桃実 says

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京都、京都人

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これは、昔、一時期住んでいた京都で経験した実話である。

京都は、東京に比べれば仕方ないのであるが、働くところのない土地で、私は、短期間の派遣の仕事を転々としていた。
あるとき、老舗のお香(こう)屋の経理の仕事が入ってきた。自宅に近かったので、行くことにした。
その会社は、そのビルが香をつくる工場であり、事務所であり、社長夫妻の自宅であり、かつ、1階に香を売る店舗もあった。
その店舗に、あるお客が香を買いに来た。買った物の合計は、1200円であった。
ところが、その客は、1200円を払おうとしない。
話を聞くと、その客は、ある会社のお使いで来ていた人で、その人が勤める会社のポリシーにより、現金払いは厳禁で(シャレにならんなぁ)、必ず請求書を受け取ってから、しかも、銀行送金手数料を差し引いて払う、というのである。
初めての客なので、店舗の従業員はそのまま鵜呑みにしたらしく、あとで1200円の請求書をその会社あてに送付した。
ところが、その会社は、銀行送金手数料600円(注:当時は今と違って銀行送金手数料が高かった)を差し引いて、たったの600円しか振り込んでこなかったのである。
なんという失敬きわまりない会社だろう。
それならば、600円までのものは、事実上タダで買えることになってしまうではないか。

で、私は経理に派遣されていたので、その会社あてに、600円の請求書を、不定期に送付する、という仕事も指示された。
「あいつらが振り込むまで、請求書を送り続ける」
と、その経理責任者は執念と敵意を燃やしていた。
そのうち、切手代の方が600円を超えてしまっただろう。
私は、その派遣先には3ヶ月しか勤めなかったので、その後日談を知らない。

今でも時々この失敬きわまりないお客の会社のことを考えたりする。
こういう失敬な会社は、結局、ほかの取引先にも嫌われて、取引を断られ、結局倒産したのではないかな。
客にも客のマナーというものがある、と、深く悟らされた一件であった。


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