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〜秋のトンボ?を見分ける:アオモンイトトンボ( 山本哲夫 撮影・著)〜
前回は4枚の生態写真をご紹介しました。そしてその画像に写るイトトンボは、アオモンイトトンボもしくわアジアイトトンボのどちらでしょうか?と問いました。
考えて頂いた方はおられますかね?たぶんいないんでしょうね。
仕方ないですね、ではお約束どおり山本哲夫氏のアオモンイトトンボに関する標本画像と記述をご紹介しましょう。
引用文献: 南大阪昆虫同好会会報の『南大阪の昆虫』の中の記載より
『イトトンボを見分ける(1)』(山本哲夫)
アオモンイトトンボは、大きさはひとまわり大型だが、アジアイトトンボと似ているので注意をようする。
♂は腹部第8節ほぼ全体と第9節側面大半が水色。
背面から見れば赤↓が指し示す水色部 の後2節分(紫↓が指し示す部分)が黒く見えるので、撮影時の目安となる。♀の胸部黒条は背隆線上のみ。成熟すると緑と薄茶の入り混じったような形容しにくい体色で、老熟すると赤茶色みが加わる。未熟♀は鮮やかなオレンジ色で、やはりアジアイトトンボに酷似している。区別点は本種の場合、成熟未熟ともに腹部背面の黒条が第 2 節の途中(水色↓で示した部分)で途切れていて第 1 節には達しないことでわかる。
眼後紋の前縁は、個体差はあるが起伏がある。また♂♀とも胸部まで青くなるものもあってクロイトトンボのように見えることがある。
以上がアオモンイトトンボの身体的特徴ですが、
前回の生態写真に写るイトトンボにあてはまると思いますか?
【アオモンイトトンボのプロフィール】 引用文献:
①成虫発生期:4月下旬〜11月上旬。5月と8,9月に多い。
②生息地:平地から丘陵地の抽水植物の繁茂した池沼、用水路など。汽水域にも見られる。沿岸部の 開けた環境を好み、内陸部や池の周囲に草むらの乏しい場所にはあまり見られない。
③分布:岩手県・新潟県より南の各地に分布し、近畿地方でも沿岸部を中心に普通に見られる。
④体長:夏型は27〜37mm。盛夏から秋季に現れる個体は小型化する。
⑤越冬形態:幼虫。
⑥産卵形態:産卵は主に午後、雌が単独で水面に浮いた細い植物や藻に行う。
⑦生態:産卵期 8〜10日。幼虫期50日〜261日。1年2世代型。
未熟個体は羽化水域周辺の草むらみ見られる。埋立地の水溜まりなどにも早々と姿を現すが、アジ アイトトンボほど移動性は強くなくない。成熟♂は夜明け直後、草の間を活発に探♀飛翔する。
交尾は早朝〜午前中を中心に行われ、継続時間はかなり長い。
明日は本種に似た、アジアイトトンボの紹介です。
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昆虫
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〜4枚のイトトンボの生態写真。見分けられるかな?〜
今日はちょっとイトトンボの紹介の仕方を変えて4枚の生態写真を紹介します。
これまでに、当ブログでは、一般的には同じイトトンボの仲間と思われている4種を紹介しました。
それは、モノサシトンボ・クロイトトンボ・ホソミイトトンボ・セスジトンボです。
ここで紹介するのは、その4種のいずれでもなく、まだ紹介していない種なのですが、どなたか答えられる方はおられるでしょうか?
では問題です。以下に紹介する生態写真は、アオモンイトトンボ、アジアイトトンボのどちらでしょうか?
この問題に答えられる方は、スゴイ方だと私は思います。イトトンボ博士と言ってもいいかな?
