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〜旅するアサギマダラと引きこもる親戚(最終話)〜
〜アサギマダラが旅をする理由〜では、アサギマダラが沖縄などの南国から本州へと渡りをする理由は、寄生バエから逃げるためで、他の旅をしないマダラチョウの仲間は、体内で寄生バエを駆逐する能力があることを紹介しました。
ところが、ブログ紹介当初は、チョウに詳しい方ほど、この記述を疑問視するコメントをお寄せいただきました。
そこで今回、その証拠立となる論文のご紹介をもって、このチョウのお話の最終話とします。
毎度おなじみの平井先生は、アサギマダラの謎を解くために幾つかの検証を行われました。
●第1章 このチョウの標高差による生息状況と寄生性天敵の関係性
標高の異なる生息地
高地の長野県茅野市(標高1,000m)・奈良県上北山村(標高1,100m)・和歌山県橋本市(標高360m)・海岸線に面した和歌山県すさみ町(標高30m)・沖縄県糸満市(標高30m)に各1カ所、計5カ所の調査地を設定し、1998〜2000年に計127回にわたって野外調査を行う一方、各調査地で得られた本種の幼虫を飼育し、寄生天敵の確認を行われた。
その結果、以下のことが判明しました。
①アサギマダラの主な天敵は、マダラヤドリバエとアサギハリバエ(ヤドリバエの1種)の2種。
②アサギマダラは各地に散在するガガイモ科の植物を幼虫の餌として利用するが、低地のガガイモ科を 利 用できるにもかかわらず、夏季に高地へ移動する。
③どの生息地においても、ヤドリバエ類により、寄生される確立が高い。
●第2章 このチョウの気温と日長に対する反応
④飼育実験の結果、このチョウは1年に2世代(基本的に低地における越冬世代と夏季に高地で過ごす 世代の年2世代)を経過すると考えられることがわかりました。
⑤平地より気温の低い高地では、メスの卵巣の成熟が遅れる(気温15度前後) ●第3章 マダラヤドリバエの寄生戦略
前回のブログで触れたとおり。
⑥マダラヤドリバエの卵は、ギジョランなどに産み付けられてから、1〜2ヶ月間内なら、アサギマダラの 体内に取り込まれことで寄生する能力がある。
●第4章 アサギマダラ以外のマダラチョウ類のマダラヤドリバエとの寄生による関係性
日本のマダラチョウ類5種について、野外調査と室内実験を行い、とくに本種と近縁のリュウキュウアサギマダラについては白血球の観察も行われました。
リュウキュウアサギマダラは、アサギマダラととても近い親戚関係でありながら、旅をせず、定住性がつよい。
その結果、
⑦マダラヤドリバエに対する強い生態防御能力を発揮させたのは、近縁種のリュウキュウアサギマダラ を筆頭に、単食性(1種のガガイモ科のみを餌とする)のスジクロカバマダラとオオゴマダラで、定住性 を維持してきた。
⑧対して、アサギマダラを筆頭に、広食性(複数種のガガイモ科を餌とする)で多少なりとも旅をするヒメ アサギマダラとツマムラサキマダラは、移動性と広食性の能力を獲得することでヤドリバエの寄生圧 を軽減してきたと考えられることがわかったそうです。
本州に渡ってからは、低地の食草のみで生育出来るにもかかわらず高地に移動する理由については、
この論文内では明記されていないものの、卵巣の成熟が遅れることを報告されていることから、
アサギマダラの1年に2世代の生活史に重大な意味があることを暗示しておられます。
その他にも
『アサギマダラとリュウキュウアサギマダラにおける幼虫期の血球数と生体防御との関係』
という論文も2003年に発表されています。
今後とも平井先生の論文に期待するファンは多いことでしょう。
【引用文献】
学位授与論文:
平井 規央(2003) アサギマダラとマダラヤドリバエの寄主ー寄生関係に関する生態学的研究
今更ですし、いい写真ではありませんが、♂♀の違いを紹介しておきます。
アサギマダラ♂(後翅に黒い斑紋)
アサギマダラ♀(後翅に黒斑紋なし) |
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2013年03月21日
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