柏秦透心ぃズの屋根裏部屋

オリジナルノベルを中心とした、柏秦透心の趣味の夢工場♪

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縁《えにし》の鏡3




 鎮破は、再び隠れた月によって閉ざされた鏡の側にいた。

 鎮破 :銘景。悪いが上の三枝神社まで連絡に行ってくれ。

 己の護法や式神にあたる小将・銘景を見送った鎮破は、背後の気配に気付く。

 鎮破 :なぜ……お前がここにいる。
 剣 :勝負しにきた。

 剣は自分の得物を突き出した。

 剣 :真剣で勝負だ。
 鎮破 :わざわざそのために、か。
 剣 :またいずれと思っても、いつ機会が巡り合うか分からねえからな。
 鎮破 :いいだろう。
 剣 :勝負は月が姿を現わし、天から落ちるまでだ。
 鎮破 :来い。

 先手必勝とばかりに、間合いも取らず剣は鎮破の懐めがけ突きを繰り出す。
 忍びでやっと目が追いつくほどのスピードで鎮破はその第一刀を躱し、即座に身を引いた剣の前髪に月破の刃を掠める。

 鎮破 :忍びは剣も磨くのか。
 剣 :俺の性に合ってるんだ。
 鎮破 :忍びなら、蹴りも突きも遠慮はいらないな。

 鎮破は切り返す勢いを使って上段蹴りを放つ。
 剣はその蹴りの靴裏が顔面に届く寸でで後ろに飛び、くるくると高く回転して距離を取った。

  鎮破:元は武士の血を持つとはいえ、様々な武道に精通するが我が五式の人間だ。それに、武士道など俺には関係のないものだからな。

 鎮破は月破刀の鍔を鳴らす。
 草むらに近い土を背後に蹴り、木立ちに風をたて竜巻のように体を捻り、右上から左下へと白刃を走らせる。
 剣の得物が刀身を捉えたが、鎮破の攻撃の一はまだ終わってはいなかった。
 捉えられたと同時にそのまま剣の刀を払い、すばやく戻された肘が剣の肩に入る。

 剣 :くっ……そ。

 剣はさらに立て続けに繰り出される斬撃を受ける。
 幾度めかで鎮破の刀を受けたまま、剣は体を滑らせ鎮破の足下を払った。
 体勢を崩しかけたところを突こうとしたが、膝で上手く支え剣の一撃を堪えた。
 互いに押し問答しては離れ斬り込み、また受けては斬り返す。
 両者の気の発しが合致したのか、剣の切っ先は鎮破の喉元、鎮破の切っ先は剣の眉間に合わせられていた。

 剣 :ここまでだな……。

 剣は意外にも潔く刀を下げ、夜空を仰いだ。

 鎮破 :またも痛み分けか。
 剣 :次は必ず勝ってやる。
 鎮破 :俺は行かんぞ。こちらを空けるわけにはいかないからな。

 鎮破は五式の月破刀を鞘に戻した。

 鎮破 :真夜と玲祈に、いまのうちに戻るように伝えてくれ。

 剣も放り出していた鞘を拾い上げ、一度として曇りを受けなかった白銀の刀身をしまった。

 剣 :ちゃんと伝えておく。じゃあな。

 後には無言で佇む鎮破だけが、さわさわと森渡る風とともに残された。



 鏡を抜けると、月華の月を隠すほどの雲はなくなり、辺りを仄明るく照らし出していた。
 道場ではすでに丑三つ時も終わるというのに、話し声が衰えていなかった。

 星来 :剣。どこに行っていたんだ。
 剣 :しずはと再戦してきた。
 真夜 :鎮破と!?
 玲祈 :うっわーツワモノじゃん。あいつの怖さ知らないから出来るんだって。
 永輝 :そんなに怖いのか、れいき。
 玲祈 :あいつがマジギレした時なんかもう目も当てられないって。
 剣 :麻地切れ?
 服が破けるとあいつは怖いのか?
 玲祈 :ぶっわマジ面白いぜこの剣て人。
 真夜 :玲祈だって似たようなものじゃない。マジギレっていうのは、本当の本当に怒ったってことよ。
 シン :まやの世界って言葉が面白い。こすぷれ、とか。
 剣 :そ、それよりだな。月が出た。もう雲もないぞ。
 真夜 :ホント!?

 鏡面には眩い月光がそそがれていた。

 真夜 :それじゃあちょっと間だけど、お世話になりました。
 シン :また会いたいな。
 真夜 :私も。
 玲祈 :今度は俺が勝負だ。
 剣 :機会があればな。

 真夜と玲祈の二人は出口で待つ者も忘れて、上機嫌で鏡を抜けて行ってしまった。

 剣 :痛み分けだった。ちきしょう。
 星来 :俺なら勝つがな。
 永輝 :氷と火だからな剣じゃ。星来なら氷に氷と考えれば……。
 剣 :なんだよその言い方っ。
 シン :それより、鏡を元に戻した方がいいよね?
 星来 :剣にやらせろ。自業自得だ。
 剣 :あぁ!?
 永輝 :俺たちゃ部屋戻って寝よ寝よ。丸、ほらいくぞ。

 こうして月華の森はまた朝を迎えるべく眠りについた。



 元の世界に戻ってきた二人は鎮破の無言さに恐怖を感じながらも、一度三枝に戻った。
 鎮破に尋ねられたので調べていた、と三枝神社の娘である涼は座る。

 涼 :飛界鏡かしら。何度か現れた記録が三枝に残ってるわ。自らも現界とそれは異なる世界を飛び回り、自らそれらを繋ぎ、いわば異空間トンネルというか、気紛れな“なんちゃらドア”になる未知の品ってわけ。
 鎮破 :……。
 真夜 :なんちゃらドアって涼ちゃん……。
 涼 :まあ神隠しの一種に数えられるのかな。どうだった?
 神隠し実体験は。
 玲祈 :なんかプチファンタジーっつーか。
 真夜 :気分は不思議の国のアリス……たどり着いた先は忍びの里……。

 精神年齢お子様の両人は、鏡の向こうではしゃぎすぎ、夢もうつつとそれぞれの世話役に連れ帰られたというのが事の終いで、当の鏡はまた何処へと消えていたのだった……。

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 あとがき :とってもとっても楽しかったです!ご指名いただいたときは感動でした♪
       これのおかげでいいアイディアが浮かびましたので、乞うご期待(え
                               by柏秦透心

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