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堀野 満夫(ポール写真家)My name is Mitsuo Horino. I 'm pole-photographer.

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〜ゴイシシジミとセグロベニトゲアシガにかかわる記載〜
 
 
以前紹介した
和泉市槇尾山におけるゴイシシジミの観察例 で予告しましたので、遅ればせながら、〜チョウにもいた!!肉食系 男子&女子 その名はゴイシシジミ〜 と セグロベニトゲアシガの生活史(ゴイシシジミのライバル)のもとになった私の記載記事『心に残る昆虫 (6) 〜ササコナフキツノアブラムシーゴイシシジミの食餌虫〜』をご紹介します。
 
【お詫び】 以前に紹介した写真と重複することをお許し下さい。

心に残る昆虫 (6) 
〜ササコナフキツノアブラムシーゴイシシジミの食餌虫〜
堀野 満夫
 
 ササコナフキツノアブラムシは、ゴイシシジミに利用されるだけ利用され(成虫に分泌する蜜を吸われ)、食いものにされ(幼虫に食われる)、ついには捨てられる(頭部や肢はすてられる)。
私見を許していただけるなら、弱肉強食の自然界では日常の出来事ではあるが、ササコナフキツノアブラムシは悲劇のヒロイン的存在といえなくも無い。
しかし、心優しき私としては、その生き様を一般の昆虫愛好家に知られないままでは、あまりにもふびんに思われた。そこで私は、あえて今回の主役に抜てきした。
こじ付けとも言える主役への抜てきではあるが、調べてみるとその生態は、私にとっては、ハラハラ・ドキドキの楽しい執筆となった。読者にも共鳴して頂ければ幸いである。
 ササコナフキツノアブラムシは、日本全土に分布し、体長わずか2mm弱、学者ならいざ知らず、一般の人なら、無視して当然の存在ではある。普段は無翅で、越冬を目前にして有翅型が出現する(伊藤ほか 1997)。
インターネットで検索してみたところ、当会の会員でもあった埼玉県の田悟敏弘氏が開設しているホームページにアブラムシ図鑑が紹介されており、そこにササコナフキツノアブラムシも紹介されていた。
早速メールで連絡をとり、貴重なご意見をいただいた。同氏によれば、本種はネザサに限らず、広くタケ類及びササ類んお葉に寄生するようだ。
一年を通して発生を繰り返すが、最盛期は、5月〜8月である。
ゴイシシジミ幼虫の食餌虫となることが知られている。
ロウ板(ロウ物質を排出するための器官)が発達し、その名が示す『コナフキ=粉吹き』の正体は、腹部側面を覆う、長方形のロウ物質である(伊藤ほか,1977)。
おそらく、タケ類・ササ類には、油分が多いため、それがロウ状物質として排出されたものだろう。
腹部先端より甘露を分泌し、ゴイシシジミ成虫はこれを主食としている(福田ほか,1984)。
ちなみに、従来はタケツノアブラムシとされていたものには、本種を含む複数の種が含まれているという(福田ほか,1984)。
 
 私の和泉市槇尾山における観察では、ネザサ葉裏のササコナフキツノアブラムシのコロニー中に、それを接触する何かの幼虫を確認している。更に後には、その昆虫のものと思われる蛹をも確認している。
 私は、ササコナフキツノアブラムシにとって最大の天敵は、もちろんゴイシシジミの幼虫と思い込んでいた。ところが、マイコガ科のベニトゲアシガなるガの幼虫も、これを食餌虫といているという(伊藤ほか,1977)。これらの幼虫・蛹が、ゴイシシジミであるという確証を失うこととなった。
特に採集した蛹については、各齢の幼虫で越冬するとの記述(渡辺,1991)から、ゴイシシジミの幼虫でないことは明らかであった。私は2005年10月12日の時点で、既に一通りの観察結果は得たとほくそえみ、キーボードを叩き始め、程なく草稿は書き上げたのだが、本稿の内容を、根本的に書き直す必要性が生じた。
 今回の主役に複数の天敵がいると知り、さらに興味が増した。では、彼らに天敵への対抗手段はないのだろうか?例えば、ナナホシテントウの幼虫とアブラムシとアリのような関係を構築出来ないのだろうか?
イメージ 1
写真1 ササコナフキツノアブラムシ(無翅型)
 
イメージ 2
写真2 ササコナフキツノアブラムシ(有翅型)
 
