2014年邦画部門

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バンクーバーの朝日


亀梨和也さん出演 映画『バンクーバーの朝日』予告編
2014年12月26日鑑賞
フェアプレーの先にある光を信じて

石井裕也監督作品では「舟を編む」を鑑賞したことがある。全く映画になりそうもない題材を、実にうまく映画作品としてまとめ上げる、その手腕に確かなものを感じた。さて、本作はカナダのバンクーバーに実在した日系人野球チームのお話。このモチーフを聞いただけで、もうドラマチックではないか! それを石井監督がどのように料理するのか? 僕の関心はそこにあった。
結果として「いまいち」の感じは否めなかった。相当期待して劇場に足を運んだだけに残念でならない。
きっとこの題材なら、李相日監督を起用していれば、それこそ「フラガール」のような感動大作になった可能性がある。
石井監督独特の一見無駄に見える間延びしたようなカット。あえて、感動するツボのタイミングをちょっとだけ外すような演出。それが石井監督の持ち味でもあるのだけれど、本作のような大作の骨格を持つ作品では、逆にそれが災いしてしまった感があるのだ。
本作での唯一の救いは今、人気、赤マル急上昇中の女優「高畑充希」の存在だ。この人をスクリーンで観る価値はある。
物語の時代は第二次大戦前のカナダ、バンクーバーの日系人居住区。
高畑充希演じるエミー笠原。この人の佇まいが、本当に当時の日系人社会の時代背景と雰囲気を、そっくりそのまま現代にタイムスリップさせたようなのだ。彼女は勉強がよくでき、大学の進学を目指している。そこには、日系人でも、大学で学ぶ者がいることを示すことによって、すこしでも日系人の地位向上に貢献できるのではないか?という彼女なりの思惑がある。彼女はそうして、裕福なカナダ人家庭のメイドの仕事で学費をかせぎ、家にもお金を入れている。彼女の兄、レジー笠原(妻夫木聡)が本作の主人公。彼は製材所で働きながら野球クラブに通っている。その名も「バンクーバー朝日軍」
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当時の日系人たちの間では、この野球クラブは、期待はしていたものの、どうにも不甲斐ないと思われていたようだ。成績が悪いのである。勝てない。連敗続きなのだ。
「あんなでっかい体のカナダ人に、おれたちチビの日系人が勝てる訳ないんだよ」などと、レジー笠原は諦めかけていた。
おまけに彼らの日常生活や仕事も、偏見と差別に常にさらされている。ちょっとでも雇い主に意見をしようものなら
「ジャップは出て行け!!」と罵られる。かといって真面目に、熱心に働けば、仕事仲間の白人たちから
「ジャップはがっついてやがる!」と嫌味を言われる。
賃金は安い。彼らの親たちは
「カナダで1年稼げば日本で一生安泰で暮らせる」という、うまい話に乗せられて、はるばる海を越えて異国の地で働き始めた。しかし現実は、かくも厳しかったのである。このあたりの状況は映画の冒頭20分ほどで語られるのだが、この冒頭部分だけでは、その状況や辛さが、観客である僕たちに、いまいち切実に伝わってこないのだ。映画を最後まで見終わった後で、ようやく
「ああ、そうかぁ〜、たいへんだったんだね」ということが観客の腹の中に収まるようなストーリー仕立てになっている。だから、僕がもし監督なら冒頭20分は、ばっさりカットするだろう。
さて、そんな負け犬根性が染み付いていたバンクーバー朝日軍。試合中、レジー笠原は、ちょっとしたヒントを見つけた。
「そうだ、頭を使う野球をしよう、もっと考えるんだ」
そこで編み出したのが「バント作戦」と「走る野球」である。
バントで一塁へ出る。すかさず二塁へ盗塁。相手チームは焦る。その隙に3塁へ。打者がボテボテのゴロを打つ。その間にホームへ滑り込む。
一点だ!ヒットなしでも一点取れる! あのでかい図体のカナダ人相手でもこれなら勝てるぞ! この「ちょこまかした」戦法でバンクーバー朝日軍はリーグ戦を勝ち進む。やがて彼らはリーグ優勝決定戦にコマを進めることになるのだった……
と、このあたりのトントン拍子に勝ち進むあたりは、実に爽快で楽しく鑑賞できる。
バンクーバー朝日軍はフェアプレーを心がけていた。その先に必ず、朝日が差すのを信じて。国や、人種の違いを超えられると信じて。
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ただ、彼らのその後に待ち受ける運命は過酷である。
日米開戦。と同時に、カナダの日系人たちも敵性外国人という烙印を押され、強制収容所送りとなる。
僕はかつて戦時中のアメリカに住む、日系人を題材としたドキュメンタリー映画「442日系部隊・アメリカ史上最強の陸軍」を観た。
劇場で観終わったとき、僕はしばらく席を立てなかった。それほど彼らの戦いは悲惨で激烈だった。自分たちの運命に立ち向かう、自分たちの「アメリカ」という国を愛する意思表示をするのに、どれだけの命を捧げなければならないのか。その苛酷な時代の波と運命を受け止めたジャパニーズ・アメリカンたちの、ひたむきな力強さに打ちのめされたのである。
「ここまで人間は強くなれるのか?」と。僕にはできないと思った。
それこそ「負け犬根性」なのかもしれないが、僕は人と争いたくもない。また、なによりどんな事柄についても「戦いたくない」ないしは「闘いたくない」人間である。
それは21世紀の今、現実世界においてだ。
あえて「ぼくたち」という言葉を使わせてもらう。
「ぼくたち」は十分すぎるぐらい、すでに戦わされている。目に見える形での偏見や差別、格差といった戦い、そして目に見えない形で生活の中に潜む「たたかい」
いつになったら「ぼくたち」は戦わずに済む日常がやって来るのだろうか?
**************
天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆
総合評価 ☆☆☆
**********
作品データ
監督   石井裕也
主演   妻夫木聡、亀梨和也、勝地涼、上地雄輔
製作   2014年 
上映時間 132分

