カメラとビデオを棒にくっつけて

堀野 満夫(ポール写真家)My name is Mitsuo Horino. I 'm pole-photographer.

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〜解説:コメツキムシの跳躍の秘密
 
前回のブログに記したコメツキムシの跳躍の秘密についての文章は、ご理解いただけたでしょうか?
ちょっと難解な各部位の名称が理解できなかった方がおられるかもしれませんので、改めて解説を加えます。
 
まずは『野外ハンドブック・12 甲虫』に紹介されている、甲虫各部の名称を紹介した図解を左に、『コメツキムシの跳躍の秘密』を記した文章に出てくる部位を番号で示したコメツキムシの写真を右に対比させて添付します。
 
イメージ 1   イメージ 6
(前胸背板の後縁中央部) (小盾板前縁)
 
イメージ 2  イメージ 3
                                      前胸腹板突起の先端
 
 
イメージ 4     イメージ 5
    中胸腹板溝を分かり易くするために    青←で示した白丸部分が
    ③前胸腹板突起の先端を消した画像
 
改めて前回の『コメツキムシの跳躍の秘密』を記した文章をご覧下さい。
 
「私は、本亜種の標本を撮影中に、他の甲虫目にはない不思議な器官があるのに気づいた。
それは前胸腹板の後縁にある突起と、中胸腹板前縁にあるくぼみである(写真 3 の赤丸)。
大平(1993) の記述によれば、コメツキムシ類の跳躍は(前胸背板の後縁中央部)(小盾板前縁)に固定し前胸腹板突起の先端中胸腹板溝の前縁部に押し当てて強くはじくことによっておこなわれるとされる。」
 
つまり、コメツキムシの跳躍は、跳躍の前にまずはピストルの引き金を引くように体をのけぞらせ、写真の中の部位のに固定します。その結果の位置にあるので、に押し当てて強くはじくことでコメツキムシは跳躍します。この時の位置にあることをによって感知します。
つまり先端の綿棒の先ような白いは、センサーもしくはリミッターの役割をする感覚器なのです。
 
良い子のみんな、分かってくれたかな?分かって欲しいなあっ。
 
〜コメツキムシの跳躍の秘密とフタモンウバタマコメツキに関する記述
 
 
コメツキムシをご存知ですか?
その多くは黒色で、体型的には、タマムシに似ています。判りませんか?
これを知らないと言われてしまいますと、今回のお話の面白さを理解できません。
 
なのでそんな方のために、ネット上の動画をまずはご紹介します。
 
巨大コメツキムシのジャンプ → http://www.youtube.com/watch?v=pwPOtHIyA2k
コメツキムシのジャンプ → http://www.youtube.com/watch?v=5c2yuXWDS-o
 
コメツキムシの行動を最低限知って頂いたので、これで今回の話しをやっと始められます。
ところで、タマムシはまさか知らないなんて人はいないでしょうね。
ことわざとして、『タマムシ色の決着』というのを、政治家などの妥協案を称して使ったりされますよね。
表面的には虹色のように美しいが、その内容は疑わしいという時につかわれる、あのタマムシです。
知らない人は各自で調べてもらうとして、
では、マイ記載記事をご覧下さい。
 
心 に 残 る 昆 虫  (17) 
〜フ タ モ ン ウ バ タ マ コ メ ツ キ〜
堀野 満夫
 オオフタモンウバタマコメツキ
 
 Cryptalas larvatus は南方系の種で、原名亜種オオフタモンウバタマコメツキ C.larvatus larvatus は南西諸島南部から東南アジアの亜熱帯から熱帯に分布し、日本からは固有亜種フタモンウバタマコメツキ C.larvatus pini が知られている。
 
イメージ 1
写真1. フタモンウバタマコメツキ 
2013年6月10日現在Yahooブログ内に 16件ヒット
2003.7.21 奈良県十津川村旭口 堀野満夫撮影
 
甲虫の中でも大きなグループであるコメツキムシ科は、我が国においても約 600 種に及ぶが、体長 21〜36mmの本種は、最大級である(黒澤ほか,1985)。生息分布は、日本甲虫学会(1955) では、本州(西南部)・四国・九州とされていたが、岸井(2002) では、新潟・千葉の両県を北限として以西の本州各地、四国、九州、付属諸島及び久米島までの南西諸島とされ、より広範囲な記述になっている。本亜種の分布域は、広範囲にわたるが、千葉県で準絶滅危惧種、神奈川県で絶滅危惧Ⅰ類、京都俯で要注目種に指定されていることから、大阪府においても希な存在であると思われた。
 本亜種については、本誌で「南大阪のコメツキムシ」を連載されている有本久之氏に詳しくお聞きした。
黒澤ほか(1988) には、本亜種の上翅端が弧状もしくは「へ」の字形に切れ込まれるのに対して、原名亜種の上翅端は直線状に切断されるとの記述があるが、有本氏によれば、個体によっては紛らわしい形状のものもあり、本亜種と原名亜種との区別点は明確ではない。
イメージ 4
写真2.背面
イメージ 5
写真2.側面
 