それほどにアオモンイトトンボとアジアイトトンボは酷似しています。
今日は問題となる生態写真の紹介だけですが、
南大阪昆虫同好会会報の『南大阪の昆虫』に
山本哲夫氏が記載された『イトトンボを見分ける(1)』の中から、
① 明日はアオモンイトトンボを、
② 明後日はアジアイトトンボの画像と記述をご紹介させて頂きます。
③ そして明々後日(しあさって)は、再び今回の画像に解説を加えて
答え合わせをしたいと思います。
ヒントとしては、各画像の中の矢印↓の指し示す部位に注目してください。
では問題となる画像をご覧下さい。
問題画像 1
小さくて弱々しいイメージのイトトンボですが、やはりそこは肉食性の昆虫。
これって友食い?
問題画像 2
この場合の獲物は、ヨコバイかな。
問題画像 3
オレンジ色の体色が鮮やかです。
問題画像 4
こちらの体色は爽やかな水色ですね。
以上4枚の画像に写るイトトンボは、アオモンイトトンボ、アジアイトトンボのとちらかです。
私としては、見るだけでなく真剣に問題に取り組んでほしいです。 |
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〜秋のトンボ?を見分ける:セスジイトトンボ〜
セスジイトトンボは、文字通り背中に入る黒いスジが特徴の種です。
【セスジイトトンボのプロフィール】 引用文献:
①成虫発生期:4月中旬〜10月中旬。5月から9月に多い。
②生息地:平地、丘陵地の抽水植物や浮葉植物が繁茂する穏やかな流れや池沼、湖に生息する。幼 虫は水生植物の付近に見られる。
③分布:北海道(稀)本州・四国・九州に分布する。近畿地方では広く分布する。
④体長:夏型は27〜37mm。盛夏から秋季に現れる個体は小型化する。
⑤越冬形態:幼虫。
⑥産卵形態:連結態で水生植物の組織内に行い、また潜水産卵を行うこともある。
⑦生態:産卵期7〜9日。幼虫期60日〜250日。1年2世代型。
未熟個体や♀は周囲の草むらで見られる。成熟♂は水面の浮葉植物などに静止して行われる。
セスジイトトンボ♀ 側面
♀は黄緑基調。成熟前は薄い水色をしているが、成熟後♂のような色にはるわけではない。梅雨期以降に現れる♀では腹部背面の黒条が細くなり、かなり黄色みの強いものも見られる。
セスジイトトンボ♀頭部・胸部側面
セスジイトトンボ♀ 頭部前面
セスジイトトンボ♀ 頭部背面 【同定ポイント】
♂♀共に基本的には胸部肩縫線の黒条に淡色の条が入り、♀は青↓①で示した背隆線沿いにも淡色条がある。
左の赤↑で示した眼後紋はおおむね三角おもすび型。青↓②で示した後頭条は♀にはあるが、
♂にはあるものとないものがある。
セスジイトトンボ♀ 尾端側面
セスジイトトンボ♀ 尾端背面
セスジイトトンボ♂ 山本哲夫氏の画像
【同定ポイント】 ♂の上付属器は、ハの字に開いて先端はとがる。先端は曲がるが、中にはあまり曲がらないものもある。第8節後方黒色部が個体差がある。 |
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〜秋のトンボ?を見分ける:ホソミイトトンボ〜
イトトンボ、はかなげで愛らしいトンボですよね。でもイトトンボ科の種を見分けることは、アカネ属やサナエトンボ科の種を見分けるのと同様に困難な場合が少なくありません。
それは前回のクロイトトンボの【同定ポイント】が多くの部位に渡ったことから察した方もおられるのではないでしょうか。
でもご安心下さい。今回ご紹介するホソミイトトンボを見分ける方法は、実に簡単です。
本種はイトトンボ科の中でも極端に細長い種であり、頭部の眼後紋を見れば一目瞭然、左右の眼後紋がつながっているのです。
なんですが、本種には6月中旬〜8月に出現する夏型と、8月上旬〜翌年6月頃まで見られる越冬型があり、本個体は、残念ながら春期越冬型です。つまり秋のトンボではないんですね。
