柏秦透心ぃズの屋根裏部屋

オリジナルノベルを中心とした、柏秦透心の趣味の夢工場♪

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第四十話 黒墨の森

 墨の匂いが漂い、明かりの灯るただ一つの部屋で、判鳴は一人書に向かっていた。
 書道の一流派の宗家であり、今日は自宅に隣接する教室の開講日であった。
 手習いの子ども達や遅くに習いに来る大人達でさえ帰り、教室に使っていた部屋はすでに静まり返っていた。
「先生、ここでしたか」
 家人とは別の、書道教室の助手の一人が判鳴を見つけ声を掛けた。
「奥様が、なんでも佐伯くんの奥さんが産気づいたそうで、お手伝いさんとお出かけになりましたよ」
「分かった」
「お悩みですか……今度の流派大会の作品か何かですか?」
「いや」
 一面に広げた半紙は、どれも書きなぐったよえな作品であった。
「では、私もこれで。お先に失礼させていただきます」
 最後の助手も帰ったが、その後も判鳴は夜更けまでそうして書と睨み合っていた。



 裂かれた影の腕が塵になる。
 それを見守る涼やかな横顔が玲祈には気にいらなかった。
「玲祈くん。あれがどう見える?」
「どう……って、影が影から出て来てるんだろ?」
「君はそういうパターンを見たことがあるかい?」
「…………」
 玲祈は問いの真意を掴み損ねていた。地に広がる影からは、触手のようなものがいくつも生え伸びる様は何度となく見慣れている。
 あの、さきほどの影は影型の悪化が進んだ形なのだろう。しかしそこからは現れたのは“形《カタ》”と呼ばれる、人に憑くことが主で“人形”をして見える影だった。
「影が──別な影を召喚したってか」
 振り返り見たそこに、緯仰の姿はすでになかった。
「お……おい! おっさん!」
 見回したが目に映る範囲にはもういなくなっていた。
「タラシ野郎……どこ行った!」
 わめくが小声なので空しくも高々闇に立つ木々に吸い取られる。
 もしやと凝らして見たが、真夜の方にも行ってはいない。
 形はまだ消されてはいなかったが、角の欠けた豆腐のように肩から胸に掛けてはえぐり取られ、腕もなく足も散り散りと、そこにまだあることがむしろ驚きだった。
 それでも真夜の印を見て次で片付くと玲祈は思った。
 玲祈は動けない。甲遁の“包《つつみ》”は掛けた相手が不要になるまでこうして盾を紡ぎ続けるために、離れることも動くことも出来ず、自分がおろそかになる。
 どこからあの男はこの技を知ったのか。四式の応用術も深く分け入った代物で、第一に玲祈はそんな後手のような術もとっくに頭にはなかったくらいだ。
 それをあえて使わせた。加えて当人は姿を消し、戻る気配がない。今夜はまた何事か穏やかには終わらないのだろう。
 玲祈が己の危険もともに心を据えた時だ。真夜は最後の印を放つと形は見えない力に押されに押され、ついに散った。
 だが見れば地に染み這うような影はさらに広がりを再開していた。
 すでに夜が覆う森は暗く、宵闇が見せる陰りと見分けがつかないほど溶け合い、外から見ていた玲祈でさえ気付けなかった。
 真夜は足下を掬われる感覚に、ぎりぎりまで手を伸ばした。
「こっの!」
 だが闇の縁《ふち》どころか、近くにあったはずの木の幹さえ見つからない。
 影の造り出した闇の穴に真夜の体は吸い込まれていった。
「真夜!」
 叫ぶと同じくして玲祈は周りを囲む別な気配を感じ取った。
 広がった闇は玲祈の足下をも埋めていたが、何者かが包んでいるために落ち込まないで済んでいるようだった。
 ぐるり見回すと、ぼんやりと辺りのざわついたものとは違う澄んだ気配が玲祈を取り込んでいることが分かる。
「卯木・仂!」
「はい」
「おーっ!」
 ふわり玲祈の両肩に姿を現わしたのは、真夜の小将である。
 “包《つつみ》”に玲祈の小将・八ツ森と洲播を使う、その代わりとして卯木や仂は玲祈に付いていた。
「仂。ちょっとそこら辺刺激してくんねーか?」
 玲祈は親指で真上をさした。
「おっしゃまかせろぃ!」
 仂は腕をまくるとひゅっと飛び上がり、何かにぶち当たる。
 演武を披露する少年さながらに仂は手当たり次第を手探り、足裏で感触を確かめた。
 一方卯木は真夜が初めに手にした小将ゆえに、一番真夜との繋がりが強く意思の疎通もはかりやすい。
「真夜の気配はちゃんとあるよな」
「はい、確かに感じられます」
「まあこうなるのも作戦の内だ。前にもこんな状況は経験済──」
 言い終わらずに玲祈はあるところに思考がぴたりと止まった。
 守りで亀甲の盾はよく使っていた。それは影の攻撃や手を防ぎ避けるためのもので、深海に潜るための潜水服のように懐に入るために使ったことはなかった。
 元々「遁」とは、古来忍びの者が使う敵より逃げ延びるための遁走術を意味する。
 たまたまあの守房での一件で亀甲を使った状態で影に取り込まれたのだが、それが幸いして後の回復は早かった。
 それに、たまたまであれ亀甲の盾にそんな使い方が出来るとは、玲祈の頭には及びもつかなかった。
「まさかな」
 ひくりと口の端が痙攣する。



