灘本昌久のブログ

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 若き狩野永徳の書いた「洛中洛外図屏風」(上杉本)は、数ある「洛中洛外図」の中でも最高級の作品であるといわれています。歴史の資料集などで小さな写真を見ていると、どれぐらい素晴らしいかはなかなか実感できないけれども、実物を見ればうなづけると思います。しかし、前回述べたように、屏風の前は黒山の人だかり。そこで、短時間しか前にいられなくても、それなりの成果をあげられるように、事前に予習しておくことをおすすめします。

(1)小澤弘・川嶋将生『図説 上杉本「洛中洛外図」を見る』
     河出書房新社、1994年、2000円
 これは、131頁とコンパクトな本ながら、全頁にカラー図版を配した贅沢な作りで、平安京の成り立ちから洛中洛外図の成立まで、教科書のように丁寧に解説がしてあります。また、数ある洛中洛外図解説本の中では、芸能や中世賤民についての解説が格段に詳しく、この方面に興味のある人には必読文献です。

(2)平安京創生館の「洛中洛外図屏風」(上杉本)陶板壁画
 京都アスニー(京都市生涯学習センター)1階には、平安京創生館があり、そこに「洛中洛外図屏風」(上杉本)の精巧なレプリカである陶板壁画が常設展示してあります。サイズは、本物より大きく、しかも柵やガラスに囲まれていないので、好きなだけ近寄って見ることができます。ここで十分、屏風の中身を学習して頭に叩き込んでいきましょう。
 また、「洛中洛外図屏風」は、応仁の乱によって荒廃したあとの、いわば現在に連なる京都を描いていますが、794年に遷都された律令国家の都としての平安京は、まったく違った姿でした。その中心朱雀大路は、現在の千本通りで、ずいぶんと西に偏っています。この当初の平安京の姿を再現した巨大な模型が、同じフロアに展示してあり、いながらにして古代の京都と近世以来の京都を同時に見ることができます。(この模型は、同館で売られている『平安京図会』(300円)を広げながら見ると、各ポイントが現在の京都のどこに位置するのかがよくわかります)
 さらに、平安京創生館の事務室では、「洛中洛外図屏風」(上杉本)の所蔵元である米沢市上杉博物館の編集になる図録『国宝 上杉本 洛中洛外図屏風』(1200円)が販売されており、これも学習上おおいに参考になります。この図録は、B4サイズの大きなもので、屏風の右隻(うせき)・左隻(させき)の各6扇がそれぞれ1頁を費やして贅沢に提示してありますので、上記の小澤・川嶋解説本とあわせて見ると、全体像がよく把握できます。

・平安京創生館
  http://web.kyoto-inet.or.jp/org/asny1/about/institution/honkan/heian3.html
・国宝「洛中洛外図屏風(上杉本)」陶板壁画
  http://web.kyoto-inet.or.jp/org/asny1/about/institution/honkan/heiannkyou/rakutyuurakugaizu.html
・平安京図会
  http://web.kyoto-inet.or.jp/org/asny1/zue/zue2.html

(3)CD−ROM版「国宝 上杉家本 洛中洛外図大観」
     小学館、2001年、定価94000円(インターネット上では、8万円ぐらい)
 「洛中洛外図屏風(上杉本)」予習の極めつけとしては、このCD−ROM版の「洛中洛外図屏風」があげられます。屏風の全部がデジタル化されており、原寸の2倍にまで拡大して観察することができます。また、建物や人物にカーソルを合わせると、その多くにはラベルが付けられており(たとえば、「六波羅蜜寺」など)、さらにラベルの多くには、書籍版である『国宝 上杉家本 洛中洛外図大観』の解説がポップアップするようになっています。少し値段が高いのが難点ではありますが、「洛中洛外図屏風(上杉本)」の予習・復習には最高の環境を提供してくれるものです。

「狩野永徳」展覧会の楽しみ方 (1)洛中洛外図にダッシュ!

 現在、京都国立博物館で特別展覧会「狩野永徳」が開催されています。有名な、「唐獅子図屏風」や新発見の「洛外名所遊楽図屏風」もすばらしいですが、中世賤民史研究の最重要資料の一つである「国宝 洛中洛外図屏風」は必見です。祇園祭の行列の警護に当たったり、弓のショップを出して販売・アフターサービスに努める「犬神人」(これは、宮崎駿監督「もののけ姫」に出てくる「石火矢衆」のモデル)、声聞師村の景観、市中を歩く「節季候(せきぞろ)」、犬追物(いぬおうもの)に使うためか犬を狩り集める「河原者」等々、都の賑わいの中に、京都の中世賤民が総出演です。しかも、みんな楽しそう。
 「唐獅子図屏風」のような大きな絵柄の作品は、学校で使う資料集の写真でもなんとなく鑑賞できるのですが、「洛中洛外図屏風」は細かく描き込んであるので、現物を見なくては、その良さはわかりません。とりわけ、上杉本は描写が繊細・精密なので、近くで見て初めてその値打ちがわかります。
 私も、写真集で見ていたあいだは、普通の屏風絵だと思っていたのですが、20数年前にはじめて「洛中洛外図屏風」(上杉本)の現物を見たとき、「あっ」と息をのみました。まさしく小宇宙の感じです。

