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第四回目のキャラ語り。
誰よりも善であろうとするが故に、誰よりも外道を貫いた男。
Fate/Zeroの主人公、「世界の救済」を唯一絶対の願いとした衛宮切嗣を推したいと思います。
未だかつてこんなに努力が報われなかった主人公は存在しただろうか。
そう思わずにはいられない彼の生き様をこれから紹介したいと思います。
ネタバレ、激しく注意です!
貴様らはそんなにも、そんなにも勝ちたいか。
そうまでして、聖杯が欲しいか。 このオレがたったひとつ抱いた祈りさえ踏みにじって。 貴様らは、何ひとつ恥じる事もないのか。 許さん、名利(みょうり)につかれ、騎士の誇りを貶めた亡者ども。 その夢を我が血で汚すがいい。 聖杯に呪いあれ、その願望に災いあれ。 いつか、地獄の釜に落ちながらこのディルムットの怒りを思い出せ。 たとえ敵からとはいえ。
かつて、こんな罵詈雑言を並べられる主人公がいただろうか。いや、いない(反語)
でも、この時の切嗣の所業を見れば、これで済むのがおかしいくらい外道なんですよね。
言うなれば、詐欺師と殺し屋を足して2を掛けた感じ。
それに敵にだけではありません。
正真正銘の味方、自らが使役するサーヴァント(使い魔)にすらこういわれる始末。
騎士道は幻想ではない!
たとえ命の遣り取りだろうと、それが人の営みである以上、決して犯してはならない法と理念がある。
それはなくてはならないものだ。さもなくば戦火の度に、この世には地獄が具現する羽目になる。
衛宮切嗣。今ようやく、貴様を外道と理解した。 道は違えど目指す場所は同じだと、そう信じてきた私が愚かだった……
ここで、切嗣と共に戦う妻のアイリが必死に諭します。
セイバーは誤解している部分もある。あなたの言葉が必要よ、と。
しかし、切嗣の反応は冷酷でした。
いいや。そこのサーヴァントには話すことなど何もない。
戦場での栄光だの名誉だの、そんなものを嬉々としてもてはやす殺人者には、何を語り聞かせても無駄だ。 この英霊サマは、よりにもよって戦場が地獄よりもましなものだと思ってる。
冗談じゃない、あれは、正真正銘の地獄だ。 戦場に希望なんてない。あるのは掛け値無しの絶望だけ。 敗者の痛みの上にしか成り立たない。勝利という名の罪過(ざいか)だけだ。 なのに人類は、その真実に気付かない。 いつの時代も、勇猛果敢な英雄サマが華やかな武勇談で人の目をくらませ、 血を流すことの邪悪さを認めようとしないからだ。
人間の本質は石器時代から一歩も前に進んじゃいない。
そんな衛宮切嗣という男の原点は少年期にあります。
ある時、切嗣は幼馴染で少し年上のお姉さんのような存在だったシャーレィという少女からこう問われます。
−ケリイはさ、どんな大人になりたいの?−
シャーレィ、ボクはね…
『正義の味方』になりたいんだ。
敵に憎悪され、味方にすら罵られる衛宮切嗣という男。
その男の原点となった願いはあまりにも純粋無垢なものでした。
転じて、青年期。
――見ていてくれたかい。シャーレィ。
今度もまた殺した。父さんと同じように母さんを殺したよ。
君を殺せなかった時みたいなヘマはしなかった。僕は大勢の人を救ったよ。
母さん…ナタリアが着陸に成功していたら、そのせいでどれだけの死人が出たかわからない。
彼女一人の犠牲で…それが防げたんだ…
切嗣は、初恋の相手であるシャーレィを殺せず、そのせいで育った島が死島と化すという体験をします。
その元凶となる、とあるウィルスの研究をしていた実の父をその手にかけた事が、切嗣の苦難の始まりでした。
しかし、死島と化した島で天涯孤独となるはずだった切嗣は一人の女性に救われます。
その女性の名はフリーの魔術師殺し、ナタリア。
殺し屋としての素養を叩きこまれた切嗣は、その世界で生き始めます。
自分を絶望から助け上げてくれた母、ナタリアと共に。
そんなある日の事。
切嗣のところに、毒蜂が蔓延る旅客機をミサイルで爆破しろというミッションが舞い込んできました。
決して地上にあの機を降ろしてはならない。
輸送中に隔離を逃れ、機内に巣くった毒蜂は、成層圏上で機ごと燃やして駆除しなければならない。
それが切嗣に課されたミッションでした。
しかし、その機にナタリアが乗っている事が判ったのです。
しかも、多くの乗客が蜂の猛毒に斃れていく中、ナタリアは未だ機内で健在でした。
つまり。
自分を天涯孤独の身から救い出してくれた育ての母。
彼女をその手にかけさえすれば、他の多くの人間、何千何万の人間が救われる。
切嗣は彼女をその手にかけました。
一切の未練、感謝、愛情、それら全てを断ち切って。
ただ、何千何万の人間たち、彼らが暮らす世界を救うために。
さらに時は流れ、聖杯戦争が始まります。
どんな願いでも叶える事ができる「万能の願望機」たる聖杯。
それを勝ち取る事が出来るのはただ1組の主従のみ。
切嗣の願いは明確でした。
「世界に恒久的な平和をもたらす」
「争いがなく、誰一人として苦しまない世界を構築する」
切嗣は、共に戦う妻のアイリに語りかけます。
アイリ、見ていてくれ。
僕は、僕がこの地で流す血を、人類最後の流血にしてみせる…!
