飛耳長目 国際紛争の心理

飛耳長目(ひじちょうもく)は、吉田松陰が強調した言葉です。世界の紛争や空想、錯覚を探求し、自らも自由連想していきます。

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国際紛争の心理19 戦後最初の反日暴動 西安の西北大学寸劇事件  2003年10月

 2005年を頂点とする反日暴動の背景としては、満州事変、日中戦争などまでさかのぼることができようが、その根は深い。筆者の考えでは、冊封体制を一度でも受け入れた国に対する中国の差別は厳しい。朝鮮、琉球、チベットなど、冊封に組み込まれていたところはより下に観られている。弟扱いをしていた国(つまり日本)が、兄のように振る舞うようになれば、激しい怒りがわき上がる。そういった背景があろう。
 しかしここでは、ここ数年の反日の起源を扱うのみにしたい。実は、2004年の夏、日中サッカーアジアカップ対決の頃、私はちょうど中国にいた。あのころは、今回の北京オリンピックよりも、反日はもっとひどく、君が代を歌っているときは妨害のブーイングが響き、日本が点を入れようものなら激しくなじり、出口では日本人や選手が危害を加えられた。私は会場にはいなかったが、ちょうど雲南省でテレビを観ていた。こうして2004年の反日サッカー事件、2005年の各都市での反日暴動へとつづく。
 これは単に靖国参拝問題、国連常任理事国入り問題、教科書問題などでは収まらない。筆者の観るところ、2003年11月の政治的処理を誤った結果であったようである。これによって、学生達の暴力が公正に裁かれず、正当化されてしまった。つまり、2003年が重要であった。
 このころの公文書や日記はまだ公開されていないが、しっかりした取材で事実が分かってきている。

まず、当時の記事から振り返る。引用させていただく。
 
大学学長「中国侮辱の意図なかった」 西安寸劇事件
http://www.asahi.com/international/update/1115/004.html

『 中国・西安市の西北大学で先月末、日本人留学生のひわいな寸劇に中国人学生が怒って抗議行動が広がり、留学生3人が除籍処分になった事件で、同大学の孫勇学長が「(寸劇は)不適切だったが、中国を侮辱する意図はなかった」と他の日本人学生に語っていたことが14日わかった。
 学長はさらに、中国人学生の抗議がエスカレートした理由を「多くの不満を持つ人が事実をゆがめて言いふらした」としたうえで、関係ない日本人学生2人を殴ってけがをさせたのは「学外の社会人」だと主張した。
 関係者によると、学長は、留学生らが避難していたホテルから学内の宿舎に戻った今月4日、日本人学生らに事件に対する見解を述べた。
 その中で、事件全体を「誠に遺憾だった」としたうえで、暴力から留学生を守るため大学側が努力した点を強調。「学外の社会人が侵入して暴力を振るうのをコントロールできなかった。教師も殴られた」と語った。
 さらに「私の目の前で日本人学生が殴られた。すぐに警察に保護されたが、とても残念だった」とも述べたという。
 学長の見解は中国内では公表されていない。寸劇が「中国を侮辱する意図がなかった」と公言すれば、抗議した中国の学生らが再び反発しかねないためとみられる。
 これに関連して、阿南惟茂・駐中国大使は14日の記者会見で、日本大使館から大学当局に「留学生を殴った当事者を見つけ処分してほしい」と申し入れたことを明らかにした。大学側は「一般人も交じっており、特定は難しい」としており、申し入れに対する回答は今のところないという。
 同大学の40人余の日本人学生のうち、寸劇に出演して除籍処分になった3人のほか、中国人学生らの抗議行動や暴力にショックを受けた8人の女子学生が、大学を辞めて日本に帰国している。 (11/15 08:39) 』


清水美和著 中国が「反日」を捨てる日 講談社 2006
は、事情を最もよく明らかにしている。

彼によると、日中両国の政府は、これを学生間のトラブルに矮小化して処理を図った。中国のマスコミは報道を禁じられていたので、いまだに当事者しか知らない。

1 寸劇の実際

2003年10月29日、西安地区ナンバー2の大学である西北大学の大講堂で「第3回外国語文化祭」が行われた。日本人留学生3人が表演(寸劇)を行った。隠し芸と言って良い。
3人は、Tシャツに赤いブラジャー、股間に紙コップをつけ、段ボールをかぶってナ・ナ・ナと叫んで踊った。かぶり物には、毛沢東、酒井法子などの絵、何を見ているの、中日友好、謝謝などがかかれ、3人の背中にはそれぞれ中国、日本、ハートマークが描かれた。
学生インタビューによると、何かを意識して模倣したわけではない。ラジオ体操をモデルに振り付けしたけど、まとまりのないものになってしまった、という。つまり、NAとしか言えない宇宙人が西安に現われたという趣向の出し物であった。
出し物は教職員に制止され、観衆はとまどったが、その場で激しい反応はなかった。

2 ネット情報の広がりと暴力の発生

問題は、その夜のインターネットで、「日本人留学生が中国を侮辱した」というデマが拡がったことである。誤報としては、豚の仮面をかぶり、醜い中国人という名札をつけていた、我是NAと発音したのが、私は支那だということになり、侮蔑だなど。