こんなこと、私が自白する必要もなかったのですが、これをバカ正直とでもいうのでしょうかね。
【ホソミイトトンボのプロフィール】 引用文献:
①成虫発生期:夏型は6月中旬〜8月下旬に出現し、7月が最盛期。越冬型は8月上旬〜翌年の6月 頃まで見られる。
②生息地:平地から丘陵地の水生植物が生育する池沼・湿地、流れの途中の滞水や水田などで見ら
れる。透明度のある、水質の良好な環境でよく見られる。海岸の埋め立て地の水溜まりなどでも見
つかる こともあり、移動力はあると考えられる。
③分布:関東以西の本州・四国・九州に分布する。近畿地方の北部では局地的な分布をしている。その 他では比較的広い地域で記録があるが、生息地は急激に減少している。
④体長:夏型は28〜34mm。越冬型は33〜37mm
⑤越冬形態:成虫。
⑥産卵形態:産卵は連結して水面にある細い水生植物の茎や、水面に浮いている枯れた植物に行う。連結状態で産卵しながら徐々に水中に入り、潜水産卵をすることも多い。
⑦生態:産卵期6〜13日。幼虫期約50日。最短は34日。1年1世代または2世代型。
成熟♂は水域で活発に探♀飛翔し、交尾は水辺の植物などに静止して行う。
越冬時は日当たりの良い林の枯れ草や細枝の垂直に近い部位に体を寄せ、腹部をやや曲げた姿勢で過ごすが、暖かい日には摂食行動などを行う。
夏型、越冬型の発現がどのような条件で切り替わるかは未解明である。
ホソミイトトンボ♂ 側面
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〜秋のトンボ?を見分ける:クロイトトンボ〜
クロイトトンボはイトトンボ科の種としは、最も多く生息している普通種です。
本種はなんと、11月下旬まで成虫が観察されるそうですよ。
イトトンボを見分けるには、まずこの種の特徴を知ることから始めましょう。
【クロイトトンボのプロフィール】
①成虫発生期:4月中旬〜11月下旬。5月から9月に多い
②生息地:平地から丘陵地の浮葉食物や沈水植物が残り、ある程度の深みと周囲に樹陰のある池沼
に好んで生息する。また緩い流れや都市公園の池などでもよく見られる。
③分布:北海道・本州・四国・九州に分布する。
④体長:27〜37mm
⑤越冬形態:幼虫。
⑥産卵形態:交尾は水域で行われる。その後連結産卵に移り、浮葉植物や沈水植物の茎などに産卵 する。時にそのまま浸水し産卵する場合がある。
⑦生態:産卵期7〜13日。幼虫期約50日。1年2世代型。
未熟個体や♀は周囲の林や灌木の間などで暮らす。成熟♂は水面の浮葉植物の葉上などに静止 して縄張りをもち、水面すれすれを飛び回る。
クロイトトンボ♂ 側面
クロイトトンボ♂ 背面
クロイトトンボ♂ 頭部・胸部側面
【雌雄見分けポイント♂】黄色↑が指し示す部位は、♂であることを示す副生殖器 クロイトトンボ♂ 頭部前面
クロイトトンボ♂ 頭部背面
【同定ポイント①】 赤↑で示した部分にある斑紋:眼後紋は小さい。
クロイトトンボ♂ 頭部・胸部背面
【同定ポイント②】 赤↑で示した部分にある筋:後頭条はない。 クロイトトンボ♂ 尾端側面
クロイトトンボ♂ 尾端背面 【同定ポイント③】 青↑の差す上付属器はハの字に開いていて先はとがらない。
【同定ポイント④】 左の赤↑の差す腹部第8節後方の黒色部は側面まで回り込んでいて良く目立つ。
【同定ポイント⑤】 右の赤↑の差す第10節は背面から見るとほぼ全体に黒い。
クロイトトンボ♀
南大阪昆虫同好会会報 『イトトンボを見分ける』(山本哲夫著)より
【雌雄見分けポイント♀】②↑が指し示す部位は、♀であることを示す産卵管です。
赤↑は♂同様に小さな眼後紋・オレンジの↑には後頭条がない |