紙の月


『紙の月』予告編
2014年11月20日鑑賞
黒と白の崖っぷちで

僕がバスに乗っていたときのこと。停留所が近づくと、せっかちな客が立ち上がって二三歩、降車口に向かってバス車内を歩いた。
「絶対に動かないでください!!バスはまだ動いています!!」
厳しい口調で注意したのは、バスの運転手、それは女性だった。
客が降り際に、再びその女性運転手は
「バスが止まるまで、席を離れないで!怪我をしますよ!!」
と実に厳しく忠告した。
僕はこの光景を一部始終見ていた。
もちろん、自分が運転するバスの中で、乗客に怪我でもされたら、それこそ場合によっては、自分の職を失うかもしれない。
このバスの女性運転手の指導は実に適切であり、客の安全を守ると言う、運転手としての責務を全うしていると言える。
しかし、ほとんどの乗客は、バスの中でアナウンスされる
「バスが停留所に止まってから席をお立ちください。運転中、席を移動する事は大変危険です」という忠告を聞こうとはしない。
あえて、危険な行為をバス車内で行って平気な顔をしている。
それは「ありがちな行為」だ。
それをひとつひとつ忠告しようとする女性運転手に、僕はある種の尊敬と愚直さと「女らしさ」を感じるのだ。
というのも、誤解と非難を恐れず、男目線から言わせて頂くと「女らしさ」の要素の一つとは「融通が効かない事」だと思うからだ。
本作「紙の月」で僕が最も注目したのは、宮沢りえ演じる主人公でもなく、やや子役臭さがいまだに残る、大島優子の演技でもなく、小林聡美演じる、実に融通の利かない銀行事務員「隅より子」という人物像だった。
本作は銀行員にとっておもわずやってしまいそうになる、誘惑に駆られる、そういった「ありがちな行為」にハマってしまった一女性銀行員の話である。宮沢りえ演じる主人公、梅澤梨花は、銀行の契約社員である。
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仕事は外回りの営業だ。
個人客を訪問し、定期預金などの「商品」を販売し、客の財布から銀行に金を預けさせるのが彼女の仕事だ。彼女は、顧客の孫である、大学生と知り合いになる。夫は海外勤務が決まったばかりだ。彼女と大学生は男女の関係となった。彼女は若者との「甘い生活」その快楽に、どっぷりと浸ってしまう。男との危うい、しかし、魅力的な火遊びには「金」が必要だ。そこで彼女は顧客の金を私的に流用した。
最初は「ほんの数時間」借りるだけ。
後で自分の預金から返しておけば問題はない。
その事実は銀行の内部で発覚しなかった。
一度やってバレないのならば、何度やっても分からない。
やがて彼女の顧客資金流用は歯止めを失ってしまう。
本作はその顛末を丁寧に描いてゆく。
さて、僕が注目した「隅より子」と言う人物。
銀行勤続25年。いわゆるお局さんである。
この人は何を楽しみに生きているのだろう?
この人は銀行の仕事にどんなやりがいを感じて25年勤続しているのだろう?
そのあたりにスポットはあたっていないので、なおさら不思議な人物像に思えてしまう。きっと、腹の中では色々と溜まってそうな人物である。また、そう思わせる小林聡美の演技力が僕には光って見えた。
主人公の不正行為に最初に気づくのが、この「隅より子」である。
映画の終盤、主人公梅澤梨花と隅より子が対峙する場面がある。
「あなたはそのお金で好き放題やってきたんでしょ?」
と隅より子は梅澤を問いつめる。
しかしである。その言葉の中に、どこか主人公のタガを外した「オンナの生き方」に「自分には出来ない」と言う諦めと共に、一種の「あこがれ」を感じているかのようなのである。
「自分だって、彼女の様にオトコに走ってみたい」
「なにかに夢中になる生き方をしてみたい」
そう感じているかのようである。
それを許さないのはなぜか?
自分は「融通が効かないオンナ」だからにほかならない。
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お金を融通する事。
それこそが「金融」である。
銀行の業務の最も根っこにあたる機能の一つだ。
銀行の一部の特権的なオトコ達は、その地位を利用してお金を「融通」させすぎた。結果として天文学的な金額が回収不能、不良債権となった。しかし、それが元でブタ箱に放り込まれた銀行経営陣はいないようである。ほとんど全ての不良債権は、代わりに赤ちゃんからお年寄りまで、国民の税金でチャラにしてしまった。
そういう「巨悪」はこの国では丁寧にオブラートで包まれている。
一人のある意味「哀れなオンナ」の一例として本作を見るのか?
あるいは誰しもが持っている「ありがちな」心に閉じ込めてある「悪」の扉を開いてみせるのか?
吉田大八監督が描く、無機質な白と黒しかない銀行内部の風景。その間のグレーを読み取れるのなら、本作の味わいはぐっと深まると思うのである。
**************
天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆
総合評価 ☆☆☆☆
**********
作品データ
監督   吉田大八
主演   宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、小林聡美
製作   2014年 
上映時間 126分