 三枝の本殿とは垂直に向きを分かつ別殿で、涼の父親は祭壇の前に胡坐不動で瞑想していた。
 木の床わずかと軋む音がだんだんと近付き、別殿の室に入る。
「お父さん。私が代わるわ」
 涼が座り手を組んで祭壇に拝礼すると同時に、父親の武涼《たけすず》が無言で場を渡す。
「ウチのお山入ったこと、そしてウチの妹に手出したこと、何がなんでも後悔させてあげる」
 勝ち誇ったように涼は心の中で笑う。
「森守の主よ」
 声は風となって森を走った。
「わっ! なんだあ!?」
 森の奥で玲祈を包み込むなにものかが、墨夜の森で薄白く光を帯び出した。



 今宵、闇夜を照らす月はなく、風は微弱にさわさわと木々の間を行き交っていた。
 一人さらに奥へと回り込んで来た緯仰は、知っていたのか人影が二つ現れても驚きもしなかった。
「やあ。……はじめましてかな?」
「六奉鶴史です」
 影の小さな方が応えた。
「うん。いつも真夜ちゃんがお世話になってるね」
「それってなんかおかしくないですか?」
「確かに。でもそんな気持ちなんだ」
 片眉上げて腑に落ちなそうな鶴史に、甘い面持ちが返された。
「惚気るのも相手考えろよ」
「惚気に聞こえた?」
「ばっちり」
 呆れつつ笑ったのは丸崎の本家三式を補佐すべき八奉濱甲であった。
 談笑も進まずしてほどなく、空気が森ごとざわめきを増す。
「玲祈くんがあっちで一人でいるんだ」
「鶴史。悪りぃが先に行っててくんないか」
 濱甲が顎をしゃくる。
 二人は示した方とは逆方向に目を付けたままだ。
「上を行くといいよ」
 多少おちゃらけ口調で言われたアドバイスどおり、鶴史は枝を渡って森の合間に消えていった。
「真夜はどうしたんだ?」
「潜ってもらってる。僕の是謳も付けたから。濱さんはいいの?
 後悔するかもだよ」
「なぁに言ってやがる。俺は今日ははなっから腹括って来てるんだぜ」
 吹き飛ばそうかというほどの風が押し寄せる。
 緯仰はすらりとしているが濱甲はさらに厳つい長身を持つ。その巨体すら踏ん張らなくては飛ばされると思わされるほど、その瞬間の風速は凄まじかった。
 だがその風圧はさらに別の重みをはらんでいた。風圧というよりむしろ毒気の濃密な息苦しさが直に胸を抑え付けようとしていた。 どろどろとした気配が覆いだすその中に、またひとつ人影を見出だしたのは、ほんの数瞬後だった。
「やっと会えたな」
「現世人《うつしよびと》。お前ハ幾つ星か」
 暗がりにも見てくれは人であるようだった。
「幾つ星《いくつぼし》とはご挨拶だな。尋ねる方が名乗るって礼儀は古いのかな?」
「邪魔者ニ礼儀ナドイラヌハ。首の命で参上仕った」
「おびと?」
「首と書いておびと。古い長や首領の呼び方だ」
「待てまて待てまて。まさか奈良時代とかそんな頃の……」
「うん、その頃のだね」
「焔ヨ」
 辺りに、仄青白い明かりがぽつぽつとも次々におびただしく浮かぶ。
 薄く照らし出された姿は黒ずむ装束に身を包み、体中より黒き炎のような気配を隠す事なく露わにしている。
「何をしに来たのか聞こうか。影百護の御仁」
 酷白に男の口が吊り上がる。
「挨拶へ」
