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Wolfgang Amadeus Mozart (1756―91)


前回の続き

3. ウィーン時代―1781年以後


1781年後半から生涯を閉じるまでの10年半の月日は、オペラを上演し、各種の演奏会に出演し、

弟子をとり、楽譜を出版するなどして生計をたててゆくという、近代的な音楽家の生活を実践したのである。

また82年8月には、マンハイム時代に恋愛関係にあった歌手アロイジア・ウェーバーの妹コンスタンツェと、

父の反対を押し切って結婚している。

しかもこの時期には、彼の創作を代表する数々の傑作が生み出されている。

オペラの分野では『後宮からの逃走』(1782)、『フィガロの結婚』(1786)、

『ドン・ジョバンニ』(1787)、『コシ・ファン・トゥッテ』(1790)、『魔笛』(1791)、

『ティトゥス帝の慈悲』(1791)などの、今日世界中のオペラ劇場の演目として定着している諸作品が書かれ、

交響曲の分野でも「第35番」以後のもっともポピュラーな6曲、弦楽四重奏曲では「ハイドン・セット」

とよばれる6曲(1782〜85)を含む、いずれも質の高い10曲が書かれた。

また教会音楽家としての職務からも解放されたので、いずれも未完に終わったミサ曲ハ短調とレクイエム、

そして数少ない小規模な宗教音楽を除けば、この種の音楽は書かれなかった。

それとは対照的に、この時代の彼の生活をよく示しているのが、17曲に及ぶピアノ協奏曲である。

これらは、自ら主催する自作自演の演奏会が自活のための重要な手段であったことを物語っている。

とくに85年の「第20番」以後の7曲は、この分野における歴史上最初の頂点を形成している。

またザルツブルクの音楽生活と関係の深かったディベルティメント、セレナーデ、カッサシオンといった

ジャンルは減り、かわってメヌエット、ドイツ舞曲、コントルダンスといった、

実際に踊られるためのおびただしい舞曲が書かれた。ウィーンの音楽要求にこうした形でこたえることは、

定収のない作曲家としてはやむをえないことであった。

ウィーン時代のその他の際だった事件としては、当時流行していた秘密結社フリーメーソンへの加入

(1784)があげられる。

これは彼の創作や思想に少なからぬ影響をもったし、実際にこの団体のために音楽をいくつも書いている。



1780年代の前半から中盤にかけて、ウィーンでの新しい生活も順調に運び、父との再会のため

約4か月ザルツブルクに旅行した以外にはウィーンを離れなかったが、87年から、3度にわたるプラハ旅行、

ベルリンおよびフランクフルト訪問といった短期間の出稼ぎ旅行が目だっている。

これは、ウィーンでの活動に陰りがみえ始めたことを反映していると思われる。

このころから借金申込みの手紙も多くなり、経済的に逼迫(ひっぱく)していったことがうかがわれるが、

記録に残されている彼の収入は驚くほど多く、今日も借財の理由は明らかになっていない。

そして91年の秋から健康がしだいに衰え、11月20日病床に伏し、12月5日、息を引き取った。

葬儀は翌日、シュテファン大聖堂内部の十字架小聖堂で行われたが、最後まで遺体に付き添った者が

いなかったため、共同墓地に埋葬され、遺骸(いがい)は行方不明となった。

現在、聖マルクス墓地にある墓には遺骨は埋められておらず、ウィーン中央墓地にもベートーベンと並んで

記念碑が立てられている。



4. ケッヘル番号


モーツァルトの残した作品は声楽、器楽にわたりきわめて多く、これをケッヘル番号

(KとかK・Vと略記)でよぶことが一般化している。

これは1862年にオーストリアの植物学者・音楽研究家のケッヘルが作成した『モーツァルト作品目録』に

端を発している。

作曲年代順に通し番号をつけたこのカタログは、その後何度もの改訂を受け、曲によっては二重番号が

付されて煩雑なものになっているが、研究の進展により、今日なお再度の改訂が必要である。

[ 執筆者:大崎滋生 ]参考



モーツァルト年譜



ザルツブルクに生まれる




1756 1月27日 午前8時ザルツブルクに誕生

1761 (5歳) 最初のクラビア作品を作曲

1762 1月最初 ミュンヘン音楽旅行(24日間)

9月 父に連れられ、第1回ウィーン旅行(約4か月)。

10月13日 シェーンブルン宮殿で御前演奏。皇女マリ・アントアネットに求婚したというエピソ ード

1763 6月9日 パリ―ロンドン旅行(約3年半)



