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・がうがうと音立てて燃ゆ札幌の紅葉の終演見る人もなし
・雪原を引き摺るごとく喘ぎいる汽車の悲鳴に猶も鞭打つ
・逃げてゆく津軽の海のみぞれ雪浮きつ沈みつ溺れて離(さ)かる
・地吹雪と罵り声の地を出(い)でてショパンの曲にげに戸惑ひぬ
愚鈍で血の巡りの悪い私だったが、家庭の暗さ、北海道の厳しい風土から脱出を
しようと思っていた。その手段は「勉強」だった。一浪してようやく東京の国立大
学に合格できた。脱出するために乘ったのは、当時は汽車。青函連絡船も船底の大
部屋だった。その時デッキで見た津軽海峡の海を埋めたみぞれ雪のことは忘れられ
ない。溺れる人を見捨てて逃亡するような気分だった。
内地に来て、東京の人が炭炉一つで3月の寒さに耐えているのにビックリした。
その後も考えたが、実は北海道の人々は寒がり。家の外は酷寒だが、家の内は真夏
のように暑い。石炭ストーブをガンガン焚いているから。当時はまだ石油の時代じ
ゃなかった。やがて湘南の地に来て、その穏やかな風土に感心し、柔らかで婉曲的
なものの言い方に慣れていったが、殊にショパンの曲にビックリした。
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