 男の掌が地面に向けて開かれる。
 ついと墨を落としたように、明かりで照らされた草木の陰影を消し、闇の奈落が口を開ける。
 地に向けられていた手が今度は天を仰いだ。
 濁流湧くが如く、闇の口より幾つもの黒い小山が盛り上がる。男より高い位置まで伸びたそれは、輪郭のぼやけた影へと変じた。
「行ケ」
 命ぜられるまま影は飛び出す。脇目も振らず一斉に緯仰と濱甲の両名に向かい来る。
「けっ……痺れるな」
 迎えたことのない桁の違う気配に、濱甲は腰を落とした。
「業禍・流刀斬《ごうか・りゅうとうざん》」
 相対させた掌の中、激しい渦潮のように力を一挙に塊とする。
 迫る影どもめがけ、腕を広げた。力の塊は渦の壁となり、渦の中心は一直線に影の間を突き抜くように駆けた。
 影は蹴散らされるが、後から後から際限なく湧き上がる。
 その上を緯仰が飛び上がる。
 空中で反転したまま男に手を向ける。掌から、指先から、全身から燻り始めた炎のように紅いオーラが迸る。
 地に足を着き様、エネルギーの球体は緯仰の手を離れた。どんと圧力が掛かるような音ともに、光の矢は男をめがける。
 咄嗟のことながら静かな動作で片手を振り上げ、一気に吹き出した臭気の壁がぐるりと男を囲う。
 防いだかと思ったが、地より這い出す影をも即座に塵としながら、徐々にそれは内側へと入り込んでくる。
 両方向からの攻撃はまだ耐えうる程度であったが、緯仰の方はまだ力を出し切ってはいないと男は感じた。
「濱さん。合図したら避けてくれるかな」
 緯仰の体を迸るオーラの量が変わった。そして、その力が放つ気配も変じた。



   ……続く

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復活か、嵐の前か

プライベートごたごたでしばらく放置INGでしたが、どうにか戻ってまいりました!

さて屋根裏部屋での更新が遅れましたが、式真第40話「黒墨の森」をUPいたします。

それから本館サイトがのべ1万HITSを達成いたしまして、今いろいろ記念月間としてイベントを計画しております。
更新強化月間になるかもしれませんし、『(仮)飛界鏡異聞伝』というイベントなどもよていするつもりですw

さらに式真はなおも常設で人気投票を続行中♪
よろしければぜひご参加をヽ(〃^・^〃)ノ

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縁《えにし》の鏡3




 鎮破は、再び隠れた月によって閉ざされた鏡の側にいた。

 鎮破 :銘景。悪いが上の三枝神社まで連絡に行ってくれ。

 己の護法や式神にあたる小将・銘景を見送った鎮破は、背後の気配に気付く。

 鎮破 :なぜ……お前がここにいる。
 剣 :勝負しにきた。

 剣は自分の得物を突き出した。

 剣 :真剣で勝負だ。
 鎮破 :わざわざそのために、か。
 剣 :またいずれと思っても、いつ機会が巡り合うか分からねえからな。
 鎮破 :いいだろう。
 剣 :勝負は月が姿を現わし、天から落ちるまでだ。
 鎮破 :来い。