イメージ 6
写真2. 頭部:赤丸で囲んだ部分が頭部
 
イメージ 7
写真2 上翅先端
近畿圏では以前より和歌山県と奈良県春日山における記録があったものの少なかった。
ところが、最近では普通に見られるようになったという。大阪府においても以前は記録が極めて少なく、氏自身でも大阪府下では記録していない。
最近になって、本亜種が夜間の北摂地域で、水銀灯に時おり飛来するとの情報があるとの情報がある。
 
 コメツキムシと言えば、その名が示すように、成虫は裏返すと胸部を屈曲させて飛び跳ねる様子が面白く、子供時代には親しみやすい昆虫であった。
しかし、茶色や黒の地味な体色の種が大半を占め、外見からは同定困難な種も多いことから、昆虫愛好家からは敬遠されがちである。少年時代以後、改めて昆虫に興味を持ち、生態写真を始めた 2000 年当時、真っ先に購入したのは甲虫のポケット図鑑(黒澤ほか,1984) であったが、コメツキムシ科に興味を持つことはなかった。ただ、沖縄県に生息する美麗 2 種 とオオフタモンウバタマコメツキは例外で、その日本固有亜種が、比較的珍しい存在であることもこの頃から知っていた。
ただし、黒澤ほか (1984) の本亜種幼虫が肉食性であるという記述には気づかず、今回初めて岸井 (2002) から捕食性であることを知った。
また、 大平 (2005) には、コメツキムシ類は農林業害虫も含むが、大半は捕食性で、特にカミキリムシなどの材穿性昆虫の天敵としてよく知られているとの記述がる。
 
 私はこれまでの 9 年間で、本亜種を観察したのは、三度に止まっている。
本亜種との初めての出合いは、2003 年 7 月 21 日の奈良県十津川村旭口においてであった (写真1)。
午前 9 時過ぎ、炭焼き小屋前に炭材として積まれていた雑木の中のクヌギ材上に本亜種はいた。
初めて目の当たりにした本亜種は、茶色の体色が地味に思えたが、よく見れば背面には、伐採木に見られる節や木目、さらには乾燥によってできたヒビ割れを再現したかのような紋様まであり、素朴な美しさがあった。
この時炭材には、数種のカミキリムシ科やタマムシ科の成虫が、産卵のために多数集まっていた。
恐らくこの時の個体は、それら材穿性昆虫の幼虫を狙って、産卵のために現れたと思われる。
 二度目の出合いは、2005 年 6 月 12 日の午前 10 時前で、泉南郡岬町不動谷にあるウバメガシの幹上であった。
十津川村で見た個体は、六本の脚を広げた状態でいたことから、すでに活動を開始していたと思われる。
これに対して岬町で出会った個体は、六本の脚をすべて体に密着させるように縮めてとまっていた。
成虫の発生期は 6 月〜9 月とされることから、成虫になったばかりの個体であったと思われる。
 三度目の出合いは、 2006 年 8 月 20 日の和泉市槇尾山の登山口で、午前 12 時頃、休憩所にある石の便地で座る私の足元に、本亜種の姿があった。この個体は、近隣の森から飛び立ち、たまたまこの場所に降り立ったのだろう。
 本亜種の観察記録を調べてみると、樹液に飛来した個体の観察・採集例や、灯火採集された例が多い。このことから、本亜種の成虫は夜行性で、樹液を摂食すると思われる。
また、岸井(2002) には、生態的特徴として本亜種の幼虫は照葉樹など闊葉樹(広葉樹の樹皮下で生活する)とし、生息地の現状として社寺林や、京都府の冠島のような温暖な地域の樹林をもつ環境が保全されている地域にのみ限定的に発見されているとの記述がある。
ところが、web 上にある情報を丹念に拾ってみると、松の幹での観察例も複数あり、矛盾するようだが、私は次のように理解した。
 本亜種の幼虫が捕食性であることから、本来カミキリムシなどの幼虫が数多く継続的に生息し、良好な樹林において安定的に観察されるが、マツノマダラカミキリの幼虫が大量に発生した松林でも観察されるのではないか。
ただし、松枯れによって林が損なわれれば、本亜種の発生は一過性に終わるだろう。
ちなみに、マツノマダラカミキリは森本ほか(1986) において、松枯れを引き起こすマツノザイセンチュウの運搬者とされる。
 次に、観察地の環境だが、奈良県十津川村の森林が概ね良好であることは言うに及ばず、槇尾山には山上周辺に小規模ながら原生林もあり、岬町不動谷には、ウバメガシ林が広がる斜面が隣接している。
つまり、いずれの観察地も、「原生林的遺存林」が残る。
このことから、本亜種が良好な自然林の保全に多少なりとも寄与する森の番人とも言える存在であると考え、今回の南大阪での観察記録を素直に喜んだ。
web 上で調べてみると、かつて沖縄県の林業試験場では、マツノマダラカミキリの天敵として本亜種を人工飼料で飼育し、松枯れの防除に用いようとする研究が紹介されていたが、実用化については不明で、近年は他の防御防御技術が多く紹介されている。
 