花宵道中


映画『花宵道中』予告編

2014年11月12日鑑賞
女性の支持はえられるのか?

天才と呼ばれた子役にも、当然の事ながら「年齢」という厳しい壁が立ちはだかる訳です。そのあたりは芦田愛菜ちゃんなども、今後、女優業を続けていくならば、乗り越えなければならなくなる運命にあります。本作の主役は安達祐実。あの「同情するなら金をくれ!!」と言うセリフを吐いた名子役でありました。
その人が本作ではついに脱ぐんであります。
濡れ場アリです。
まあ、映画興行を考慮すると、かなりのインパクトがあるのでしょう。劇場で鑑賞する限り、平日にも関わらず、6、7割客席が埋まっておりました。
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物語は江戸時代の遊郭、吉原。ここに人気の遊女がいるのです。
男達の関心を浴びたこの遊女、高潮すると「肌に花が咲く」ともっぱらの評判なのです。
それを拝みたくて、彼女を指名してくる客が多いのです。
まあ、その遊郭にとっては看板のような存在です。
「遊女にとって大事なのは男に惚れない事」
それを守り続けてきた、この看板遊女「朝霧」
ところが、あるとき縁日で知り合った半次郎という男性に、心引かれてしまうのです。彼は、腕のいい、染め物職人。朝霧の切れた下駄の鼻緒をキレイに直してくれたりします。
朝霧はもうすぐ年季明けです。吉原の遊女という身分から、ついに解放か、と思いますが、名の知れた遊女ともなると、お金持ちの「旦那」さんが放っとかないわけですね。
旦那の方は朝霧を身請けするつもりですので、もう半分自分の所有物のように思っている。
ある日、この旦那の宴席に朝霧が呼ばれました。とろこが、その連れの客として、なんとあの半次郎がいるのです。半次郎にしても、まさか、幼顔の可憐な彼女が遊女であったとは、全く青天の霹靂。しかも、朝霧としては、スポンサーである旦那の宴席。旦那からのいやらし〜い、あ〜んなことや、こ〜んなことも、つれの半次郎の目の前で演じてみせなくてはならない。こりゃ〜、辛い状況ですな。
というわけで、その後どうなるのかは、劇場でお楽しみくださいませ。
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本作の見所は、もちろん安達祐実がどのように大人の女、しかも遊女を妖艶に演じるか? にかかっている訳でして、実によく分かりすぎる展開の作品です。
吉原の遊女を扱った作品として、近年では蜷川実花監督、土屋アンナ主演の「さくらん」があります。あの作品は僕も劇場で鑑賞しました。
吉原の遊女を扱った作品として、どうしても本作と「さくらん」は見比べてしまいますね。本作「花宵道中」が原作は女性ながら、男性監督を起用したのに対し「さくらん」の場合、その特筆すべき点は、原作 安藤モヨコ、脚本 タナダユキ、監督 蜷川実花、主演 土屋アンナ、更には音楽さえも椎名林檎さんが担当。
まさに鉄壁の「女性チーム」を組んでいる事です。徹底して女性目線の「吉原、花魁映画」を作ろうとした蜷川実花監督の狙いは見事的中しました。僕としては蜷川実花ワールドを楽しめる佳作であると感じました。
では、本作「花宵道中」はどうでしょうか?
