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『なぜ投資のプロはサルに負けるのか?』
藤沢数希(ダイヤモンド社)
この本は自分が半年ROMっていたブログ「金融日記」のkazu氏が、自らの投資銀行での経験を元に投資や市場の本質に斬りかかる本です。
正直言って、この本はこれから投資や市場の魔物と戦いを挑もうとしている勇者たちに捧げたい本です。内容としては、ファイナンス理論に流れる意識をベースに、現実社会での経済活動のファイナンス理論的な意味をあっさり述べきっています。かなりざっくりな説明をしているので、本当はさらなる説明が必要な部分をすっ飛ばしていたりと、少し話を知っている人には物足りないと感じる部分もあるのは確かですが、その「魔物」の全体像を知るには多少の問題点には目をつぶる方が良いように思います。
例えばこの本の中で述べられている「丁半賭博」「競馬」「宝くじ」と「株式市場」「保険」の比較は秀逸です。これらを全て「還元率」という一つのキーワードで同じ土俵に立たせているのです。この考え方はファイナンス的視点ではとても意味があります。なぜなら、株式市場については、市場は「効率的」であって、どのような動きをするか予想できないという点で、前者3つとほぼ同じ意味合いになるからです。(保険については「未来は予測できない」という、前者3つと同じ性質を備えているので、類似点はさらに明らかですね。)
あ、還元率の説明を忘れるところでした。還元率というのは、胴元が出資者(馬券や宝くじを買う人、株式市場に投資する人、保険に加入する人)からお金を集めた後で、そのうちどれだけの割合を出資者に再分配するか、という割合のことです。例えば、宝くじの場合は、宝くじの販売額のうちの45%を当選金として当選者に分配しているので、この45%という割合が宝くじの還元率になります。同様に、競馬の還元率は75%、株式市場の還元率はほぼ100%(手数料のために完全に100%にはならない)、保険の還元率は不明(むしろ必死に隠している)、としています。
「いや、こんな風に絶望するのはおかしい。例えば競馬だったら、今までの戦績、パドックでの状況を見ることで着順を予想できるはずであって、それらを全く予想できない前提に立って還元率だけを議論するのは意味がない!」とする考えがあるでしょうけれども、例えばそういった着順が多くの人に予想できた場合には、競馬でいうオッズが期待収益率が均衡するように変動して落ち着くでしょう。具体的には馬1が75%の確率で勝って、馬2が25%の確率で勝つという予想が多くの人に出来た場合には、馬2のオッズは馬1のオッズの3倍になるように落ち着く、ということです。これが先ほど出てきた「効率的」というキーワードに対応します。
(上の議論は、勝率を計算する方法をみんなが知っているという前提で成り立つ話です。競馬の場合、そのような計算式はみんなが知っているとは思いませんので、そのような計算式を見つけようと頑張るのも一つの手ではあると思います。過去の研究からするとなかなか難しいそうですが。(友人談))
市場が効率的であるとすると、先ほどの話は株式市場にも適用できます。株式市場におけるオッズ(=株価)は、期待収益率が均衡するように変動して落ち着くということです。そして、過去の研究から、市場はかなり効率的であることが示されているようです。(kazu氏談)
そして、この本の最後で、彼がお薦めする究極の投資法が示されています。(といってもこの方法はファイナンス理論でいうとある意味当たり前であって、彼が提唱者ではないのですが。)ここで明かすのもアレなので、興味がある方はぜひ実物の本を立ち読みしてみてください(笑)
彼のブログでの口調や態度はたまに庶民の気に障る場合がありますが、それとは関係なくこれは良くできた本であることを認めざるを得ないでしょう。繰り返しにはなりますが、この本はこれから市場に参加しようとしている勇者の方々にぜひ読んでもらいたい本です。もちろん、既に市場の魔物に巣くわれた方や、市場の魔物を自在に操れていると勘違いされている方にもお薦めです(笑)
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