言葉の定義があいまいだと、いろいろ誤解のもとなので、少し書いてみます。
包丁/鉋などの大工道具も含めて、手打ち鍛造品とか、いろいろいわれますがなにがどうやって作られるのか、何が問題なのかなどいろいろ細かなことがあり、なかなか消費者には分かりにくいところがあります。自分も当初はさっぱりでした。
鍛造という言葉だけをとれば鍛えて造るとなっていますので、ハンマーで鋼材をたたいてつくったものは鍛造品といえます。通常はあっためて柔らかくして叩くのが基本ですが、あえて冷えた状態で叩くのを冷間鍛造といいます。またものによっては型にはめて叩く場合もあります。包丁でいえば、常識的には形状を作る過程で叩き行程をいれたものを鍛造というでしょう。ただしそれだけではすまないところがいろいろあります。
基本、包丁の製造をベースに考えてみます。
包丁の分類は、形状の分類と、素材による分類と、製法による分類など複数あります。
和包丁と洋包丁は主に柄の付け方で分類され、差し込みタイプのものを和包丁、挟み込みタイプのものを洋包丁と分類できますが、厄介なことに、和包丁の形をした洋包丁や、洋包丁の形をした差し込みタイプの柄のものもできたため、完全な分類ができなくなりました。
形状は、和包丁形状の分類は細かくいえば〇〇用ということで山ほどありますし、サイズのコンビネーションもいれると簡単に数百ぐらいになってしまいます。
洋包丁は、もっと難しくて、形状がまちまちなため、逆に名前としては三徳や牛刀などという一般名がいろんな包丁につけられてしまったため、もっと混沌としてしまいました。
素材は、よくある分類では、錆びる鋼(はがね)とステンレスという分類がつかわれますが、鋼材の種類をあげれば、また百種類を超えるものがありますので、難しいです。さらには特殊なセラミックやチタン、コバルト合金などもあり、単に鋼と一口にまとめられなくなってしまいました。
製法上で問題になるのはどこまで人の手がはいっているかということで、究極的には砂鉄から玉鋼をつくって手で打って刃物を作れば、ほとんど完全な手作りといえそうですが、今時そんなふうに包丁が作られると思っている人もいないでしょう。どこかで機械がつかわれています。
通常、鋼材をつくるところでは、鋼材を供給するメーカーがあり、そこで供給された棒状か板状のものをベースにつくるのが主流と思います。その次がよく問題になりますが、鋼だけを使って作る(全鋼/本焼)と軟鉄を地金として鋼と接合したものがあります。その接合を機械をつかって(ローラー等)できたものが利器材と呼ばれます。利器材には沢山の種類があり、鋼と軟鉄をつけたものや、両側にステンレスをつけたものなどもあります。利器材を使わないものは鍛接と呼ばれ、まさに鍛えて接合したものをさします。この時点でスプリングハンマーという機械をつかっても手造りというカテゴリーのなかにおさめられるのが通常です。
最近では、鋼に別の鋼をつけた利器材まででてきましたので、またややこしくなってきました。
さらに、多層の利器材では鋼と軟鉄を層状に接合してあります。
次に形状を造る行程ですが、最も簡単に機械で行う方法は板状のものを機械で打ち抜く(型抜き)方法です。その次に利器材などをベースにしながらも途中に鍛造(叩く行程)をして全体を延ばすもの。刃先だけを叩くものなど叩く行程をどこまでいれるかにもバリエーションがあります。叩くのも手で叩くのもあるでしょうしスプリングハンマーもあるでしょうし、ハンマーの形状でも出来上がる模様等もかわってきたりします。
次に熱処理ですが、これまた書き出すときりがないくらい手順があります。特に重要な焼き入れについてかくと、古典的な焼き入れは、ふいごで風を送り松炭であたためて水で焼き入れするというものでしょうが、ふいごの代わりにファンをつかったり松炭ではなくコークスだったりガスだったり、焼き入れが水ではなく油だったりと、、、いろいろな違いがありそれぞれ言い分があったりします。当然鋼材よって適切な熱処理がありそれがかわれば古典的な方法ではうまくいかないのも当然です。
さて、ごくごく簡単に分類と製法上の違いを書いてみましたが、各社いろいろな思惑などがあり細かな製造方法まで明らかにして製造販売しているところは多くありません。ポイントポイントのアピールはあっても、材料から出来上がりまで細かい行程の紹介は少ないのです。一般的な行程の紹介はあっても種類によってはちがうとか、バリエーションもありのせきれないというのもあるでしょう。特に鋼材や利器材をつかっているかなどの部分ははっきりとかかないものが多いです。これは手打ち鍛造品が利器材より上等であり高品質であるという販売店の表記がおおくあり、こういう事情で逆のことを書きにくいのだと思います。そんなことなので、結局うちの包丁は、最高だとか、切れ味抜群だとかそういう表現になってしまいます。この手の表記は不動産業界では御法度なのだそうです。根拠も無く最高とか抜群などとはいえないということです。
いろいろ聞いてみると作っているほうも、各工程がどこまで切れ味に関係しているのか理解してないことも多そうです。作っている人も分かっていないのですから、使う人で分かる人もまた少ないでしょう。そもそもその行程だけ違う比較する包丁すら存在しないのですから。
記憶だけで書いていますので、いろいろあるかとおもいます。ご指摘、コメント等遠慮なくおねがいします。
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