シリーズ4回目は、ララサンミスジ。

ララサンというのは、現在は達観山、以前は拉拉山と呼ばれていた台湾北西部の2,500Mを越える山の名前です。

 台湾の森林は、日本の植民地以前は山間地帯は全域、深い樹木におおわれていたようですが、日本の植民地政策によって、樟脳の原料として大規模な伐採が行われ、特に材木搬出の便が良かった北東部の太平山や中西部の阿里山地域の、すでに当時の日本には珍しくなっていた巨木と森林はことごとく皆伐されました。
 植民地時代に昆虫採集を行った日本人の記録によると、これらの地域は森林性の昆虫が多種類記録されていて、希少な昆虫の宝庫だったようですが、今は森林自体は二次林が回復しているものの、かつて生息していた珍蝶の姿は見ることができません。
 そのため、太平山と阿里山は台湾の蝶愛好者からは、フトオアゲハ以外に面白いものがない一番つまらない地域と言われています。

 一方、拉拉山一帯は、交通の便が悪く、大渓という深い断崖を伴った渓谷を越える必要があったせいで、日本植民地政府の森林伐採を免れた数少ない地域の一つで、開発が進んでしまった台湾のなかでも、いまだに原始的森林が残っている自然度の高い場所といわれます。
 この周辺は、オオムラサキやフトオアゲハ、モクセイアゲハ、各種ゼフィルスなど、台湾を代表する多くの蝶が見られます。

 当然ながら、この地で発見された昆虫も多く、蝶では拉拉山の名がついたものが3種類います。
ララサンミスジ、ララサンミツオシジミ、ララサンミドリシジミです。

 台湾には広義のミスジチョウの仲間が23種類もいますが、このララサンミスジはコミスジ属ではなく、ヤエヤマミスジやシロミスジのグループに分類されているようです。ミスジチョウをやや大ぶりにした感じの中型のミスジで、台湾北部〜中部の高地帯に局所的に分布しています。

 ブログ主は、台湾中部横断道路の東側、観光地として有名な太魯閣渓谷の上部で、ミヤマシロチョウを探しているときにこの蝶を見つけました。

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ララサンミスジ♂   2016/05/13 花蓮縣太魯閣 
深い渓谷にそそぐ支流のような小さな流れのそばに開けた林間で、テリトリーを張る♂。

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ララサンミスジ♂   2016/05/13 花蓮縣太魯閣 
あたりを飛ぶ♂や、ほかの昆虫を追撃に飛び立った。
同じ場所に戻ることもあれば、気まぐれにまた別の場所でテリを張ることもある。

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ララサンミスジ♂   2016/05/13 花蓮縣太魯閣 
砂利の地面に流水が染みるような場所に、吸水にやってきた。
ほかのミスジチョウ類と比べて、翅を横断する白い帯が太く、この蝶の希少さとも相まって、全体的に優美で気品が感じられる。

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ララサンミスジ♂   2016/05/13 花蓮縣太魯閣 
この場所には、おびただしい数のテングチョウ(台湾亜種)がいて、ララサンミスジの周りを飛び回っては、吸水に降りていた。

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ララサンミスジ♂   2016/05/13 花蓮縣太魯閣 
この日、この水場の周囲で5頭のララサンミスジを見ることができた。
カエデ類ではなく、台湾高地のスイカズラの一種を食草としている。



一方、同じ場所に別のミスジもいる。

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                   タイワンホシミスジ   2016/05/13 花蓮縣太魯閣 
ホシミスジの名は付いているが、狭義のホシミスジ属とは別属。
台湾全土の山地に生息するが、多くないという。

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タイワンホシミスジ   2016/05/13 花蓮縣太魯閣 
やはり突き出た目立つ枝先でテリを陣取っていた。
ララサンミスジよりさらに少し大きめで、日本のイチモンジチョウと同じぐらいのサイズだった。



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 シリーズ3回目は、ギンスジミツオシジミです。

 前回アップしたキマダラルリツバメは蝶愛好者の間でも人気のある蝶ですが、生息地が限定的ということばかりではなく、尻尾を2本持っているという翅型の面白さも、蝶ファンの心を惹きつけるのだと思います。
 
 日本では尾が2本ある蝶は、キマルリただ一種だけですが、台湾には尾が2本どころか、3本もある蝶が4種類もいます。
 ミツオシジミと名付けられた蝶たちです。
 これら4種類のうち、低山地帯に生息するミツオシジミは、それほど数多いわけではありませんが、台湾全土に広く見られ、場所によっては多産するところもあるそうです。
 とはいえ、私はまだ見たことがありません。
 あとの3種(ヒメミツオシジミとララサンミツオシジミ、ギンスジミツオシジミ)は、いずれ劣らぬ珍品ぞろいで、森林性ということもあり、なかなかお目にかかることは難しいようです。
 