これらの雰囲気の背景には、その年の9・18(満州事変72周年)に、広東省で日本人の集団買春事件があり、中国メディアが大々的に報道していた。買春を連想させた。

翌日、30日昼過ぎ、留学生楼前に、学生が集まり始め謝罪要求をした。5時過ぎ、謝罪がないので突入して襲った。地元テレビの映した様子によると、食堂のガラスは破壊され、テーブル、いすもなぎ倒されていた。
暴徒化した学生は、各部屋のドアを蹴り破り、日本人留学生2名(女性1名を含む)を殴打した。この2名は事件と関係なかった。騒ぎを静めようとした中国人にも暴力をふるった。

大学当局は、警察部隊の力を借りて、31日未明から、中国人学生を学生寮に押し込め、2時間ごとに点呼を取った。
しかし、朝になると、他大学の学生が押し寄せ、閉鎖された正門をこじ開け、投石、破壊を繰り返した。その数は、3万から5万人に達した。警察車両をひっくり返し、日本料理店などを破壊した。
27人の警察官が負傷し、16台の警察車両などが破壊されたと陜西テレビが報じた。
中国では、共産党政権樹立後、反日を掲げた運動やデモが行われているが、日本人であることを唯一の理由に暴力をふるわれたり、大規模な破壊活動が行われたことはなかった。そういう意味で、西北大学事件が現代中国で初めての反日暴動である。

3 当局の対応と日本政府

西北大学当局は、30日付で、下品な表演をした日本人留学生3人を退学処分にし、同じくマネキン人形をかかえ、腹話術の真似をした日本語教師も解職と決めた。処分決定通知書で実名も公表した。ここでは、「中国と中華民族を侮辱する主観的な悪意はなかった」とした。しかし、11月1日に西北大学共産党委員会が出した「全校の学生諸君に告げる書」では、「一部少数の悪者が留学生寮を襲い」「数千人の所属不明な人々が西門を襲撃」としつつも「学生諸君の義憤に駆られた心情を反映し」と変化した。
中国外交部は、10月31日、北京の日本大使館に対して、「中国の法律、風俗、習慣を厳守するよう希望する」と申し入れた。
これらにより、学生達の暴走が愛国的であるかのような印象を広げた。
清水は、このとき学生達の行動が間違っていたというべきであったとする。

ところが、11月28日の朝日新聞は、中国外交部の申し入れ(抗議)が、実際は哀願にも似た協力要請であったと検証記事を書いている。
「寸劇に出た留学生に反省文を書かせて欲しい。西安には40もの大学があり、西北大学だけの問題では収まらなくなる」
中国外交部の羅田広領事局長は、日本大使館の高橋邦夫公使を呼んで言ったという。
日本大使館のある幹部は、のちに清水に「今から思えば、西安地区に危険情報を出すべきだった」とした。
川口順子(よりこ)外相は、11月4日になっても、留学生を責める発言をした。日本国内でも、留学生の態度を問題にする論評が多かった。現に、筆者は翌年西安に行ったが、暴動があったことを認識していなかった。しかし、当時から中国の中でも、学生を処分するべきという意見があった。香港の中国系新聞「大公報」が11月6日付で、文匯報が7日付で、西北大学事件と当局の対応を批判した。
日本人への暴力や日本料理店の破壊を報道しないのは、事実上騒ぎを扇動するものだとした。

清水によると、1年後の日本語弁論大会で当時を知る学生と話せたようである。一部の学生は真剣に相互理解を求めていたが、一方で1年後もデマがそのまま残っていることを知ったそうである。
 当時日本で放映されたテレビ報道でも、日本人が裸で踊りながら、これぞ中国人という文字を掲げたという想像による映像を流したが、これは誤報であった。これはいまだにしっかりと訂正されていない。こうして、2004年、2005年と激しい反日暴動がつづくこととなった。
 今回の2008年北京オリンピックは、やはり日中直接対戦の時はすごい中国人の反日感情が噴出する。ブーイングで妨害してくる。ただし、国歌への侮辱や、直接的な暴力はないので、枠には収まっている。枠の中で攻撃性を発揮すると互いの攻撃性が収まるのではないかと思われる。それは、囲碁、将棋の対戦が戦争のではないのと同じである。今回は、激しく戦っても、最後に握手をするし、楽しく帰宅できることだろうと予測する。