 アリは、時として幼虫の捕食者となりうるが、シジミチョウ科の幼虫は、蜜を分泌してアリをひきつけることが知られている(渡辺,1991)。ゴイシシジミの幼虫にもこのことが当てはまるならば、ササコナフキツノアブラムシとアリの間にのみ、共生関係を構築できないということになるが、アリはゴイシシジミ幼虫には興味を示さないとの記述(福田ほか,1984)もある。つまりアリは、ゴイシシジミ幼虫の天敵とも共生者ともなり得ないということだろうか?
 私が今回確認した(ガ類の)種は、その後の調べで正確には、セグロベニトゲアシガであることが判明した。
私は、このセグロベニトゲアシガの幼虫を、ゴイシシジミの幼虫と思い込み、比較的熱心に観察し、生態写真も撮影した。この観察により得た生態は、ゴイシシジミのそりに似て、糸を吐いて作ったテント状の覆いに潜む姿を目撃している。ここに至って1つの興味深い疑問を抱くようになった。
寄生蜂・寄生バエの存在は別格として、ネザサ葉裏に存在するササコナフキツノアブラムシのコロニー周辺で、視覚的にハッキリ確認できるササコナフキツノアブラムシ・ゴイシシジミ幼虫・セグロベニトゲアシガ幼虫・アリの4者の関係が最大の関心事となったのである。つまりこれが、ドキドキの原因である。
今回の観察では、ゴイシシジミ成虫は多数確認したにもかかわらず、その後幾度となく現地を訪れ、ネザサのコロニーを捜索してみたが、ゴイシシジミ幼虫の発見には至らなかった。試みに、ササコナフキツノアブラムシがビッシリと寄生したネザサを1葉持ち帰り、透明容器に保存してみたところ、いつの間にか4個体のセグロベニトゲアシガ成虫が羽化し、容器内で死んでいた。
ゴイシシジミの成虫を多数確認したにもかかわらず、その幼虫は確認できず、セグロベニトゲアシガの幼虫ばかり確認できるのはなぜだろう。
成虫の絶対数や産卵個体数の差も当然考えられるが、セグロベニトゲアシガ幼虫は、ササコナフキツノアブラムシの摂食は無論のこと、その餌捕り合戦でゴイシシジミ幼虫を追いやるか、あげくはこのライバルをも接触しているのではないかという考えを持つに至ったのである。
更に、両者に共通する天敵の存在はあるのだろうか。あるとしたらそれは一体何者なのだろうか?
私はためしに写真4の幼虫を、ツマヨウジの先で刺激してみたところ、ヘビのようにクネクネと、俊敏かつ確実に、這うように横滑りしてその場より移動した。天敵が何者であるのかは定かではないが、それが仮にハチやアリの類だとしても、敵を振り払いつつ逃避するには、かなり有効な回避行動と言える。
 
イメージ 3
写真3 セグロベニトゲアシガ弱齢幼虫
 
イメージ 4
写真4 セグロベニトゲアシガ弱齢幼虫
 
 話は少し主役よりそれてしまったが、これら天敵に攻め入られ、ササコナフキツノアブラムシには打つ手なし!後は、数に任せて子孫を残す他はないのだろか?例えば、ロウ物質が保身に寄与することはないのだろうか?
ちなみに、ゴイシシジミの弱齢幼虫はおもにアブラムシの分泌物をなめるが、しだいにアブラムシを食べるようになる。逆にアブラムシに撃退されることもある。(福田ほか,1984)。
また、ツノアブラムシの類には、社会性のハチやアリの様に、外敵を攻撃するそうである。完全な弱者だと思われたアブラムシも、進化によって、防御能力を身につけた個体が存在することに驚くばかりである。
 
 私の観察では、9月の中旬以後より、ササの葉裏の集団に、有翅型が認められるようになった。その後、冬が近づくにつれ、コロニーの規模こそ縮小していったが、全ての個体が有翅型に取って代わった訳ではなく、無翅型も確実に存在した。
恐らく、居残り組もあり、その上で、生息地拡大の指名を担った有翅方が、ここより飛び立ち、その旅路の果てに翅を落とし、ひっそりと、それとも強かに繁殖を繰り返しながら?越冬するのだろう。天敵であるゴイシシジミを、かの地へといざなうかのように。
 末筆ながら投稿にあたりご指導・ご助力いただいた田悟敏弘氏および会員の山本博子・三輪健一郎・阪口博一の各氏に厚くお礼申し上げる。
 
【引用文献】
福田晴夫・浜栄一・葛屋健・高橋昭・高橋真弓・田中蕃・田中様・若林守男・渡辺康之(1984) 
         原色日本蛾類生態図鑑 (Ⅲ).保育社 .
伊藤修四郎・奥谷禎一・日浦勇 (1977)  原色日本昆虫図鑑(下)保育社.
大原賢二(1991)  ヒラタアブの深慮遠謀?(社)日本林業技術協議会編。森の虫の100不思議.
     東京書籍.p70-71.
渡辺康之 (1991) 検索入門 チョウ②.保育社. 
堀野 満夫 (2005) 心に残る昆虫(6) 〜ササコナフキツノアブラムシーゴイシシジミの食餌虫〜.
     南大阪の昆虫 vol.4 12-14
【参考文献】
井上寛・杉繁郎・森内茂・黒子浩・川辺 (1982).日本産蛾類大図鑑.講談社.

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