 この珍品のミツオシジミ3種のなかでもとりわけ希少といわれるのが、今回アップするギンスジミツオシジミです。
 この蝶は、台湾全土に記録はあるものの、確実に姿を見ることができるのは、現在のところ台湾南部の高雄近郊と、蘭嶼島の2か所が知られているだけです。

 蘭嶼島ではただ一か所、島西部にある小川の岸辺に沿って繁茂する植物群落(この植物の日本名は不明)のところで見ることができました。
 この蝶は、キマルリと同じように、幼虫がアリの巣中に運ばれ、アリから餌をもらって成長するそうで、環境のえり好みが厳しいことが、著しく個体数の少ない原因ではないかと言われています。


イメージ 2ギンスジミツオシジミ 左♀:右♂   蘭嶼島 2016/05/09
新鮮な♀のそばに♂がやってきた。
メスは3対の尾がきれいに揃っているが、♂は一部欠落しているようだ。

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ギンスジミツオシジミ ♂     蘭嶼島 2016/05/09
同じ♂ 銀色の入った複雑な模様が面白い。

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ギンスジミツオシジミ 左♀:右♂     蘭嶼島 2016/05/09
蝶が止まっている植物との距離は5メートルぐらい。
コツバメぐらいのサイズなので、ズームで引き寄せて写すのに苦労した。

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ギンスジミツオシジミ ♂     蘭嶼島 2016/05/09
やや近くに来たところを何枚か撮ることができたが、それでもこれが精いっぱいだった。
この蝶は、この厚みのある大ぶりな葉を茂らせたこの樹で発生している。
幼虫は卵から孵化後、数齢を過ごした後、この植物に巣を作る特定のアリの巣に運ばれて育てられるという。



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              コウトウシロシタセセリ       蘭嶼島 2016/05/09
       このセセリもまた蘭嶼島の特産種。花はホナガソウ。

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              コウトウシロシタセセリ       蘭嶼島 2016/05/09
       キシタシロチョウ同様、数は多くないが、海岸林そばの草地で吸蜜していた。


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夕暮れの蘭嶼島    2016/05/10
人家の明かりも少ない孤島は、暮れなずむ紫色の光を残しながら、闇に沈んでいく。

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 今回の未掲載シリーズは、キマダラルリツバメ・ファミリーです。

 キマルリ類は、熱帯から温帯系のグループで、朝鮮半島南部と日本に生息するキマダラルリツバメはこのファミリーの中では最も北に分布する種類と言われます。
 台湾では、キマルリの仲間は3種類いて、私はそのうちの一種、タイワンフタオツバメを撮影することができました。

 台湾に蝶の撮影に出かけるようになって以来、フタオツバメを写すのは、ブログ主の目標の一つでもありました。
 ミツボシフタオツバメとタイワンフタオツバメは、台湾全土に普通と言われていますが、なぜか6回も出かけているのに、一度もその姿を見かけたことがありません。
 時期が悪かったか、よほど運が悪かったのでしょうか。泣:

 昨年5月、太魯閣渓谷の上部でやっと念願のキマルリの仲間の姿にお目にかかることができました。

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タイワンフタオツバメ 2016/05/13 太魯閣渓谷
やっと見つけました。
台湾3兄弟のなかで、一番見ごたえのあるタイワンフタオツバメ。
日本のキマダラルリツバメより一回り大きめのサイズで、キマルリを見慣れた目で見ると
その大きさに少々驚かされる。


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タイワンフタオツバメ 2016/05/13 太魯閣渓谷
全体のサイズの大きさに比例して、2対の尻尾も長い。
黒い縦縞の中央に銀色の筋が太く鮮やか。

イメージ 3
タイワンフタオツバメ 2016/05/13 太魯閣渓谷
キマルリより黒い縞模様が太くはっきりしているので、くっきりとしたトラ模様が一層この蝶をかっこよく見せている。



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キマダラルリツバメ 2016/06/13 福島県三島町
こちらは、日本のキマルリ。
台湾の兄弟たちに比べて、小柄で優しい感じがする。


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キマダラルリツバメ 2016/06/13 福島県三島町
近くのクルミの葉の上にイナゴの幼虫が。
同じ空間に違う生き物たちが共存しているというのがいいですね。


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キマダラルリツバメ 2016/06/13 福島県三島町
タイワンフタオツバメの撮影から、ちょうど1か月目のこの日に撮影した。
台湾の兄弟たちは、年に3〜4世代も発生するそうだが、キマルリは年一回のみ。


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キマダラルリツバメ 2016/06/13 福島県三島町
キマルリの美しい紫色の輝きは、
翅を斜めに立てたところをやや後方からカメラを向けたときに写せることが多い。
このような真上からのショットでは、輝く光がうまくでないのが、ちと悔しい。




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 新年になって、拙ブログの更新をさぼっています。汗;
 ヒメギフの季節までまだまだ1月半以上ありますので、その間、昨年撮影してブログにはアップしていなかった写真などをご紹介しようかと思います。汗;

