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タイトル 逆鱗(げきりん)
日本には古来より四方を守る聖獣がいると伝えられています。
玄武・青龍・白虎・朱雀という名前は聞いたことがある方も多いと思われます。
その中の青龍という聖獣の喉元には逆さまに生えたウロコがあると言われており、普段は温厚な青龍もそのウロコに触れられると途端に激昂し、触った者を殺してしまうといわれています。
この青龍の喉元に生えているのが逆さのウロコ、すなわち逆鱗といい、相手を怒らせてしまうことを逆鱗に触れるというのです。
ここまでをご理解頂いた上でこの後の日記をお読み下さい。
今日私は、その逆鱗を垣間見ました。
場所は盛岡市にある盛岡南イオンのゲームセンターです。
女子高生らしき二人組が、高さ50センチぐらいのピンクパンサーのぬいぐるみが置かれているUFOキャッチャーをしていました。
しかし何度やっても取れず、どうやら相当難しい代物のようでした。
嫁さんはピンクパンサーが好きで、私が以前小さなピンクパンサーのぬいぐるみをUFOキャッチャーで取ってあげたときはそれは喜んでくれ、今でもそのぬいぐるみは玄関に飾られています。
ここで私はもう一度トライして嫁さんを喜ばしてあげようという気持ちになりました。
ちょうど女子高生二人組が数百円を使ったところでついに諦めて台が空いたところでしたので、だめもとで100円を入れ、クレーンを動かしました。
結果…やっぱりダメでした。
しかし諦めの悪い私は、もう100円だけと思いながらクレーンを動かすと、間違って中途半端なところでクレーンを止めてしまいました。
そのままクレーンが下がっていき、ピンクパンサーの腰元あたりにアームが入りました。
明らかにバランスが悪い場所で、そのまま頭のほうにひっくり返るだろうと思った瞬間、ちょうど良いバランスを保ったままピンクパンサーが持ち上がり、そのままゲット! しました。
やったよ、おい!
ピンクパンサーを取り出し嫁さんに見せようとしたところ、さっきの女子高生がこっちを尊敬のまなざしで見ていました。
「すご〜い! どうやったら取れるんですか? っていうか何で取れるんですか!?」
いや、たまたまだよと答えながら、私は目の前でこのぬいぐるみの為に数百円、いや、下手をすると千円以上費やしたかもしれない女子高生が本当に可哀想に思え…
「いいよ、これ、あげるよ。欲しかったんだろ? 持っていきな。」
「えっ!? いや、いいですよ! そんな、悪いし!」
「いいから、学生だしお金無いんだろ? あげるからさ。」
「え〜…、本当に、いいんですか…?」
「いいよ。200円しか使ってないし。」
「やったー! ありがとうございます! すごく嬉しいです!」
満面の笑みを湛えながら、何度も何度も頭を下げる女子高生。
そして、その子達はお礼を言いながらその場を去っていきました。
「また取ってあげるから。今のは可哀想だったからあげても良かったでしょ?」
と、嫁さんに言おうとして振り向くと…
そこには、青龍が一匹立っていました。
無言できびすを返してゲームセンターから出て行く青龍と、さーっと青ざめる私。
そんな私に対して
「………何で、あげた?」
「いや、可哀想だったから、つい…。」
「はあ? あれは私が欲しかった物でしょ? それを何であげたのかって聞いてんの。」
「だから、また取ってあげるから…。」
「んなモンいらない! 絶対いらないから!」
「いや、ちょっと待てって、話を…」
「聞きたくない! 帰る!」
「待てって、ゲーセンに戻ろう? ね?」
「うるさい! ふざけんな!」
「待って、待ってください! お願いだから私にもう一度ピンクパンサー取らせて下さい!」
「いらないっつってんでしょ!」
その言葉を聞き終わらないうちに私はゲーセンめがけてダッシュしていました。
目指すはピンクパンサーただ一体です。
途中、さっきの女子高生二人組とすれ違いましたが、君にそれをあげてしまったために、嫁さんが今までに無いぐらい激昂してしまっているから返して欲しいなどとは口が裂けても言えず、私は千円札を両替して今日二度目のピンクパンサーとの戦いに挑みました。
UFOキャッチャーの中では、メガネをかけたピンクパンサーが仰向けになって両足を高く上げていました。
まずは100円投入、クレーンを操作するボタンが緊張で震えます。
なにせ、さっきは本当に偶然で取れたわけですから、そう何度もやすやすと取れるはずがありません。
案の定、高く持ち上がった足にぶつかってアームが途中で止まり、あえなく失敗に終わりました。
200円目を投入、またしても足に当たって失敗しました。
300円目、また同じく足に…。
…足に?
ちょっと待て、足が邪魔して絶対に取れないようになってるじゃないか、これ!
そこで私は近くを通った店員さんにこれは取れないですよね? と聞きました。
すると店員さんは本当に申し訳なさそうに謝ってくれ、確かに自分たちの配置ミスだと素直に認めてくれ、足を少し延ばして置きなおしてくれました。
そして更に、こちらのミスですからということで機械を操作して1回分のクレジットをプレゼントしてくれました。
さあ、改めて挑戦です。
さっきゲットしたときと出来るだけ同じ場所にアームを移動させて、そして…
ゲエェェェット!
やりました! 本日2人目のピンクパンサーゲットです!
メガネをかけているという共通点だけで何だかそれが自分に見えてきてしまいました。
横では置きなおしてくれた店員さんが、おめでとうございますと微笑んでくれていました。
ここで私にある考えが…
もしかしたら、もう一個取れるんじゃないか?
さっきの店員さんは、もうすでに機械の扉を開けて次のピンクパンサーをセットしにかかっています。
すると、その手を止めて私に次はどれが欲しいのかと聞いてきました。
どうやら、私の考えていたことは店員さんにはバレバレのようでした(笑)。
そこで私は、瞳の色がピンクの、一見女性にも見えそうな、そして無理をすれば嫁さんにも見えそうなピンクパンサーをリクエストしました。
さあ、もうひと勝負です。
100円を投入し…
何と、またもやゲエェェェット!
私は都合2匹のピンクパンサーを抱えて上機嫌でした。
これならきっと嫁さんの機嫌も直るだろう、と。
すると、どうやらさっきの女子高生が私が再チャレンジしているのを後ろで見ていたようで、すご〜い! を繰り返しながら改めて私を尊敬のまなざしで見ていました。
さすがにここで今取ったピンクパンサーを渡すわけにはいきませんので、狙うポイントを教えて、頑張ってと声をかけてゲーセンを出ました。
ゲーセン前のベンチに、こちらを睨み付ける青龍が座っていました。
その青龍の目が、私の持っている袋で止まりました。
袋からは、可愛らしいピンクパンサーが2人ひょっこりと顔を覗かせています。
「さっきはごめんね、勝手にあげたりして。 お詫びにふたつ取ってきた。 大丈夫、400円しか使ってないから心配しないで。」
青龍からは、さっきあれほど激昂してしまった手前、ものすごく嬉しい反面、すぐには笑顔を見せるわけにはいかない様子がありありと見て取れました(笑)。
しかしそれも車に戻ったときにはすっかりいつもの嫁さんに姿を変えており、普段どおりに話をしてくれました。
やっぱりすごく喜んでいました。
本当に、今日は精神的に疲れた一日でした。
が、結果良ければ全て良し…ですかね(笑)。
写真は、そのピンクパンサーを使って今日の二人の関係を端的に表現したものです。
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