『クラビアとバイオリンのためのソナタ』




1764 最初の出版作品『クラビアとバイオリンのためのソナタ』。

4月 イギリスに渡り、J・C・バッハと知り合う

1765 腸チフスにかかる

1767 9月11日 第2回ウィーン旅行(約15か月)。

10月 天然痘になる

1768 ジングシュピール『バスティアンとバスティエンヌ』

『荘厳ミサ曲ハ短調』(通称「孤児院ミサ」)



第1回イタリア旅行



1769 10月 ザルツブルクの大司教宮廷のコンサートマスターに就任(無給)。

12月13日 第1回イタリア旅行(約15か月)

1770 4月11日 ローマ到着。サン・ピエトロ大聖堂の秘曲を採譜したというエピソード。

6月 教皇クレメンス14世より黄金拍車勲章を受ける。

12月26日 オペラ『ポントの王ミトリダーテ』ミラノ初演

1771 8月13日 第2回イタリア旅行(約4か月)

1772 8月 ザルツブルクで有給のコンサートマスターとなる。

10月24日 第3回イタリア旅行(約4か月)

1773 3月 イタリアでの就職活動に失敗し、帰郷。

7月14日 第3回ウィーン旅行(約2か月)。

弦楽四重奏曲第8〜13番(通称「ウィーン四重奏曲」)。交響曲第25番

1774 4月 交響曲第29番。

12月6日 オペラ『偽りの女庭師』上演のためミュンヘンへ赴く(約3か月)


母とマンハイム―パリ旅行



1777 8月 ザルツブルク宮廷への休暇願受理されず、彼自身による辞職願提出。

9月23日 職を求め、母とマンハイム―パリ旅行(約16か月)。

アウクスブルクで従妹マリア(ベーズレ)と知り合う

1778 1月 マンハイムで写譜家ウェーバーの次女アロイジアに恋。

3月 父の叱責にあい求職のためパリへ。6月交響曲第31番「パリ」パリ初演。

7月 求職果たせず。母死去。

8月 父によるザルツブルク宮廷への復職運動成功

1779 1月 宮廷オルガニストとして復職。3月ミサ曲ハ長調「戴冠式ミサ」

1780 11月5日 オペラ『クレタの王イドメネオ』上演のためミュンヘンへ出発



ウィーン定住




1781 1月29日 同オペラ、ミュンヘン初演。5月9日帰郷問題をめぐって大司教と決裂。

宮廷オルガニスト辞職。

8月 ウィーン定住を決意し、ウェーバー家のそばに転居。同家の三女コンスタンツェに恋

1782 7月16日 ジングシュピール『後宮からの逃走』ウィーン初演。8月4日コンスタンツェと結婚。




交響曲第35番「ハフナー」


1783 10月26日 ザルツブルク聖ペテロ教会でミサ曲ハ短調(未完)初演。

ウィーンへの帰途、交響曲第36番「リンツ」

1784 3月 彼主催の予約演奏会で、毎回新作のピアノ協奏曲を発表するなど演奏活動盛ん。

12月 秘密結社フリーメーソン入団



ピアノ協奏曲第20番、「ハイドン・セット」、『フィガロの結婚』




1785 ゲーテの詩による歌曲『すみれ』。

ピアノ協奏曲第20〜22番。

9月 ハイドンに弦楽四重奏曲第14〜19番(通称「ハイドン・セット」)献呈

1786 2月7日 後世にその関係が話題となった作曲家サリエリとの初めての競演。

5月1日 オペラ『フィガロの結婚』ウィーン初演。

交響曲第38番「プラハ」。弦楽四重奏曲第20番。ピアノ協奏曲第23〜25番

1787 5月 父死去。

8月 セレナード第13番「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」。

10月20日 オペラ『ドン・ジョバンニ』プラハ初演。12月ウィーンの宮廷作曲家就任



三大交響曲、第39番、40番、41番「ジュピター」



1788 6月 経済的に困窮し、知人に借金依頼の手紙を書く。

交響曲第39番、40番、41番「ジュピター」。ピアノ協奏曲第26番「戴冠式」

1789 4月 ベルリン、フランクフルト訪問。

7月 妻病気になり、経済状態さらに悪化。弦楽四重奏曲第22番。

クラリネット五重奏曲「シュタトラー」

1790 1月26日 オペラ『コシ・ファン・トゥッテ』ウィーン初演。弦楽四重奏曲第22番、23番

1791 12月5日 モーツアルト 逝去









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