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〜和泉市槇尾山におけるゴイシシジミの観察例〜
予告に即して〜チョウにもいた!!肉食系 男子&女子 その名はゴイシシジミ〜のもとになった私の記載記事を改めてご紹介します。
それは2つの記事に渡ります。まずは、『和泉市槙尾山におけるゴイシシジミの観察』です。
和泉市槙尾山におけるゴイシシジミの観察
掘野 満夫
私は今年 (2005年) の 8月 21日、和泉市槙尾山登山口にて河川敷に密生するヤブカラシに集まる蜂類を採集していあた。ある蜂(この記事では明言しませんでしたが、オキナワシリアゲコバチです)を捕獲したいと思いネットの中を覗いてみたところ、蜂の姿はなく、そこには1匹のシジミチョウが存在した。(なんとなく普段見るシジミチョウとは異なる飛び方のシジミチョウだとは直感していました。)
よくよく見たところ、それが思いがけずゴイシシジミだったのです。
これまで本会においても、2003 年に 7 例 9 個体の報告がなされ、今年 (2005年) は 2 例の観察報告がなされているほか、北端信彦会員と私の観察を含め、合計 8 例 18 個体の観察例を得た。
ゴイシシジミは、前翅長10〜17mm。分布は、北海道中部〜九州(隠岐・壱岐・対馬を含む)。
発生は (暖地)〜2回 (寒冷地及び山地)。
おもに曇天の日や夕方に飛び、各齢の幼虫期に越冬する (渡辺.1991)。一般的に産地は局部的であるが、発生地では群生することが多く、年によって発生量に変動が多いが、これは、食餌虫の発生数に起因すると考えられる (白水・黒子,1996)。
ササコナフキツノアブラムシの最盛期が 5〜 8月 (伊藤ほか,1977) であるのに対し、成虫の出現期は 5〜 10月 (渡辺,1991) と、合っている。純肉食性のチョウとして広く知られている。
しかし、その生活史について私は、詳しく記されていた文献を目にしたことがなかった。今回私が和泉市槇尾山でその生息地を確認したことを機会に、極めて短期間ではあるが、私なりに、観察を続けてみた成果として紹介すると共に、その食餌となササコナフキツノアブラムシの生活史についても観察を行った。
私は、図鑑などからゴイシシジミの存在を知り、『肉食性のチョウ』という触れ込みに大いなる興味を抱き、そして白色の微毛が密生してしているために脚が太く見えることからも、その実態は力感あふれる姿であると思い込んでいた。しかし、肉食という言葉の響きから連想される、猛獣・ワシなどより得られる印象からは程遠く、ゴイシシジミは、上下にフラフラと、よろけるように飛んでいた。
今回、実体を目の当たりにしてみて、その様と展翅の際に知りえた体の弱々しさに、まず驚かされた。
カメラを通して昆虫を知ろうとする私にとっては、いかにも残念なことだが、これも写真画像の弱点と言えるだろう。
本会での他の観察例の多くは、ネザサ等の葉上及び、その周辺植物の葉上で目撃されている。
しかし、ゴイシシジミが、その食餌虫であるササコナフキツノアブラムシや、ススキにつくカンシャワタアブラムシなどがあっての存在であるなら、食餌虫のコロニーが葉裏に存在する以上、逆さ立ちが本来的な姿勢で、ただそれが、繁茂する笹原などにあっては、人目にさらされ難いだけであろう。
ゴイシシジミが肉食性を発揮するのは幼虫期である。1,2 齢幼虫はアブラムシのコロニー中に糸を吐いて作ったテント状の覆いの中にひそんでいる。弱齢幼虫はおもにアブラムシの分泌物をなめるが、しだいにアブラムシを食べるようになる (福田ほか,1984)。ゴイシシジミの幼虫は弱齢幼虫期より頻繁に糸を吐くようである。