残念ながら、その点、男性の興味本位の部分があちこちに見え隠れする感じがあるのです。女性の観客の共感や支持を得られるのかなぁ〜。この辺りは逆に僕が女性の観客にお訊きしたいところです。
え〜、もちろん、R15指定なので「良い子の皆さん」は安達祐実さんぐらいの年齢になってから見てくださいね。
**************
天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆
美術 ☆☆☆
音楽 ☆☆☆
総合評価 ☆☆☆
**********
作品データ
監督   豊島圭介
主演   安達祐実、渕上泰史、
製作   2014年 
上映時間 102分

ふしぎな岬の物語


吉永小百合企画・主演『ふしぎな岬の物語』予告編

2014年10月22日鑑賞
さゆりマジックなんでしょうね、これは。

タイトル通り、実に不思議な作品でした。これはプロデュースも務めた「吉永小百合マジック」なのかな。
特にドラマチックなストーリーでもない。
原作は未読ですが、元々は、短編をいくつかまとめて連作としたお話らしいですね。それを元に一本の映画としてまとめているのですね。僕はそれを知らずに観ました。
道理で、なんか、悪く言えば脚本の背骨がそもそも存在しないようなお話なんですね。
岬の端っこに人知れず佇む、ちっぽけな喫茶店。
そこに集まる、ご近所の人々。その日常を、カフェの店主である吉永さん演じる主人公を中心として、淡々と描いてゆきます。
本作の監督は成島出氏。そのタッチは、本作で登場する虹の絵のように、ほんわかした、水彩画のよう。
こういう作品の場合、自分の興味のある部分だけに着目して楽しむと言う手もありです。
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僕の場合は、主人公の甥の暮らしぶりに注目してしまいました。
演じるのは阿部寛さん。
ワイルドです。
なんと、お風呂はドラム缶、下は焚き火。
いわゆる五右衛門風呂。
それも青天井、屋外です。
ほとんど、原始的とも言える暮らしぶり。
庭で焚き火を燃やして、ぼーっとしてみたりする。こういう人の住む家はもちろん、牛小屋か、馬小屋を思わせる建物なんですね。その作り込みの面白い事。
また、主人公の喫茶店の横には、実に小さな、真っ白な家が建っています。よくみると、なんと掟破りの屋根。塗りで仕上げてある。雨漏りしないんだろうか? とにかくかわいらしく、いじらしく、真っ白な姿で、けなげに建っている白い家。
まあ、本作では、正直、僕はそんなところばかり観ていました。
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でも不思議。
エンドロールが流れる中、なぜかふと涙がこぼれました。
そういう映画なんですね。
主演の吉永さんが、コーヒーを入れる時のおまじない。
「美味しくなぁ〜れ、おいしくなぁ〜れ……」
人生、これもやんなきゃ、あれもやんなきゃ、もっと、もっと、頑張らなくちゃ、と緊張を強いられる事ばかりですよね。でもこの言葉を聞くと、
「ゆっくりになぁ〜れ、ゆっくりになぁ〜れ」と僕には聞こえたのでした。