ここで流す血を以って、人類の争い一切を終わらせる。
そのためにはどんな手段も問わない。
何が起ころうと、どんな手を使おうと、
そこでどれほどの血が流れようと。
ここで流す血が人類最後の流血であると信じて。
――その願いを叶えるための聖杯を勝ち取る。
それでも、その道は苦難の道。
切嗣は、最愛の妻、アイリへ向けて小さく零します。
もし僕が今ここで、何もかも放り投げて逃げ出すと決めたら―――アイリ、君は一緒に来てくれるか?
しかし、運命は残酷でした。
さらに時計は進み、再び、切嗣は岐路に立たされます。
ついに究極の二択を迫られる事になるのです。
最愛の妻と娘をその手にかければ、他の全ての人間は救われる。
言い方を変えれば、他の全ての人間の犠牲の上でしか、妻と娘は生かせない。
切嗣は決断します。
60億の人類と、家族2人…
アイリ、僕は… 君を殺して、世界を救う。 そう口にした切嗣の顔は苦痛に歪み、血に塗れ、涙が浮かんでいました。
「世界を救済したい」
そう願う事はこんなにも絶望に溢れていなければいけないのか。
胸をよぎる想いを断ち切り、最愛の妻をその手にかける切嗣。
あなたの理想を知り、同じ祈りを胸に抱いたから、今の私があるんです。
切嗣、あなたは私を導いてくれた。人形ではない生き方を教えてくれた。
私は…幸せだよ。
その時、切嗣の脳裏に浮かんだのは、かつて、確かにアイリが切嗣へ向けた言葉。
その顔には確かな決意と微笑みが浮かんでいました。
しかし、目の前に在ったのは驚愕と苦悶に歪む妻の顔。
そんな…どうして……切…嗣…
言ったはずだ。
僕は……世界を救うと。
薄れゆく意識の中、切嗣が最後に見た物は苦しみと憎悪に満ちた妻の顔。
最後の力を振り絞り、彼女の口が開きます。
呪ってやる…
衛宮切嗣…オマエを呪う…死ぬまで悔やめ…絶対に…許さない。
血を吐きだして息絶える妻。
その亡骸を見下ろしながら切嗣は吐き捨てます。
あぁ、いいとも。
言ったはずだ。僕はそれでも……
――世界を救う。
そうしてついに聖杯を手にした切嗣。
その正体、その本質を視た切嗣は思わず叫びます。
違うッ!こんなモノ、望んじゃいないッ!!
こうする以外の道があって欲しいと……
だから僕は、聖杯という奇跡に頼るしかないと……
「聖杯」は、所有者となった切嗣に語りかけます。
生憎だが、君が識りもしない方法を、君の願望に加えるわけにはいかない。
君が世界を救済したいと願うなら、それは君が識る方法で成就されるしかない。
ふざけるな!
それのどこが奇跡だと言うんだ!?