 先手必勝とばかりに、間合いも取らず剣は鎮破の懐めがけ突きを繰り出す。
 忍びでやっと目が追いつくほどのスピードで鎮破はその第一刀を躱し、即座に身を引いた剣の前髪に月破の刃を掠める。

 鎮破 :忍びは剣も磨くのか。
 剣 :俺の性に合ってるんだ。
 鎮破 :忍びなら、蹴りも突きも遠慮はいらないな。

 鎮破は切り返す勢いを使って上段蹴りを放つ。
 剣はその蹴りの靴裏が顔面に届く寸でで後ろに飛び、くるくると高く回転して距離を取った。

  鎮破:元は武士の血を持つとはいえ、様々な武道に精通するが我が五式の人間だ。それに、武士道など俺には関係のないものだからな。

 鎮破は月破刀の鍔を鳴らす。
 草むらに近い土を背後に蹴り、木立ちに風をたて竜巻のように体を捻り、右上から左下へと白刃を走らせる。
 剣の得物が刀身を捉えたが、鎮破の攻撃の一はまだ終わってはいなかった。
 捉えられたと同時にそのまま剣の刀を払い、すばやく戻された肘が剣の肩に入る。

 剣 :くっ……そ。

 剣はさらに立て続けに繰り出される斬撃を受ける。
 幾度めかで鎮破の刀を受けたまま、剣は体を滑らせ鎮破の足下を払った。
 体勢を崩しかけたところを突こうとしたが、膝で上手く支え剣の一撃を堪えた。
 互いに押し問答しては離れ斬り込み、また受けては斬り返す。
 両者の気の発しが合致したのか、剣の切っ先は鎮破の喉元、鎮破の切っ先は剣の眉間に合わせられていた。

 剣 :ここまでだな……。

 剣は意外にも潔く刀を下げ、夜空を仰いだ。

 鎮破 :またも痛み分けか。
 剣 :次は必ず勝ってやる。
 鎮破 :俺は行かんぞ。こちらを空けるわけにはいかないからな。

 鎮破は五式の月破刀を鞘に戻した。

 鎮破 :真夜と玲祈に、いまのうちに戻るように伝えてくれ。

 剣も放り出していた鞘を拾い上げ、一度として曇りを受けなかった白銀の刀身をしまった。

 剣 :ちゃんと伝えておく。じゃあな。

 後には無言で佇む鎮破だけが、さわさわと森渡る風とともに残された。



 鏡を抜けると、月華の月を隠すほどの雲はなくなり、辺りを仄明るく照らし出していた。
 道場ではすでに丑三つ時も終わるというのに、話し声が衰えていなかった。

 星来 :剣。どこに行っていたんだ。
 剣 :しずはと再戦してきた。
 真夜 :鎮破と!?
 玲祈 :うっわーツワモノじゃん。あいつの怖さ知らないから出来るんだって。
 永輝 :そんなに怖いのか、れいき。
 玲祈 :あいつがマジギレした時なんかもう目も当てられないって。
 剣 :麻地切れ?
 服が破けるとあいつは怖いのか?
 玲祈 :ぶっわマジ面白いぜこの剣て人。
 真夜 :玲祈だって似たようなものじゃない。マジギレっていうのは、本当の本当に怒ったってことよ。
 シン :まやの世界って言葉が面白い。こすぷれ、とか。
 剣 :そ、それよりだな。月が出た。もう雲もないぞ。
 真夜 :ホント!?