**************
天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆
美術 ☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆
総合評価 ☆☆☆
**********
作品データ
監督   成島出
主演   吉永小百合、阿部寛、竹内結子、笑福亭鶴瓶
製作   2014年 
上映時間 117分

蜩の記


映画 「蜩ノ記」 特報 役所広司、岡田准一、堀北真希、原田美枝子

2014年10月12日鑑賞
武士ならば弱いものを守りなさい
 
佇まいの良い作品だなぁ〜。監督は小泉堯史氏である。
この人は山本周五郎原作、黒澤明監督の遺稿「雨あがる」を監督した。
僕は原作を読み終えた後、しばらく涙が止まらなかった。
ありふれた「市井の人たち」を映画作品として撮る。
しかし、ありふれたひとたちであっても、人の事を思いやる、弱い人の心に寄り添う。そんな生き方が出来る人は映画を撮る価値がある。
本作を観終わった後、小泉監督が表現したかった事が、自分の腹の奥底の方に、ストンと落ちてゆく。
後味が清々しく、美しい作品である。
どこかの国のエラい人が「美しいニッポン」と言った。
「ゲンパツ」とかいう「ホーシャノー」を垂れ流す「巨大湯沸かし器」は「コントロールできています」と言いきった。
こういう人たちはきっと、「人の事を思いやる、弱い人の心に寄り添う」よりも「自分の出世を思いやる、そのためには、より強い人に寄り添う」のだろう。
そういう人たちに、この作品を見せてあげたいと思う。
まともな人間なら、きっと自分の生き様に「恥」を感じるだろう。
この映画の主人公のように三年先と言わず、今すぐ
「腹を召されよ!!!」
と厳に申し上げたい。
本作の主人公、戸田秋谷(とだしゅうこく・役所広司)は不祥事を起こし、三年後に切腹する運命を受け入れている。
今は自宅蟄居の身だ。その見張り役として、藩から命を受けたのが岡田准一演じる、壇野庄三郎である。
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壇野は、戸田の逃亡など、不審な行動がないかを常に監視する。しかし、壇野がそこで見たのは、同じ武士として、戸田が極めて尊敬すべき人物であったことだ。
彼は一つの疑問を抱くのである。
本当にこの戸田が「藩主の側室と一夜を共にした」という、驚嘆すべき大罪を犯した人物なのか?
やがて壇野庄三郎は、藩の根幹を揺るがすような事実を知るのだが………
この作品で特筆すべきは、何よりも美しい絵心だ。端正でしっとりとしている。しかし、決して浮つかず、がっしりとした「絵」をスクリーン上に投影させている。小泉監督は、黒澤明監督によって鍛え上げられた、いわゆる「黒澤組」出身である。本作の絵の美しさは、その黒澤作品を上回るのではないか? とさえ思えるほどだ。
かつて黒澤監督は映画の事を「シャシン」と呼んだ。
映像を、キャメラのレンズを通してフィルムに焼き付けること。その、なんとも手作業の感覚が、大切に大切に、小泉監督に受け継がれている感じがする。
スクリーンに映る、日本の風景。日本の家並み。そしてなにより、質素ではあるが、毎日の暮らしを丁寧に、丁寧に生きていた、江戸時代の「ニッポン人」そして「武士」の姿が印象的だ。
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私は決して武士の生き方や、所作を美化しようとか、誉め称えようなどとは、これっぽっちも思わない。
「仏作って魂入れず」と言うたとえがある。
いくら武士として武術が優れようが、その所作が寸分なく完璧であろうが、関係ない。
自分より身分の低いもの、立場的に弱い者。そういった人たちに罪を被せたり、辛い暮らしを負担させたりする者は、すでに武士のココロを失っている。
「美しいニッポン」とか言っているエラい人や、どこかの大都会に「世界の運動会」を呼んだぞ!!と浮かれている人々よ。
武士ならば「弱いものを守ってこそ武士」である事をお忘れなく。
 
**************
天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)
物語 ☆☆☆☆
配役 ☆☆☆☆
演出 ☆☆☆☆☆
美術 ☆☆☆☆☆
音楽 ☆☆☆☆☆
総合評価 ☆☆☆☆
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作品データ
監督   小泉堯史
主演   役所広司、岡田准一、堀北真希、原田美枝子
製作   2014年 
上映時間 129分

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