4 ソクラテスとの対話

綾瀬遥(秘書官、法務省出向) 私が知りたいのは、川口外相は殴打事件や日本料理店襲撃を知っていたのかどうかですね。大使や外務次官は、事を収めようとしていたはずですが。留学生のせいにされてしまった。
小岩木純一郎 俺は知らなかったな。あの事件で、せっかく新思考外交が盛り上がってきたところだったのに、つぶれてしまったことが残念だな。胡錦濤さん達は、日本との関係を改善したかったんだ。
綾瀬 常任理事国入りや新幹線導入で、いろいろサインが来ていたようですね。あのとき、抗議するか、危険地域指定をするべきでしたね。
小岩木 あの教訓は生かされているよ。しっかり抗議していれば、対日新思考外交は中断しなかったかも知れない。だから2005年には抗議しただろう。この前、台湾に危険情報を出した。
綾瀬 マスコミも訂正記事を出すべきだし、中国人がこの事件を知らないこともおかしいです。事実を広めなければ。
西郷 2003年12月から、中国が沖ノ鳥島を岩だと主張し始めたのも、その影響でござるな。
ソクラテス 部分的記憶喪失は多いけど、西安事件については認識すらできていないね。最初から報道統制されているから。それに、沖ノ鳥島が関連するとは気づかなかったな。
綾瀬 伊佐奈さん、集団的記憶喪失を治すべきだと言っておられましたね。
中村伊佐奈(作家) そうです。記憶から喪失することを乖離といいます。乖離を治すには、丹念に記憶をつなげることが重要ですね。今こうやって思い出していることが大事なんですよ。
ソクラテス なるほど。記憶をつなげさせるだけでも良いんだな。

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日本車持ち主殴った男拘束 中国西安の反日デモ
2012.10.2 22:36 [中国] 再掲(9年後には逮捕しただけましだ)
中国のニュースサイト、新浪網によると、陝西省西安市の公安当局は2日、日本政府による沖縄県・尖閣諸島国有化に抗議する9月15日の同市の反日デモで、日本車を運転していた中国人男性を殴って頭蓋骨骨折の重傷を負わせた男を河南省で拘束した。拘束の経緯などは明らかにされていない。

男性はオートバイの盗難防止に使う鉄製のロックで頭を殴られ、右半身がまひした状態になったという。

西安のデモでは一部が暴徒化、10台以上の日本車が破壊されたほか、日本車の販売店も襲われた。(共同)

2012/10/7(日) 午前 9:02 [ 中村 伊佐奈 ]

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瀋陽の寸劇事件ですが、これはダライ・ラマの訪日に合わせて発生しており、離日とともに収束しています。ぜひ日付を確認してみてください。
ちなみに、反小泉デモとされる2004年の反日大暴動も、実はダライ・ラマの訪日に合わせて起こっており、離日に合わせて終息命令が出されて、以後のデモ参加者は逮捕などされております。

2012/12/15(土) 午後 5:12 [ 餃子の満州 ]

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なるほど。確かに対応しています。2003年11月5日の記事がありました。この1週間前ですから、知れ渡っているはずです。
* 東大寺便り * ダライ・ラマ第十四世ご来寺
11月5日午後1時半、釈尊の教えを世界各地で説いておられ、1989年にノーベル平和賞を受賞された、ダライ・ラマ第十四世テンジン・ギャツォ猊下が東大寺を参拝された。今回の訪日は、チベット問題を考える議員連盟などの招きで来日されたもので、午前中は市内のホテルで宗教者らと非公開のフォーラムに臨まれた後、興福寺を参拝された。

2012/12/15(土) 午後 5:35 [ 中村 伊佐奈 ]

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もっと見つけました。31日キャピトル東急でレセプションですから反日デモは2日前に起こっていますね。

11月1日(土)13:30〜15:30(12:30開場)
無料講演「慈悲の力 "Power of Compassion"」

11月2日(日)午前の部 9:30〜12:00
有料講演 「心を訓練する八つの教え"Eight Verses on Mind Training"」
11月2日(日)午後の部 14:00〜16:00
有料講演「科学と仏教の対話"Mind and Science Conference"」

2012/12/15(土) 午後 5:37 [ 中村 伊佐奈 ]

起立で減給処分の教諭の敗訴が確定
君が代訴訟2017.4.3 19:35
大阪府立支援学校の卒業式で、君が代斉唱時に起立して歌わなかったとして減給処分を受けた教諭、奥野泰孝さん(59)が府に処分取り消しを求めた訴訟は、原告敗訴の2審判決が確定した。最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)が3月30日付で、奥野さんの上告を退ける決定をした。

奥野さんは、卒業式での君が代の起立斉唱を定めた府条例について、思想や良心の自由を侵害しており憲法違反だと主張。1審大阪地裁判決は「式典を円滑に進行させるためで違憲ではない」とした上で、奥野さんが積極的に秩序を乱そうとしており、処分は重すぎないと判断した。2審大阪高裁も支持した。

確定判決によると、奥野さんは平成25年3月の卒業式で、学校に式場外での受け付け業務を命じられていたが場内に入り、君が代を起立斉唱しなかった。府教委は同月、減給1カ月の懲戒処分とした。

反応
「処分は採用権の乱用に当たらない」不起立の教諭側が二審も敗訴 大阪高裁
大阪府“君が代起立”条例は「合憲」、減給処分の元教員の訴え棄却 大阪地裁判決

2017/4/4(火) 午前 6:04 [ 中村 伊佐奈 ]

西北大学 中国
で検索していただきました。

2017/12/4(月) 午後 9:45 [ 中村 伊佐奈 ]

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