南原充士の 『越落の園』

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「価値観の研究」第一部

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 価値観の体系および要素についてはすでに述べた。

 ただ、個人の価値観と社会の価値観にはちがいがある。

 社会道徳などは個人の道徳観を拘束する。

 正義もまた個人の正義感と社会的正義は異なりうる。

 正義は、絶対的なものではない。

 社会科学が価値観の科学的な解明をすすめることは重要だが、完全に科学的な解明ができるとは思えない。

 では、「正義」とはなにか?

 自然科学については一定の制約はあるものの、証明可能な法則や事実がある。

 社会科学は、一般には、相対的な価値観だ。

 歴史的に積み上げられてきた価値観である。

 たとえば、ひとを殺したり傷つけたりしてはいけない。

 ひとの自由をうばってはいけない。財産を盗んでもいけない。

 侵略的な戦争はいけない。人種差別はいけない。誹謗中傷はいけない。

 正義は、公平、公益、公正、非暴力、自由、博愛、平等などのなかにある。

 弱いものを助けよ。病人を手当てせよ。体の不自由な老人を介護せよ。身寄りのない孤児を救え。などなど。反論しようのない立派なスローガンだ。

 だが、見方を変えれば、正義は別のところにある。

 一昔前の世界は、戦争をやむをえないこととみていた。

 であれば、力は正義となる。

 常に軍事力をたくわえ、すきあらば、敵にせめかかり、勝利を手にするのである。

 日本でも、家康が権力を掌握するころまでは、戦国の世が長く続いていた。

 国際的にも、いまだに戦争は各地で行われている。

 「正義」を標榜しない戦争はないはずだ。少なくとも、戦争をしかける者は、正義のために戦うことを宣言するだろう。

 正義と正義の衝突が、見かけ上の戦争の実態だ。

 だが、第三者的な立場で見れば、状況はまったく違って見える。

また、後世になって振り返れば、状況は違って見えるだろう。

 正義というものは、さように、歴史的な意味づけがなされるものであることを忘れてはならないだろう。

 ただ、人類が、正義に向かって進化していることを信じたいのはやまやまである。

ぼくもまた、それを信じたいし、そういう努力をすべきだと思う。それが歴史的な知恵であり、価値観だと思う。


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