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川柳集 「へぼきゅうり」 藤本秋声
第一章 花金
金曜日餃子を食べるオフィスラブ
とりあえずビールと恐い女性軍
新入社部長の十八番まで歌う
知らないぞ紅一点の飲みっぷり
男運悪い二人で仲がよい
コップ酒男嫌いに訳があり
世話好きが人の肉まで裏返す
会社では喋らないのにあの二人
あくびまで一緒あんたら怪しいで
トロあわび勿論回らないお寿司
そのかわりシャネルで我慢してあげる
花嫁の友人マイク離さない
七転び八起きお化粧厚くなる
第二章 山の神
太ったんちゃうのと嫌な久し振り
ゴミ出しの朝お隣も眉がない
まだちょっとある逆立ちのマヨネーズ
往復でいただくサラ金のティッシュ
もひとつやねえと試食の爪楊枝
溝掃除うちの主人でございます
干支を言えば計算をする嫌な人
七人掛けの席へ八人目のお尻
冷蔵庫掃除しました焼きうどん
いい肉があった実家の冷蔵庫
子供は正直どう見てもおばさんや
ややこしいお客へレジもどんくさい
エレベーターそっと乗ってもぶーと鳴り
冗談はやめて小じわが増えるから
ルノワールの女ぐったり熱帯夜
サスペンス台詞の長い崖の上
帰るコールへちょうど良かったマヨネーズ
正直に申してみよと山の神
第三章 へぼきゅうり
雄の蚊よ僕も青汁飲んでます
清原も三振ラジオどつかれる
九回裏残念ながら時間です
妊婦だと席を譲ればそうでなし
松茸より秋刀魚がうまい負け惜しみ
嫁はんの付録で僕は喋らない
弁護士に頼むほどではない夫婦
愛してると気色の悪い標準語
検尿のコップそんなに入れんでも
久し振りの娘にしゃっくりが止まる
妻を待つ肌着売り場の隅の席
公園の鳩よ仲間は親切か
へぼきゅうり男としての意地はある
一言が多いくしゃみをした後も
熟睡をすかされ気付く乗り過ごし
シュミーズにパッチが絡む洗濯機
ほっといてくれとからしを塗りたくる
銀行の利息で鼻をかみました
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