桃実 says

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母退院す

東北では、ぼけてしまってすっかり子供に返ってしまった老人のことを、「二度わらし」と呼ぶそうだが、言い得て妙である。
頭が幼児化してしまうだけではない。
おむつをあてることも、そう。
どろどろにしてゼリーで固めたり、ミキサーですりつぶした食事をとることも、そう。赤ちゃんの場合は「離乳食」と呼ぶが、老人の場合は「嚥下食」となる。肉でもなんでもミキサーにかけられてくるから、メニューを見ても、よくわかわからない。塩味はほとんどない。

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誤嚥を防ぐため、出されるお茶にも、くず湯のようなとろみがつけられている。普通の水を与えるときも、こんなデキストリンパウダーを混ぜ、濃度をつけるよう看護師さんから指示された。こんな粉も売っているのだ。

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母が入院していた部屋は、認知症の老女部屋だった。
看護師さんが来やすいように、ナースステーションから一番近い部屋。
母の隣の人は、数分おきに「あーーーーーーーーーっ」と叫ぶ。母のむかいの人は、見た目、なんだか、バーか小料理屋でもやっていたような派手な顔をしていたが、言動がものすごくきつい。看護師さんが「もう少し食べましょうね」なんて優しく話しかけても、
「そんなこと、わかってるんだよ! うるさいねえ! 頭に来るねえ!」
と叫ぶ。
認知症の症状は、障害のある脳の箇所によって異なるようだし、その人の過去の人生も影響しているのだろう。

母は、老人ホーム、同ホームのかかりつけ医師、そして病院の3者の連携で、無事入院が完了し、もとのホームに戻った。しかし、母はいまだ、自分がなぜそのホームに住んでいるのか、理解していないのだが。

いつ逝ってもおかしくないけど、まだちょっと覚悟ができていない。
それでも、先日、遺影を注文してきた。父と一緒に撮りに行ってもらった写真館に、まだボケる前の母の写真のデータがある。用意しておいて無駄にはならない。
しかしこの写真館のご主人、
「いや、案外、遺影を作ると、5年6年と長生きするもんですよ」
と言う。はあ、そうなの。

認知症を治す、あるいは、予防する薬はできないのだろうか。でないと、この先の日本がおそろしい。






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