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以前、ブログでちょこっとお話しました、某小説大賞になぜか最終選考に残ったBL.。
最終選考に残ったのですから、まあそこそこ読めるのだろう、という判断で、掲載することにしました。
ただH表現有りなので、冒頭部分のみです。
不意に空が高いなと、校舎の屋上のフェンスに凭れて座り、流れ行く茜色の雲を見ていた火浦(ひうら)勝利(しょうり)は思った。
秋の深まりを感じさせる黄昏色の空に向かって、深く吸い込んだ煙草の煙をゆっくりと吐き出す。
紫煙を追いかけるようにして金槌が釘を打つ音が、校舎のあちこちから聞こえてきた。
白松(はくしょう)学園の文化祭は再来週末だというのに、皆準備に余念がない。
ただ無機質に時をやり過ごしている火浦には、高校生活を謳歌する気満々の彼等の姿は酷く幼く、 滑稽で鬱陶しささえ感じるほどだった。
夕映えに響く何の苦労も知らないであろう高らかな笑い声に、臓腑がグッと下がる。
苛立つ思いに手に持つ煙草を、傍らに置いた缶コーヒーの中に捻じ込むようにして落とす。
まだ半分も飲み終えていない缶の中から、火が液体に触れ消失する瞬間の潔い音が届く。
「火浦」
呼びかけに火浦は缶に向けていた視線を上げた。
火浦が授業中も休み時間も関係なく、屋上を休憩場所に決めたのは、一年前の高校一年の秋。
依頼、二百人からなる暴走族、特神隊(とくしんたい)を影で牛耳っていると噂されている、紫の長めのストレートの髪を持つ火浦を恐れてか、屋上に来る生徒は皆無となった。
久々の客人となった同級生は、同じ中学の出身ではあるが言葉を交わしたことのない人物で、訝しく思う気持ちに眉間に力がこもる。
「話がある。少しいいか」
ブラウンのブレザーをきちんと着こなした、取り澄ましたような顔立ちの同級生に、火浦は歪んだ笑みを向けた。
「学年首席の雪村(ゆきむら)椿(つばき)君が、学年一の落ちこぼれに何の用だ」
揶揄するような声音にも、硬質な面差しは崩れない。
秋の風が癖のない緑を帯びた髪を、ただ揺らすだけだった。
本当に綺麗な顔立ちをしているなと、見上げる火浦は思った。
落ちた日の中ですら煌きを見せる深い色の黒髪も、墨を落としたような濃い色の澄んだ瞳も、男とは思えない色素の薄い肌も。
決して女顔というわけではない。
けれども怜悧な感じのする面差しに、男を感じることもない。
中世的な顔立ちは仄かな色香を感じさせ、怒ったように引き結ばれた肉厚の薄い唇ですら艶めかしく感じられた。
「頼みがある」
見惚れる火浦の前で、一切の感情を滲ませない声音で、発色の良い唇が言葉を綴る。
「頼み?」
繰り返した言葉に、雪村は小さく頷いた。
「中学生の弟がいじめにあっている。助けてほしい」
初めての会話はまるで思いも寄らない内容で、そのあまりの唐突さに、火浦は眉間に皺を刻んだ。
「意味分かんないんだけど」
「火浦から嫌がらせをしている連中に話をつけてほしい」
優等生である雪村が発したとは思えない不穏な空気を纏った言葉に、眉間の皺を更に深くする。
「脅せってこと?」
「火浦のやり方で」
「俺のやり方ね……」
明瞭でありながらも言葉を逃がしたような物言いに、皮肉に満ちた声音で小馬鹿にするような笑みを雪村に向けた。
火浦は校内は勿論、他校の生徒とも喧嘩をしたことはない。
脅しも恫喝も恐喝もしたことはない。
それでも市内はおろか近隣の中高生達に恐れられているのは、特神隊の総長で幼馴染みの兵頭(ひょうどう)竜一(りゅういち)の影響だ。
竜一が一目置いているせいで、隊に所属する人間は行き会えば必ず腰を折る。
単なるバイク好きなのに減速知らずの走りに「青い流星」と称されるようになり、結果、影の総長などと噂されるようになった。
火浦はそのことに対し肯定は勿論、特別否定もしなかった。
周りの人間からどう思われようが気にはならなかったし、遠巻きに見るクラスメイトの姿に、鬱陶しい人間関係に煩わされない日常は、いっそ清々しかった。