 ・展覧会のメインのHP
   http://eitoku.exh.jp/index.html
 ・展覧会を紹介するテレビやイベント
   http://eitoku.exh.jp/event_tv.html
 ・主な展示作品
   http://eitoku.exh.jp/highlight.html

 ところで、中身の話は回をあらためるとして、今回の展覧会を見るにあたっての実践的アドバイスを少し書いておきます。

1.朝一番で入場しよう
 9時15分ぐらいには入場券売り場にならび、9時30分の開場と同時に入れるように、早く行っておくこと。今年の5月に相国寺であった「伊藤若冲」展ほどのギュウギュウ詰めではないけれども、開催第1週の午後2時に行った時には、平日なのに駐車場は満車で(結局、隣の豊国神社の有料駐車場にとめました)、会場の中も相当の混雑でした。

 ・展覧会のリアルタイムの混雑状況
   http://www.kyohaku.go.jp/jp/index_top.html
  携帯からは、(http://www.kyohaku.go.jp/i/)

2.入館したら、まず「洛中洛外図屏風」に直行する
 どこも、まんべんなく混雑しているのですが、「洛中洛外図屏風」の前だけは別格で、黒山の人だかりです。絵の描写が細かくてガラスに張り付いて見ないと見えないし、地元の人が自分の近所を探していたり、遠くから来ている人も有名な神社仏閣、観光スポットをあれこれ探していて、全然動きません。もちろん、自分も前にたどり着いたら、吸い込まれて動けないので、人のことは言えませんが。(^^;;;; ともかく、入館したら、順路の中ほどにある、「洛中洛外図屏風」にまず直行してください。そして、10〜20分ほど思う存分鑑賞していると、だんだん人ごみができてくるので、それからおもむろに、順路の最初からゆっくり鑑賞しましょう。

3.単眼鏡を持っていく
 なければしかたがありませんが、持っている人は、単眼鏡を持っていかれることを強くお勧めします。ガラスの奥の屏風絵までは1メートル近くあるので、細かいところがよく見えません。単眼鏡があると、まるでタイムワープしたように、描かれている人が生き生きと見えますし、絵師の筆づかいもわかります。
 今から買い求めるなら、「ニコン モノキュラーHG 5x15D」をおすすめします。単眼鏡は1500円ぐらいから、2万円ぐらいまで、値段の差があり、この機種は最高級に属するのですが、値段だけのことはあります。同じ倍率でも、視野が広く(つまり、のぞいた時に見えている丸い視野が大きい。安物は、節穴からのぞいているように、視野が狭い)、かつ他の機種より断然明るいです。また、「アイ・レリーフ」が長いので、メガネをかけたままでもよく見えます。(安物は、目をくっつけて見ないと見にくいのですが、ニコンのは、メガネで少し隙間があいてもよく見えます。)
 このニコンの単眼鏡は、5倍と7倍があるのですが、博物館・美術館での観賞専用には5倍をお奨めします。少しの差なのですが、7倍は手の振動でぶれやすいのと、倍率が高い分、絵の全体がみえにくいです。ただ、鴨川ぞいのカフェに座って、鳥の生態を見るような自然観察の利用も兼ねる場合は、7倍がお奨めです。7倍だと、月のクレーターも見えますし、サギが魚をついばんでいる様子もよく見えます。ちなみに、私は7倍を持っています。

 ・「ニコン モノキュラーHG 5x15D」
    http://www.ave.nikon.co.jp/bi_j/products/binoculars/monocular/hg_x15.htm
 ・「アイ・レリーフ」については、以下を参照。
    http://binoculars.at.infoseek.co.jp/seinou4.htm

4.「洛中洛外図屏風」をあらかじめ予習してから行く
 「洛中洛外図屏風」の前は、人だかりができるので、そんなにゆっくり見ることができません。ぜひ、どこにどんな物が描いてあるかを予習して、頭にたたきこんでから行きましょう。でないと、何がなんだかわからないうちに人ごみに押し出されて、何を見たかもわからないうちに、屏風から遠ざかってしまいます。
 この予習方法については、次回。

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