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川柳集「秋の暮れ」 藤本秋声
その1 柿の種
ネグリジェと聞いただけでも恐ろしい
ウエストに緊張感のないカボチャ
バナナダイエットバナナを食べ過ぎる
はみ出したお肉水着へ押し込める
豚マンの匂い網棚から漏れる
ピーナツは妻がわたしは柿の種
肉じゃがの肉だけ先に食べる人
のり弁の海苔が蓋からはがれない
でぼちんで割り損なった生卵
明くる朝気付くレンジの忘れもの
猫舌の前でたこ焼き減って行く
グラタンを誉めるとすねる煮ころがし
ニラが歯に挟まって取れないのです
巻きついたラップいらいらしないでね
わからず屋プリンを箸で食べている
大根の首もおしゃれにエコバッグ
その2 魔女
息子から電話詐欺師と間違える
聞こえてはいます上司の独り言
若女将目当てに行けば大女将
窓を開ければお墓が見える安ホテル
湯上がりをぶらりと覗く秘宝館
巨人ファンだとしくじった後で聞き
すべり込みアウトで終わる甲子園
流し素麺一番下で待たされる
今のは練習やったと負けず嫌いなり
ステーキへ奥歯が痛い医者嫌い
社長室ゴルフボールが落ちている
どっちが次長でどっちが課長かな
ラブメール送信先を間違える
妻が出て間違い電話だと気付き
家具売り場ベッドで寝ては困ります
資産家の壁からぬっと鹿の首
猫の影ぬうっと伸びて魔女になる
その3 秋の暮れ
キッチンの物音さえも秋の夜
家中の力で開ける瓶の蓋
私流に卵を崩す月見そば
偽善者の目に手をこする冬の蝿
気の弱い男ゆっくり一人鍋
下手くそな字を受け付けで試される
世話好きな人で写真があまりない
花に水遣る善人も悪人も
双子なら入れ替わってるサスペンス
未練たらたら男が歌う女唄
元気出せと女が歌う男唄
屋根診断タダより高いものはない
風になる話みなさん楽しそう
油断めさるなゴキブリに羽根がある
ため息が出るのでテレビ付けておく
おばちゃんらまだ喋ってる秋の暮れ
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