奇跡だとも。
かつて君が志し、ついに個人では成し得なかった行いを、決して人の手では成し得ぬ規模で完遂する。
君が一生かかっても摘み取れなかったであろう命を、この一瞬で刈り取る事ができる。
これを奇跡と言わずして何と言うのだ。
そうして天蓋に穿たれた聖杯から零れ落ちたモノは、触れた物に業火をもたらす汚泥。
それは眼下の街に息吹く何百、何千という命が一瞬にして蒸発してしまった瞬間でした。
「世界を救済したい」
己は一体、何のために戦ってきたのか。
あらゆる人間の憎悪を受けてもなお、実現したかった願いがあったからだ。
その実現のために最愛の命さえ切り捨てた。
その結末がコレなのか。
こんなモノは奇跡でもなんでもない。
アレはこれ以上現界させてはいけないモノだ。
そうして、切嗣は命じます。
「聖杯を破壊しろ」
さらに時は流れ、平和を取り戻した街の一角にある和屋敷。
切嗣はその縁側に腰かけていました。
そして、その傍らには、たった一人、聖杯がもたらした地獄から生還した少年がいました。
そう、彼こそが切嗣が引き取る形で一緒に住んでいた衛宮士郎という少年です。
士郎、僕はね、昔、正義の味方になりたかったんだ。
それを聞いた少年は訝しげに答えます。
なりたかったって…諦めたのかよ?
うん、残念ながらね。
ヒーローは期間限定で、大人になると名乗るのが難しくなるんだ。
そんな事、もっと早くに気が付くべきだった。
大人になるとなれないのか…
それじゃあ、しょうがないな。
――あぁ、本当に、しょうがない。
そう答えた切嗣の心中はいかなるものだったでしょうか。
さらに切嗣は続けます。
いいかい、士郎。
誰かを救うという事はね。誰かを救わないという事なんだ。
実の父をその手にかけて以来、世界を救済するために、目に見える全ての人々を救うために、
多くの大事な命をその手にかけてきた切嗣が最後に得た物は、あまりにも不条理な真実でした。
その時でした、少年の声が耳に届いたのは。
「しょうがないな」
爺さんがなれないんなら、俺が代わりになってやるよ。
爺さんがなりたかった「正義の味方」に、な。
――あぁ、安心した。
これを以って、正義の味方という呪縛から解き放たれた切嗣。
それは同時に彼の命が尽きた瞬間でもありました。
この瞬間に物語はFate/ZeroからFate/stay nightへと引き継がれます。
以上です。
衛宮切嗣。
後に衛宮士郎に受け継がれる事になる「正義の味方」の理念を持つ人物。
今回のキャラ紹介は彼でいかせていただきました。
衛宮士郎もそうですが、その生き様は本当に凄いの一言。
同時に命の重みについて色々と考えさせられるキャラの一人です。
たった一人の最愛の人と、何万人の他人。
しかも何万人の他人には、それぞれ彼らを最愛とする人がいる。
果たして、どちらの命が重いのかと。
余談ですが、同じFate/Zeroという作品でもう一人、その生き様が凄まじい男がいます。
その男こそが「征服王」イスカンダル。
前々回、第二回キャラ語りでも取り上げさせていただきましたね。
↓イスカンダルのキャラ語り記事
印象的なワンシーンを挙げてみます。
イスカンダル。貴様とて……
貴様の死後、その世継ぎは葬られ、築き上げた帝国は四つに引き裂かれて終わったはずだ。
その結末に、貴様は何の悔いもないと言うのか!?
今一度やり直せたら、故国を救う道もあったはずだと……
そうは思わないのか?
哀願を込めてセイバーが問うシーンです。
しかし、征服王たるイスカンダルの答えは明確でした。
「ない」
余の決断、余に付き従った臣下達の生き様。
その果てに辿り着いた結末ならば、その滅びは「必定」だ。
悼みもしよう。涙も流そう。
――だが、決して後悔だけはしない。
そんな――貴様は何故――
ましてそれを覆すなど…
そんな愚行は、あの時、命を賭して余に付き従った全ての者達への冒涜であるっ!!
これを読んでからというもの。
本当に悔やむという事が少なくなったなぁと思います。
アニメに影響されるなんてと気恥ずかしい気持ちも多々ありますが(笑)
このイスカンダルの台詞を思えば、悔んでいる暇があるなら前に進むしかない。
確かにそう思えるようになりました。
どんなに辛い時にも、どんなに苦しい時にも、その時、支えてくれた人はいたはず。
決してゼロではないはずです。
ならば、その時をやり直したい、無かった事にしたいと願う事は、
その時の自分を支えてくれた人達に対しての不誠実だ。
そう思うようになりました。
おかしい…でしょうか…確かになんかおかしい気もしますが…そう思うんですよね^^;
それではここまで読んでいただきありがとうございましたm(__)m
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