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≪日刊スポーツ新聞社編集局・石井秀一編集委員のコラムです≫ 東京はすっかり葉桜になってしまったが、やはり日本は広い。山形へ4月7日、取材を兼ねて行ってきた。 天童近くの町だったが、桜はまだ、つぼみの状態で、地元気象台の開花予想は13日ということだった。 取材を終え、そのまま帰京という手もあったが、せっかくここまで来たのだから、と新庄、酒田へ足を伸ばした。作家・藤沢周平さんが亡くなってもう10年が経とうとしている。その故郷・鶴岡へ、そして出羽三山の月山、羽黒山、湯殿山も眺めてみたい、と欲張ってみたが、一泊二日でが叶わない。とりあえず酒田で宿を取った。 予約を入れたホテルは予想外というか、市街地から遠く離れ、タクシーで、そこそこの料金を取られる。夕刻、チェックインし、町までのバスの時間を調べてもらったら、最終便が午後5時半すぎである。「こりゃ、不便な。町からの帰りは、またタクシーか」と少々不機嫌になった。まぁ、東京並みのサービスを要求するのが間違いで、しぶしぶ最終バスへ乗り込んだ。 繁華街は「中町」である。初めての土地で、しかも港町なら、うまい魚も食べられるだろうと胸をふくらませたが、停車場を降りて驚いた。町は暗く、シャッター通りとはこのことかと目を丸くした。人通りも少なく、ネオンサインも見えるが、明かりだけで、営業しているのかも判然としない。 とりあえず、1軒の赤提灯に入ったが、引き戸を開けると、店の主人と思われる男性が煙草をふかしており、突然の客に慌てて灰皿を隠した。「毎日、こんなものなの?」と尋ねてみたら「(統一地方選の)投票日前日でしょ。昔なら饗応が当たり前だったから、飲み屋も忙しかったんだけど、今頃そんなことをやったら、警察のお世話になっちまうからね。それにしても、中町も寂れたものですよ」。 「魚のうまいヤツ」と頼んだら、烏賊の刺身を作ってくれた。おいしかったが、亭主と2人だけのカウンターでは気勢が上がらない。 「地方都市はみんなこんなものですよ。なんとか打開策を見いださないと、と我々もキャンペーンを張っているのですが、なかなか活性化への決め手も無くってね」と地元記者が後日、話してくれた。 格差、格差と言われるご時世。給料ばかりではない。東京に居てはわからない、地域格差を思うと、飲んでいる酒も、味が今ひとつだった。 |
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