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本日はちょっと、いえ大いに素敵な一日を過ごしました。
「年に一度きりでも一番聴きたい演奏会に行く」ことが私の楽しみなのですが、今日がその日でした。
日曜日。一番のお気に入り会場で、数多く足を運んでいるサントリーホールですが、休日に行ったことはなかったかもしれません。
いつもですと平日仕事を切り上げ「間に合うか?急げ!」などとドタバタしながらの駆け込みです。
しかしながら今日はゆっくりと余裕をもってクルマで出かけました。空いていれば20分程度で着けるのですが、少々渋滞し小一時間かかりました。それでもちょうどお昼前に到着。開場13時20分開演14時ですからゆっくり昼食をとることができます。
全日空ホテルにクルマを止め、そのままそこで昼食といたしました。いつもなら「この味と量でこの値段?」と毒舌を吐くところも今日ばかりは「美味しい」と満足できてしまう不思議。
昼食を済ませ、カラヤン広場へ向かうもまだ時間に余裕があったので、小澤征爾がサントリーホールでの本番前に散歩をするという裏の公園と街並みを少々散策し、開場を知らせる仕掛けオルゴールの音でホールへ戻りました。
こんなに会場に入る前からリラックスして演奏会に挑んだことはなかったかもしれません。
開演までは、沢山渡される演奏会チラシの山に目を通して過ごしました。
そして開演。今回の演奏会はライナー・キュッヒルがコンサートマスターではなく少し残念な気もしましたが、ズービン・メータの登場で吹き飛びました。実は彼の演奏会は初めてなのです。以前より気になる指揮者ではあったのですが、なかなか年に一度の喜びに選ぶことはございませんでした。
なんと威厳に満ちた背中でしょう。彼の生き様を想像でき、これからの素晴らしい時間が約束されたと確信できました。
そして、嗚呼、久しぶりのウィーン・フィルです。
この弦の調和、柔らかさ、そして切れ・・・大好きな彼等の音が身体のそこかしこから染み込みます。
はじめの一音から「やはりウィーン・フィルが一番好きだ」と感じました。
もう一つ大好きなベルリン・フィルとの共通点は「聴かなくても音が届き身体と一体化する」ことにありますが、プロセスはまるで違います。ベルリン・フィルの場合、押し寄せる怒涛の波(音)に身体が飲み込まれ、自分があたかも波の一部になったような感覚に捉われる一体化。うねりの一部として絶えず興奮しているような状態です。
ウィーン・フィルは、彼等の音が身体に入り込み、身体の中で音楽を感じます。眠る一歩手前のような状態で、目を閉じると本当に身体の中で音が鳴っているように思えます。自分の中にオーケストラが入ったような感覚に捉われる一体化です。
どちらが優れているというものではございません。一体化を感じられるのは、私の場合、今までこの二つのオーケストラでしかなく、好みとしてウィーン・フィルの方がより好きだということです。
今回の演奏会、はじめの一音の感動はプログラム前半のウェーベルンであったことも自分自身驚きでした。私、この手の音楽は苦手というか嫌いなのです。もしかするとウィーン・フィルが奏でる音楽ならば、なんでも良いという節操のない男なのかもしれません。とにかくウェーベルンで感動できたことは不思議です。
休憩を挟み、お目当てのブラームス交響曲第4番です。私は以前よりこの曲とチャイコフスキーの交響曲第6番はウィーン・フィルで、と考えておりチャイコフスキーは実現しておりましたので、ようやく念願叶ったわけです。
これこそはじめの一音から目頭が熱くなりました。例えようもなく幸せな気分、無上の喜び、言いようのない儚さが身体の中で響き渡ります。この一瞬とも永遠とも思える時間が流れ出します。
溢れる涙が落ち着き、目を開けるとメータの堂々とした指揮がそこにあります。想像していたよりはるかに素晴らしい。そして大変格好良い。プログラムによるとウィーン・フィルに登場する「現役最長老」の指揮者ということですが、その指揮は堂々としているばかりでなく、とても瑞々しい。
そしてウィーン・フィルの特徴として、指揮者によっては最高以上の演奏を実現することがあると思いますが、メータはそれを実現していたと感じました。
本当は第1楽章から第4楽章まで、「こうだった」という感想を述べたいのですが、残念ながら細かい部分を覚えておりません。身体の中で響いていたのに空っぽなのです。エンディング部分に差し掛かり、心の中で「終わらないでくれ!」と叫んでいたことは覚えております。今日はほんの僅かな時間だと思いますが拍手も忘れていました。メータやウィーン・フィルのメンバーには失礼かと思いますが、あまりの感動のため、と言い訳をして許していただきましょう。
追記
ブラームスが終わったあと空虚感に見舞われましたが、彼等はアンコールに応え、ヨハン・シュトラウスを演奏してくれました。この素晴らしい演奏は空虚感を払拭してくれて、とても良い気分で会場をあとにすることができました。
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