私の推察では、弱齢幼虫は、体格の小ささと糸を出す能力の限界をカバーするためか、接触した食餌虫の残骸をも利用した栄巣をする。その後、齢を重ねるにつれ糸を出す能力が向上するためだろうか、糸のみでテントを張るようになる。さらに終齢幼虫になると、体サイズが増し体表に顕著な長毛を生じて防御能力が増し、営巣を止めるのではないだろか。
天敵としては、蛹に微小な寄生蜂や寄生蝿の寄生及び脱出報告がなされてはいるが、種名は明らかにされていない (福田ほか,1984)
成虫をクローズアップした写真から成虫が口吻を、ササコナフキツノアブラムシの腹部先端より分泌される寒露を摂取する様子が見てとれる。私の観察では、アブラムシのコロニーに飛来した後は、ほとんどその場を離れることもなく摂取し続けていた。
訪花の記録としては、ソバ・ヒメジオンが知られている (福田ほか,1984)。ゴイシシジミがアブラムシの寒露に執着するという観察から、これは、何らかの由来でアブラムシの絶対量が不足した折、もしくは別
天地への移動の途中での、緊急的な飢餓回避行動と解釈できないだろうか。普段は弱々しく飛び、発生地をあまり離れないゴイシシジミも、長い距離を速く飛ぶ固体があることが磐瀬 (1967) によって観察されている。真近かに甘露を提供してくれる安全な場所があるにもかかわらず、あえて移動するというリスクを冒すには、よほどの理由があるに違いない(寄生蜂や寄生蝿などからの逃避?)。
私が今回複数のゴイシシジミを確認し、その食餌を初めて確認した 2005 年 9月 10 日は、くしくも本会の例会当日であった。それ以前にゴイシシジミの存在を知り、生態写真の撮影と、標本のための採集を行い、その足で例会に参加し、その報告を行った。その後も幾度となくこの地を訪れてみたが、午後から夕方に行われるとされる交尾行動は確認できなかった。
ゴイシシジミの繁殖は、食餌虫の存在に大きく左右されることから、その発生地は、恒久的ではなく、食餌虫の寄生植物が健全であっても、まったく観察されなくなることもあるらしい。幸いこの発生地は、私の居住地より車で30分弱で通えるので、私は今回、交尾行動や産卵行動を観察・撮影できなかったこともあり、来年は初見・発生回数などの確認をも念頭に、来る年の、通年観察を目指している。今後もこの発生地が存在し続けることを願うばかりである。
【引用文献】
掘野満夫 (2005) 和泉市槇尾山におけるゴイシシジミの観察. 南大阪の昆虫 vol.7 2-3
浅野晴也 (2003a) 富田林市錦織公園でゴイシシジミを目撃.南大阪の昆虫,5(4):26
福田晴夫・浜栄一・葛屋健・高橋昭・高橋真弓・田中蕃・田中洋・若林守男・渡辺康之(1984)
原色日本蛾類図鑑(Ⅲ).保育社.
伊藤修四郎・黒田貞一・日浦勇 (1977) 原色日本昆虫図鑑(下).保育社.
阪口博一 (2003a) 南大阪昆虫情報.南大阪の昆虫,5(2):15.
阪口博一 (2003b) 南大阪昆虫情報.南大阪の昆虫,5(3):32.
阪口博一 (2005) 南大阪昆虫情報.南大阪の昆虫,7(3):24.
阪口博一 (2003a) 南大阪昆虫情報.南大阪の昆虫,5(2):15
白水隆・黒子浩 (1991) エコロン自然シリーズ蝶・蛾.保育社.
山本博子 (2003) 南大阪南部のゴイシシジミ.南大阪の昆虫,5(3):28.
【参考文献】
竹内尚徳 (2005) ゴイシシジミの観察.蝶研フィールド(233):15-22.
もう一つの『〜チョウにもいた!!肉食系 男子&女子 その名はゴイシシジミ〜』のもとになった私の記載記事『心に残る昆虫 (6) 〜ササコナフキツノアブラムシーゴイシシジミの食餌虫〜』の紹介は、
この後のブログにて紹介します。
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