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大手銀行は、世間から批判の矢面に立たされましたが、「そのリスクも、織り込み済みだった」と、奥は回想しています。結局は、政府が全面的に支援して、東電を救済する再建計画がまとまり、大手銀行が債権放棄させられるリスクは、なくなりました。

東電が、国際競争力が保てる価格で電力供給できなければ、我が国の産業界は、生き残れません。「東電の社会的責任を全うさせる」という、大義のために、三井住友をはじめ、大手銀行は大きなリスクをとることを決断しました。リスクをどうとるかの経営判断力が、まさに経営者の価値を決めます。奥の「私の履歴書」は、「経営者を測る価値判断基準は何か?」を考えるための事例研究に最適でした。

それではまた。

山内一三 記

(弁護士山内良治 兄からのサンデイ毎日「日経新聞「私の履歴書 奥正之」にみる、グローバル時代の経営の意思決定の価値」その2 終わり)
しかし情勢が混乱している中で、「政府としては、必要な手立てを講じます」という、あいまいな答えしか得られません。奥は、自行の経営会議において、「私が確認した原子力損害賠償法には、政府の責任が明記されている。だが、100%緊急融資分が回収できるとは限らない」と、リスクを説明しました。「それでも、この融資には大義がある」として、融資を自ら決断しました。その結果、大手銀行すべてが結束して、2兆円の緊急融資が、迅速に実行できました。

新たなリスクが加わりました。大手銀行の緊急融資後、東電の当面の資金繰りがついても、地元への多額の賠償責任や、原発事故の後処理問題など、長期にわたる際限のない資金需要が予想されます。国民の税金で、政府が東電のリスクを肩代わりする観測が強まると、突然、政治家やメディアなどから、銀行に「債権放棄」を求める声が噴出しました。

(つづく)
次は、私の履歴書で、奥が「大義がある」として融資実行を決断したリスクです。2011年に起きた東北大地震によって、周知のように東電福島第一原発の大事故が発生しました。震災の翌週に、東電から大手銀行に対し2兆円の緊急融資要請が来て、メインバンクの三井住友にも、6000億円の融資要請がきました。企業への通常の融資は、それに見合う担保が設定されますが、東電への緊急融資は、前例のない無担保一括融資要請です。

しかも周辺地域への放射能汚染問題が深刻化し、将来の原発の廃棄処理問題なども控えて、東電の会社存続が、危ぶまれる時期でした。もし経営破綻すれば、融資は返済されません。奥は、当時全国銀行協会会長職も兼任しており、まず、緊急融資の前提として、東電を所管する経済産業省から、「東電は潰さない」という、政府の確約を取ろうとしました。

(つづく)
人生においても、「リスクの取り方と損切の仕方」は大切です。買わない宝くじは当たらないように、人生においても、リスクを取らない限り、望む成果は得られません。しかし、「努力の割に実を結ばない」とか、「リスクをとって頑張っている割には、リターンが妙に縮んでいる」と感じることがあります。

その時こそ、リスク管理の肝心なところです。じっくりと今取っているリスクを、考えなおすべき時期に来ています。何か気づいていない挽回不可能な問題が潜んでいる場合が多く、思い切って損切りを検討すべき時かもしれませんから…。

(つづく)
割高感が強い商品でも、価格の急上昇局面では、「明日さえ上がれば儲けられる」から、という投機資金が大量に流れ込むときは、価格は泡のように膨らみ、高騰します。しかし、やや長い目で見れば、割高な状態は持続せず、バブルが破裂し暴落します。上記の市場営業統括部長は、リスクの割にリターンが妙に縮んでいる状態に気づき、バブルと判断し、速やかに損切りしました。

「日経平均は上昇しているのに、損をする」という、個人投資家のぼやきをよく耳にします。それは、すでに市場で注目され、かなり株価が価格上昇している株式を、個人投資家は、「まだ儲かる」と判断して、「リスクの割にリターンが妙に縮んでいる株」を買うためです。投資タイミングを間違えて、結果的には高値で買い、下落が始まると慌てて損切するため儲かりません。

(つづく)

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