 ブログにアップしていなかったのは、タイミングを外してしまったとか、アップするにはあまりに写真が無残ですっていうことなどがあります。笑
 そんな恥ずかしい画像も含めて、ほんの少し穴埋めとして何回かに分けてアップいたします。

 ブログ未掲載画像の第一弾は、
 台湾・蘭嶼島で撮影したキシタシロチョウ。

 台湾にはシロチョウの仲間が沢山いて、似たような種類も多く、正直言ってじっくり構えないとなかなか親しみが薄いグループです。
 でも、中にはメスジロキチョウのような普通種にしておくにはもったいないほど美しいものが何種類かいます。
 キシタシロチョウもそんな美しいシロチョウの一種です。
 この蝶は、台湾では台湾本土には生息せず、わずかに蘭嶼島とすぐ近くにある緑島でしか見ることができません。
 また、蘭嶼島のどこにでもいるというわけではなく、食草が海岸林の特殊な植物で、島のごく限られたポイントに生育しているため、この島に行くこと自体が結構遠いこともあって、台湾の同好者でもこの蝶を撮影したことがある人は少ないということです。

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台湾・蘭嶼島  2016/05/09
台湾本土の南端から東方約80Kmの洋上に浮かぶ蘭嶼島からの眺め。
東シナ海の真っ青な海の色が美しく眩しい。
この島には、この島名の由来ともなった各種のランが自生している。
島特有種が多く、昆虫や鳥もこの島独自の種類が多く、全島が台湾の自然保護区に指定されている。

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キシタシロチョウ♂ 蘭嶼島  2016/05/09
この蝶の裏の模様は、シロチョウ科によくみられるような紋様だが・・

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キシタシロチョウ♂ 蘭嶼島  2016/05/09
近寄ってよく見ると、とても美しい。
白黒の網目模様も黄色と協調しあって亜熱帯の蝶の雰囲気が感じられる。

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キシタシロチョウ♂ 蘭嶼島  2016/05/09
花で蜜を吸っているときは、ほとんど翅を開くことがないので、飛翔を狙ってみた。
翅表のさらに鮮やかな黄色の輝きに驚かされます。

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キシタシロチョウ・終齢幼虫  蘭嶼島  2016/05/09
成虫が飛んでいるすぐ近くのヤブに幼虫を見つけた。
ギョボクの仲間。

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キシタシロチョウ♀ 蘭嶼島  2016/05/09
メスはオスより色合いが淡色で、シブイ感じがとてもいい。
夕刻の亜熱帯の焼けつくような日差しが和らぎ、気温がやや下がったような頃合いに吸蜜に現れた。

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キシタシロチョウ♀ 蘭嶼島  2016/05/09
しっとりと落ち着いた、墨絵のような紋様が素晴らしい。
メスの翅の表を写すことができたのは、この1枚だけでした。汗;


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 前回ブログ更新の後、何度か温暖な日があり、ムラサキシジミを追加撮影することができました。
 なかなかいい位置で見せてくれなかったオスの完全開翅にも、やっとお目にかかれました。
 
 今回は、紫色の輝きをしっかり写したいと考え、できる限りアップで撮ることを心がけました。
 ズームのテレ端側ぎりぎりまで引き寄せて撮ってみると、結構鱗粉の輝きがそれなりに再現できたように思います。(このブログにアップした時点で精細感は帳消しになってしまいますが。 汗;) 


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ムラサキシジミ♀ 2016/12/03 仙台市青葉区
この時期になってもあまりスレのない個体。
寒い日が続いたために、あまり飛ばなかったためでしょうか。

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ムラサキシジミ♀ 2016/12/02 仙台市青葉区

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ムラサキシジミ♀ 2016/12/03 仙台市青葉区
日光のあたり具合と撮影の向きによって、紫色の部分はこんな水色の光を反射する。

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ムラサキシジミ♂ 2016/12/03 仙台市青葉区

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ムラサキシジミ♂ 2016/12/03 仙台市青葉区
♂の青い輝きをアップでやっと写すことができた。

イメージ 5
ムラサキシジミ♂ 2016/12/03 仙台市青葉区

イメージ 6
ムラサキシジミ♀ 2016/12/03 仙台市青葉区
この日は気温が上昇し、蝶たちは吸餌に余念がない。
咲き残りのセイタカアワダチソウの花にやってきた♀。
黄色の花と紫色がお互いに映えるだろうにと思っても、あいにくこの蝶は吸蜜のときは翅を開くということがない。

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ムラサキシジミ♀ 2016/12/03 仙台市青葉区

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ムラサキシジミ♂ 2016/12/03 仙台市青葉区

イメージ 9
ムラサキシジミ♂ 2016/12/03 仙台市青葉区
見事なまでに美しいブルー。



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