|
≪日刊スポーツ新聞社編集局・石井秀一編集局次長のコラムです。≫ 【テレビとプロ野球】 子供の頃、家にテレビが無かった。 夕方になると友達と連れだって、テレビのある近所の家へ出かけ見せてもらった。 良くしたもので、押しかけられた家でも家族団らんの茶の間には入れてくれなかったが、 電灯を消した隣の部屋の、襖(ふすま)を半分開けてくれて見物を許してくれた。 夕食時のどこの家もテレビの野球観戦で、ちゃぶ台(もう死語かもしれない)の中央に 主人がデンと座り込んでビールを飲んでいた。 私は、母親が「よそ様に迷惑をかけるんじゃないよ」と言って作ってくれたおにぎりを ほおばりながら野球を見つめた。 テレビのある、明るい部屋での夕食風景は傍から見てもうらやましかったが、 暗がりから見る野球はそんな屈折した思いをも吹き飛ばすほど楽しく、面白かった。 さて、プロ野球のペナント・レースが始まって1ヶ月。 巨人が首位を快走、ヤクルトは古田兼任監督の采配、清原のオリックス移籍など 各球団は話題が豊富で、昔の感覚で言えば万々歳の展開ではある。 しかし、3、4月の巨人戦月間視聴率は平均12・6%と過去最低だった昨年を 0・3ポイント下回ったという。 まぁ、前述の茶の間の風景でいえば、父親のチャンネル権などとうの昔に無くなって、 テレビは子供達の見るバラエテェイ番組に席巻されているのだろう。 その意味で言えば野球人気を視聴率だけで推し量る時代ではなくなったようだ。 WBCの日本代表世界一が追い風になる、との見方もあったが、確かにあの一連の試合、 視聴率は驚異的だったが、それは国別対抗戦の持つナショナリズムが背景にあったためで、 サッカーの国際試合に比べ、Jリーグ視聴率が芳しくないのと同様の事情だろう。 その一方で、4月18日の名古屋地区、中日対阪神戦の視聴率は15・9%、 同時に同地区で放送された巨人対ヤクルト戦の7・9%の倍近い数字をたたき出した、 と東京新聞(5月4日付)は伝えている。 福岡のソフトバンクも、仙台の楽天もそのような傾向を見せている。 全国区の巨人より地元意識、おらがチームへの関心、ということだろう。 その体で言えば安易に野球人気のかげりを強調することもないし、 この視点に立ってこれからの野球界を眺めてゆく必要がありそうだ。 43歳の巨人工藤、600日ぶりに勝ち星を挙げた桑田、鉄人・阪神金本、 そしてメジャー挑戦を続ける野茂。苦しみを乗り越えたベテラン勢の活躍が共感を呼ぶ。 ファン層の高齢化が顕著ではあるが、団塊の世代が定年を迎え、もう一度テレビ桟敷に戻ってきたとき、 子供時代の草野球にもつながる、身近で、親しめるプロ野球でありたい。 活路はそんなところにある。 |
全体表示
[ リスト ]




