「SAPIO」1・2月号に「日本が売られる──欧米や中国などの外資が次々に日本の介護事業者を買収 『日本人の老後』がハゲタカに叩き売られる」と題して、国際ジャーナリストの堤未果氏のインタビュー記事が掲載されている。
「SAPIO」は、表紙の見出しを一目見れば瞭然だが、保守・右派系の雑誌である。理由はわからないが、今号から月刊から隔月刊となった。中には注目すべき記事もあるものの、率直に言って、何人かの筆者の記事については、とても理解しかねるものであるが、今回はそれらに対して意見するものではない。
さて、話を戻す。すでに12月15日の当ブログで堤氏の「日本が売られる」の著書を紹介したが、「民営化」「グローバル化」の名の下で、「水道=インフラ」「農作物=食」「農地=国土」「森林=自然」「薬=医療」「労働時間=健康」「仕事=雇用」「公立学校=教育」「土壌=環境」など、日本人の命や国土保全に関わるものまで次々に、値札が付けられ売られようとしている。
今回の堤氏のインタビュー記事は、その中にもあるが、「日本人の老後」までが、ハゲタカ(外資系ファンド)の餌食になろうとしているということについてリアルに書かれている。
「高齢化大国」日本は、ウォール街の投資ファンドや外資系介護ビジネス業者から熱い視線が注がれ、ここ数年でも欧米や中国の企業が日本の介護業界に参入するケースが相次いでいるという。
なぜなら、介護ビジネスが、投資家が安定した高配当が得られる「優良投資商品」として急成長し、例えばアメリカではフランチャイズの民間老人ホームや介護施設の不動産投資信託の人気が高くなっているのだ。
堤氏がウォール街で証券会社に勤めていた頃、民間老人ホームの投資セミナーに付き合いで行ったときに、主催者が「いかに有望な投資商品か」を説明、「人件費削減」「サービス縮小」「利用率アップ」によって確実に利益を出してゆくこととともに、「回転率アップ」を堂々と公言するのを聞いて背筋が寒くなったという。
「回転率アップ」──すなわち利用者の死を意味するからだ。
そして、その後堤氏がジャーナリストとしてアメリカの介護現場を取材すると、全国チェーンの中流向け民間老人ホーム(月額利用料20万円程度)でさえ、人件費を極限まで減らし、50人の入居者をたった一人の介護士が担当、オムツ交換は3に1回、体も拭いてもらえず放置された挙句に意識不明の状態で発見されなくなったという事例もあったという。
投資家からすれば、公的制度だからこそ確実な収入が見込める上に、世界でも高齢化のトップランナーである日本では介護の需要は右肩上がり。まさに日本人の老後は、投資家や外国企業から見ると「宝の山」なのだ。
さらに、これまで現場は慢性的な人手不足に悩まされていたが、政府が、外国人技能実習生参入に門戸を開き、「量より質」と言わんばかりに、当初実習生に課していた日本語能力のレベルまで大幅に緩和。さらには「改正入管法」成立で、4月からは外国人でも新たな在留資格で介護職に就けるようになり、今後5年間で5万人〜6万人の受け入れを目論んでいるという。
「ただでさえ他の職種に比べ平均10万円安い介護士の月給が、安価な外国人介護士との価格競争で引き下げられれば、投資家が喜ぶ『人件費削減』に好都合だからだ」と堤氏は指摘する。
また、今後は、保険適用のサービスと適用外のサービスと組み合わせる「混合介護」も進み、事業所はサービスの内容、価格を自由に決められるため「利用料アップ」につながり、富裕層向けの保険外サービスばかりが増え、それ以外の利用者は蚊帳の外に置かれることにもなりかねないとする。
堤氏は警告する。
「介護が必要になったとき、ふと地域を見渡すと、富裕層向けの介護施設ばかりになっている光景を想像してほしい。それは日本人の老後が、介護が贅沢品のアメリカ同様、ビジネスに呑まれていく兆候なのだ」
詳しくは、「SAPIO」の堤氏のインタビュー記事そのものと、堤氏の著書「日本が売られる」を読まれることをお勧めしたい。
実は、堤氏は、前にも「保守・右派系雑誌」と言われている「月刊 WiLL」(2014年2月号)に「ハゲタカが狙う日本の医療 TPP」と題して、アメリカの医療、日本の医療について語る、8ページにも渡る“大型インタビュー”が掲載されたことがあった。
そのインタビューの最後で、堤氏は、読者に次のようによびかけている。
「保守もリベラルも分断されていることにまずは気づき、『本当に戦うべき相手は誰なのか』『日本を守るために何すべきなのか』を軸に小異を捨てて連携すべき時でしょう。奪われてしまってからでは遅い。ともにこの国を守るチャンスはいましかないのです」
私もあらためてそう思う。奪われてからでは遅いのだ。
水道民営化だって、海外で再公営化が大きな流れとなっているが、どこの国でも、再公営に戻すにあたって、企業と結んだ契約を解除する際に、自治体が提訴され、多額の違約金や損害賠償金を支払う羽目に遭っている。民営化の失敗の尻拭いまで、納税者が支払わされるわけだ。不当に奪われたものは必ず取り返すのは当然であるが、奪われる前に歯止めをかけるのが一番だ。
まさに、「この国を守るチャンスはいましかない」。
保守やリベラルなど関係なく、日本国民の命と安全、国土と財産をハゲタカ(外資系ファンド)や巨大企業によって奪われ、食い散らかされてしまう前に、声をあげ、意思を示すべきときだ。