 鏡面には眩い月光がそそがれていた。

 真夜 :それじゃあちょっと間だけど、お世話になりました。
 シン :また会いたいな。
 真夜 :私も。
 玲祈 :今度は俺が勝負だ。
 剣 :機会があればな。

 真夜と玲祈の二人は出口で待つ者も忘れて、上機嫌で鏡を抜けて行ってしまった。

 剣 :痛み分けだった。ちきしょう。
 星来 :俺なら勝つがな。
 永輝 :氷と火だからな剣じゃ。星来なら氷に氷と考えれば……。
 剣 :なんだよその言い方っ。
 シン :それより、鏡を元に戻した方がいいよね?
 星来 :剣にやらせろ。自業自得だ。
 剣 :あぁ!?
 永輝 :俺たちゃ部屋戻って寝よ寝よ。丸、ほらいくぞ。

 こうして月華の森はまた朝を迎えるべく眠りについた。



 元の世界に戻ってきた二人は鎮破の無言さに恐怖を感じながらも、一度三枝に戻った。
 鎮破に尋ねられたので調べていた、と三枝神社の娘である涼は座る。

 涼 :飛界鏡かしら。何度か現れた記録が三枝に残ってるわ。自らも現界とそれは異なる世界を飛び回り、自らそれらを繋ぎ、いわば異空間トンネルというか、気紛れな“なんちゃらドア”になる未知の品ってわけ。
 鎮破 :……。
 真夜 :なんちゃらドアって涼ちゃん……。
 涼 :まあ神隠しの一種に数えられるのかな。どうだった?
 神隠し実体験は。
 玲祈 :なんかプチファンタジーっつーか。
 真夜 :気分は不思議の国のアリス……たどり着いた先は忍びの里……。

 精神年齢お子様の両人は、鏡の向こうではしゃぎすぎ、夢もうつつとそれぞれの世話役に連れ帰られたというのが事の終いで、当の鏡はまた何処へと消えていたのだった……。

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 あとがき :とってもとっても楽しかったです!ご指名いただいたときは感動でした♪
       これのおかげでいいアイディアが浮かびましたので、乞うご期待(え
                               by柏秦透心

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縁《えにし》の鏡2

 なおも目の前に立つ者は真夜に問いを降らせた。

 謎の人物(男1)  :何者だと聞いているんだ
 真夜  :ちょっとあなたこそ何よ。れーきーこれ誰よ。
 玲祈 :誰と喋ってんだよ真夜。もう上見てもいいのか?
 真夜 :きゃーっ、まだよ! まだ顔上げんじゃないわよ変態。
 謎の人物2 :どうした?

 そうこう真夜が騒いでいる間にさらにもう一人、同じような格好をした者が現れる。
 真夜にはその者が降って湧いたように見えた。

 男1 :まただ。
 男2 :お! またあれか!? しかもシン以来の女!?

 騒ぎ飽きた真夜は今度は飽きれて玲祈に問い掛ける。

 真夜 :れーきまた人が増えたんですけど?
 玲祈 :だから俺いま見れないって!
 男1 :まだ他にも下にいるらしいが。

 なおさらに二人の者がその場に現れた。

 女 :どうしたんですか?
 男3 :星来、永輝、また何かあったか?
 永輝 :おーシン、剣! また珍客らしいぜ。
 シン :えー!
 剣 :あいつ!?
 星来 :いや、違う。
 永輝 :女の子〜。

 永輝が手を広げて真夜を指し示す。
 あとから来た二人のうちの片方、シンと呼ばれた者は目を丸くした。

 シン :……えっと、まやって呼ばれてた。
 真夜 :なあんで私の名前知ってるの!?
 シン :この人、前にしずはって人が出てきた鏡の中で、影とかっていうのと戦ってた女の人の方だよ。
 真夜 :え!? 鎮破?
 星来 :とにかく、主に報告してくる。

 星来が見る影もない間に去っていった。

 永輝 :んじゃまあとりあえず出てもらおっか。

 玲祈も地上に出て来ると、自然と車座に向き合って話始まった。

 真夜 :玲祈、あんたのいなかんちじゃないの?
 玲祈 :いくらいなかのバアチャンちでもこんな格好、今時しないって。

 剣はずっと気になっていたことを切り出した。

 剣 :……ごしきしずははどうした。
 真夜 :それより、なんで私や鎮破のこと知ってるのよ。
 玲祈 :ついに発見影のアジト! ……じゃねぇよなあ。格好は忍び装束のコスプレスタイルだけど。
 剣 :こす……ぷれ? 新手な術か!?
 シン :酢た入る?
 永輝 :シン、お前まで……剣に付き合ってやらなくていいんだぞ。

