文、読み、良識ある訳のご紹介です。
●文字は原文、●文字は読み、●文字はその意味です。
1⃣ 古尓|有家流和射乃|久須婆之伎|事跡言継|知努乎登古|宇奈比<壮>子乃|宇都勢美能|名乎競争<登> |
いにしへに|ありけるわざの|くすばしき|ことといひつぐ|ちぬをとこ|うなひをとこの|うつせみの|なをあらそふと|
2⃣
玉剋|壽毛須底弖|相争尓|嬬問為家留|○嬬等之|聞者悲左|春花乃|尓太要盛而|秋葉之|尓保比尓照有|
たまきはる|いのちもすてて|あらそひに|つまどひしける|をとめらが|きけばかなしさ|はるはなの|春の花のように|にほえさかえ|あきのはの|にほひにてれる|
3⃣
惜|身之壮尚|大夫之|語勞美|父母尓|啓別而|離家|海邊尓出立|朝暮尓|満来潮之|八隔浪尓|靡珠藻乃|
あたらしき|みのさかりすら|ますらをの|こといたはしみ|言葉を心に重く受けるあまり|ちちははに|まをしわかれて|いえざかり|うみへにいでたち|あさよひに|みちくるしほの|やえなみに|なびくたまもの|
4⃣
節間毛|惜命乎|露霜之|過麻之尓家礼|奥墓乎|此間定而|後代之|聞継人毛|伊也遠尓|思努比尓勢餘等 |黄楊小櫛|
ふしのまも|おしきいのちを|つゆしもの|すぎましにけれ|おくつきを|こことさだめて|のちのよの|いやとほに|しのひにせよと|つげをぐし|
5⃣
之賀左志家良之|生而靡有|
しかさしけらし|おひてなびけり|
1⃣
遠い昔に|あった出来事の|神秘不可思議なこととして|言い伝えられる話|血沼壮士(ちぬをとこ)|菟原壮士(うなひをとこの)|現世での|名誉を争うのだと|
2⃣
?|命も顧みず|競い合って|求婚した|葦屋少女の|聞く話の何と悲しいことか|美しく栄え|秋の葉のように|赤々と映える|
3⃣
貴重な|女の身の盛りであるのに|言い寄った男の|両親に|別れを告げ|家を去って|海辺に佇み|朝夕に|満ちてくる潮の|幾重にも寄せて来る波に|なびく玉藻(たまも)の|
4⃣
節の間ほどのわずかな|惜しい乙女の命を|露霜のように|消し去ってしまわれたという|墓を|ここに定めて|後世|ききつぐひとも|この話を聞き継ぐ人々に|さらに永く|思いを寄せるようにと|黄楊で作った櫛を|
5⃣ その塚に挿し込んだのであろう|根付いて黄楊の木に生育ち葉が風に靡いている
西求女塚
|
全体表示
[ リスト ]




