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帰り際の車の中で、君はもうすっかり忘れていただろう着古してある首元が伸びたTシャツを
半年ぶりに返却したら失笑されてさ。

よく分からなかったけど、
それでも笑ってくれて嬉しくて。


― その少し前の話し。

タープの下で友達に囲まれている君が
朝ごはんを一人で用意するような音がしたから
朝ごはんもう食べたーって
テントの中から布越しに聞いたら
まだだよーって
もぐもぐ食べながら
布越しに答えてくれて
一緒に売店まで買いに行こうって
言ってくれた。

本当は寝坊したのは君の方。
本当は私の面倒なんか見ずに遠くにいて
みんなと元気で楽しくしていて欲しかった。
本当の本心は嘘なのかもしれないけど。

買物に行く短い道の途中で
思いが通じてなのか、
なんでか分からないけど、
あっという間に私と君は
そのあと、はぐれてしまった。



― その少し前の話し。

私たちは簡易なテントやタープの中にいるから
声も音もすごく近くで聞こえるのに届くのに
みんなの姿も君の姿も見えなくて
カラフルでポップでタフなアウトドア素材が
簡単に姿ばかりを遮った。
ティーシャツを渡すよって私が言っている
会話の中で見えていた君の姿は
なぜか実際の距離よりも遥かに遠くて、
姿や顔が見えるほど、
なおさら遠くいるように感じたの。



― その少し前の話し。

私は買物に行く途中で、ゴミ捨て場近くに止めて置いた車に、財布とTシャツを取りに行っていたんだけど、その空きスペースには色んな種類の猫が集まっていて、活発でやんちゃで元気な猫が沢山いて、それぞれの動きと顔と声が全部目に飛び込んでくるもんだから、
ゴミ捨て場のゴミもブロックも金網も
手前の砂利も草も奥の山木も
空も君も全部消えちゃって、
背景は全部、白色になって、
躍動感ある猫の
ジャンプや
ダンスだけを
空白の空間の中で
まじまじと楽しく観ちゃったもんだから
結局、
渡すものがあるのと言った自分の声の後は
全部、猫以外、
なんでもかんでもシャットアウトしていて、
ただ、ただ、
全神経を、
飛び回る猫に向けていて、
私はひたすらに嬉々としていました。

あの日の私は怖かったのでしょう。

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