 じっと玲祈は黒い装束に身を包む三人を見渡していた。

 玲祈 :あんたらもしかして正真正銘の忍者?
 永輝 :へ〜分かるんだ。
 玲祈 :なぁんせ俺ぁ忍びの末裔の血ぃ引いてっからな。
 剣 :ごしきしずはもか?
 玲祈 :いんや。あいつは侍の血だったはず。
 真夜 :何なに!? ってことは、こっちはくの一? 女の子だもん。

 真夜は勢いで隣りにかがんだ一人を指差す。

 シン :私はシン。そっか、こっちの男の人がこないだのれいきって人だ」
 星来 :お前達何をやっている。剣。

 いつの間にか星来が戻ってきた。結構な盛り上がりの状況に少し呆れ気味なようだ。

 剣 :なんで俺だよ。

 改めて星来は真夜や玲祈に向き直った。

 星来 :我々は忍びの者だ。この間ごしきしずはと言う者が、その穴の奥にある鏡から出てきて帰っていった。
 シン :その鏡を覗いたらあなた方が映ってたんです。

 星来は剣を無視し続ける一方、たまらずシンが話に加わった。

 真夜 :あー昨日影倒してる時鎮破いなくなったと思ったら。
 玲祈 :よくは見なかったけど、なんであんなとこに鏡があるんだ?
 永輝 :良いところ突くな〜。

 永輝をもさておいて、星来は淡々と話の続きを始めた。

 星来:それはさておき、丁重に帰ってもらおうと思ったんだが。

 永輝が見上げた森の先の空には、月が見当たらない。

 永輝 :月がねぇなあ、隠れちゃったぜ。
 星来 :ということで異例だが、主がお泊めしろとのことだ。
 剣 :げっ。本当かよ。
 永輝 :そりゃ異例中の異例……。
 星来 :内部には入らせられないから、一番近くの道場に案内する。

 一応の寝具とお茶を出されたが、シンや永輝が遠慮がちにも質問を繰り出し、あまつさえ真夜と玲祈という式師きってのおしゃべりで一服とてお互い休む暇なく、時折合致しない会話を挟んでは夜を更かしていた。
 所属部隊もだいたいが集まっていた中で剣は、なぜか鏡を地上に持ち出し、おもむろに鏡面に触れる。
 誰も思わなかっただろう。雲間からその瞬間月が顔を覗かせると……。


  ⇒勝手にコラボ返礼編その3へ続く

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 ※火月さんの「勝手にコラボ」を先に読むのがオススメです↓
   「勝手にコラボ?」http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/crescent-moon/?Y=2009&M=6&D=6
   「勝手にコラボ2?」http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/crescent-moon/?Y=2009&M=6&D=7
   「勝手にコラボ3!最後!!」http://diary1.fc2.com/cgi-sys/ed.cgi/crescent-moon/?Y=2009&M=6&D=8


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 縁《えにし》の鏡   作:柏秦透心
 
 見上げると、月は高々に頭上へ昇っていた。

 真夜 :鎮破どこ行ってたのよぉ!
 鎮破 :何をしている?
 玲祈 :逃げるので精一杯だっつの!

 見れば、大型の漆黒の犬にでも追われているかのように、必死に逃げる真夜と玲祈の後ろを獣型の影が追っていた。
 溜め息まじりに鎮破は月破刀を払っていた。

 鎮破 :……散れ!

 瞬時に間を割って入り、影の足下を斬り払う。

 鎮破 :今だっ。

 とっ、と飛び上がった隙をついて指示を出す。
 影に照準合わせられた両の掌が三度声を上げる。
 三方から逃げ場を失った影はあがくもその力に捕まり、塵となって空気に溶けた。
 鎮破は振り返りあったはずの場所を見た。しかしどことして自分が潜った物は見当たらない。

 鎮破 :鏡が……。
 真夜 :はあ?
 玲祈 :カガミって?