今一つ、コメツキムシ類の跳躍のメカニズムについて簡単に述べたい。
 
イメージ 2
写真3. フタモンウバタマコメツキ 
前胸 ・ 中胸腹板:赤丸で囲んだ部分が跳躍に使う器官
 
イメージ 3
写真3. ウバタマムシ 
前胸 ・ 中胸腹板:
赤丸で囲んだ部分は、フタモンウバタマコメツキと違って癒着していて、独立した器官ではない。
 
私は、本亜種の標本を撮影中に、他の甲虫目にはない不思議な器官があるのに気づいた。
それは前胸腹板の後縁にある突起と、中胸腹板前縁にあるくぼみである(写真 3 の赤丸)。
大平(1993) の記述によれば、コメツキムシ類の跳躍は、前胸背板の後縁中央部を小盾板前縁に固定し、前胸腹板突起の先端を中胸腹板溝の前縁部に押し当てて強くはじくことによっておこなわれるとされる。
写真 3 に本亜種の胸部腹板と、ウバタマムシ(本種に良く似た玉虫)の胸部腹板を紹介しているので見比べていただきたい。
 
有本氏によれば、東南アジアの原名亜種は、体色や模様が我が国の本亜種及び原名亜種とはかなり異なり、注意して見ないと同じ種とは気づかないという。
また、氏自身の自己紹介の中で、大阪府はコメツキ相の解明がほとんど手付かずの状態だが、他府県に比べて森林が少ないながら、金剛山のコンゴウミヤマヒサゴコメツキ、岩湧山のヨコヅナシモフリコメツキなど、貴重な種も生息していると記述している(有本,2007)。いずれも専門家ならではのお話しで、非常に興味深い。
また、私がこれまでに出会った普通種の中にも、ミドリヒメコメツキの仲間、ベニコメツキの仲間、ヨツボシコメツキの仲間、クシヒゲコメツキ、ドウガネヒラタコメツキなど、興味を引く種があった。
 今回私は、一見地味なコメツキムシ科が、思いのほか興味深い甲虫であることを改めて知った。
そして、温暖化が進む今日、本亜種の増加傾向とその影響が、今後の気がかりな問題として浮上した。
これを機会に、同定困難なコメツキムシ類にも興味を持っていきたいと思う。
 
末筆ではあるが、本亜種についてご教示いただいた有本久之氏に、厚くお礼申し上げる。
 
【引用文献】
有本久之(2007) 自己紹介 有本久之(ありもと ひさゆき) 南大阪の昆虫,9(3) : 58.
岸井尚(2002) フタモンウバタマコメツキCryptalas larvatus pini (LEvis,1985).京都府レッドデータブック.
黒澤良彦・渡辺泰明 ・ 栗林慧(1984) 野外ハンドブック ・12 甲虫.山と渓谷社.239pp
黒澤良彦・久松定成・佐々治寛之(1985) オオフタモンウバタマコメツキ Cryptalas larvatus (Candeze)
原色日本甲虫図鑑(Ⅲ).保育社.
槙原寛・大平仁夫(2005) 森林総合研究所所蔵の小笠原諸島のコメツキムシ類について.
「森林総合研究所研究報告」 (Bulletin of FFPRI).(394) : 53
森本桂(1986) 共生と寄生。原色日本甲虫図鑑(Ⅰ)(森本桂・林長閑編).保育社. pp.104-113.
日本甲虫学界(1955)原色日本昆虫図鑑(上)甲虫編.保育社.274pp.
大平仁夫(1993) 入門シリーズ・9 コメツキ入門(1).月刊むし(263) : 24-28
 

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