 なんでもないと低く言い捨て、鎮破は先に踵を返した。


 昨夜の不審な行動が気になって仕方のない真夜は、放課後鎮破の大学の前まで来ていた。
 その後ろにはなぜか玲祈の姿もばっちりあった。
 悟られないように向かい側の文具店で何気なさを装い見張っていると、ほどなく出て来た鎮破の後を追った。
 目的地は意外にも、三枝の神社だった。

 真夜 :咲んちになんの用なのよ、鎮破のやつ
 玲祈 :逢引か?
 なら俺は真夜と──。
 真夜 :くだらないこと言ってないで、静かにしてなさいよ邪魔だわねえ

 長い表坂と呼ばれる階段の最上段まで来ると、その脇に石燈籠の陰に隠れた。
 小一時間としないうちに鎮破が出て来たのを見とめると、半ば飽きてきていた二人は慌てて階段脇の森の中を下って行った。振り返ってもまだ鎮破は階段を降りてこない。
 今のうちにと思った時、真夜の目は森の奥に止まった。

 真夜 :ん? なんだろ。森の奥で光ってる?
 玲祈 :真夜?

 自然と興味を引かれ森に入って行く真夜を、玲祈も追った。
 光っているものはつるんと飾りもない銅鏡のようなものだった。
 手を出したのがいけなかった。

 真夜 :ふっる〜い鏡? んわあっ!
 玲祈 :真夜!

 鏡に触れた瞬間真夜は体ごと吸い込まれ、驚き手を伸ばした玲祈もまた鏡の中に姿を消した。
 その場をちょうどよくも階段を降りて来た鎮破が目撃していた。

 鎮破 :あいつはっ……。

 鎮破は東の空を見る。

 鎮破 :……もう月が出ていたか。



 気がつけば真夜の視界は暗闇に囲まれていた。

 真夜:あれ? どこ? ここ。真っ暗じゃな──。

 言いかけている途中、背中に体当りする者がいた。

 真夜 :ぃいったーい!
 玲祈 :てててぇ……真夜?
 真夜 :玲祈ね、何やってんのよ!
 玲祈 :お前の後追っかけて来たらこーなったんだよ。
 真夜 :ちょっと玲祈、真っ暗いんだからあんたの術で明かり点けてよ。周りのこの手触り、岩みたいだけど。
 玲祈 :八ツ森。

 玲祈の小将が灯した明かりで二人は開いた空間へと歩を進めた。

 真夜 :あら行き止まり? ……上があるみたいだけど。
 玲祈 :おー……。
 真夜 :待ちなさいよ、影の仕業だったらどうすんのよっ。よく見て、おあつらえ向きの縄梯子があるわっ。

 真夜の人差し指がその真下を指す。

 真夜 :玲祈四つん這いになって。
 玲祈 :はあ!? なんで俺がだよ。普通男に先行かせないか?
 真夜 :ばっかねぇそこらへんの女子ならともかく、私を掴まえてよくそんなことが言えるわね。やるのやらないのっ?
 玲祈 :……わーったよ、やりゃいんだろやれば。
 真夜 :上見てスカートの中覗かないでよね。
 玲祈 :誰がっ……。

 結構深いなと思いつつ、真夜は上っていく。
 急に視界が開けたと思うと、縄梯子はそこで終わっている。
 辺りは月夜だった。
 もっと周りを見渡そうと地上に手を伸ばしたのだが、ある所から先に指先が触れると、パンッと弾かれる。

 真夜 :なあに? 結界? 見たことないなあ。

 触るしか感じ取れないので弾かれても何度か触ってみた。

 謎の人物 :誰だ!

 どこからともなく人が目の前に降ってきた。

 真夜 :は……。
 謎の人物 :貴様は誰だ。
 真夜 :……ちょっと玲祈ぃ。あんたんちってこんな凄いこと出来るの?

 真夜は目の前の人間の格好にいささか引いていた。


  ⇒勝手にコラボ返礼編その2へ続く

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