それなのに他の人間同様、雪村が自分が容易く他者を圧し、暴力を奮うような人間だと思っていることに脳の奥がグラリと揺れた。
「親とか先生には?」
なぜか沸き起こる怒りの感情を見せまいと、努めて冷静に問いかけた言葉に、雪村は左右に頭を振った。
「親には話していない。教師に話したところで何の解決にもならないだろう」
「道理。でも脅しをかけろなんて、品行方正と名高い雪村君の発言とは思えないな。先生方が聞いたら、卒倒するんじゃねえの」
「綺麗ごとを言っている場合じゃない」
「確かに。もたもたして飛び降りでもされたら大変だからな」
自殺の存在をほのめかす言葉に、目に見えて雪村の細い肩が跳ねた。
それまで感情を一切見せていなかった面差しに恐怖の色が走り、白い肌がより一層白さを増し、唇が微かに震えた。
怯える姿に、今まで抱いたことのない嗜虐という名の心が明確にその存在を示し、昂る心に口元に無自覚の薄い笑みが浮かんだ。
「雪村の言いたいことは分かった。でもそれって、俺に何のメリットがあるわけ?」
「それは……」
自分の言葉に追いつめられてゆく雪村の姿に、なぜか背筋が震えるような快感を覚えた。
今までいじめに興じる人間の気持ちが、火浦には理解出来なかった。
他者を抑圧する行為のどこが楽しいのだろうと、幼稚とも思える行動をばかにしていた。
だが今なら彼等の気持ちが理解出来るような気がした。
「いいよ」
どこまでも追いつめたいという欲望を抱きながらの了承に、色を失った面差しの中、雪村は漆黒の瞳を見開いた。
「それじゃ――」
「無償ってわけにはいかねえけどな」
弾むような声音を断ち切っての言葉に、喜びの色を宿した面差しが瞬時にかげる。
「ギブアンドテイクが、取引きの基本だろう」
「金か」
「さすがは雪村君。察しがいいな」
「いくら必要だ」
「百万」
瞠目し絶句する姿が酷く心地好かった。
中学時代、全国模試でトップを取ったことのある雪村を知らない生徒は校内にいなかった。
明晰な頭脳以上に、女子より美しいとされる面差しに、無愛想にも係らず年齢の上下を問わず男女共に人気があった。
だが浮き立つ周りを嫌うかのように、よく図書室の隅で本を読んでいる姿を見かけた。
火浦も雪村の美しさには心惹かれた。
姿を見かければ追いかけてしまうほどに。
だが見つめるだけで声をかけることも出来ないまま中学を卒業した。
今現在も同じ中学出身の同級生というくらいしか接点がなく、高校に入学してからも同じクラスになったことも、言葉を交わしたこともない。
それなのに雪村に対し、激昂するように気持ちが向かってしまう。
「可愛い弟助けられるんだ。高くはねえだろう」
顎先を軽く上げてのいたぶるような言葉に、漆黒の瞳が大きく震えた。
思案するように長い睫に縁取られた瞳が、ゆっくりと伏せられてゆく。
「……分かった」
「さすがは世界に名の知られた絵画修復士の息子だな。テレビ見たぜ」
雪村の父親は三年ほど前、プロの仕事人としてメディアに取り上げられたことがある。
身近な人間、しかも頭脳明晰、容姿端麗な雪村の父親のテレビ出演ということで、校内でかなり話題になった。
木版画職人という特殊な職業の父親を持つ火浦は、同じような芸術的な父親を持つ雪村に親近感を覚え、興味を持ってテレビを見た。
画面の中の怜悧な印象を受ける整った面差しで寡黙に働く父親の姿に、無愛想で生真面目な雪村の姿が重なった。
「父親は関係ない」
「自分の小遣いでどうにかするってわけ?」
父親の名前が出たことが不服とばかりに顔を上げた雪村だったが、火浦の問いかけに答えることはなかった。
「どっちにしろお金持ちのお坊ちゃまだよ」
ため息を交えての言葉が癇に障ったのか、雪村は唇を引き結び、怒りを宿したような眼差しを火浦に向けた。
潔癖で融通の利かない印象を受ける生真面目な面差しがなぜかおかしくて、新たに沸き起こった嗜虐心に、狩りをする肉食獣のような心持ちになる。
自然、意地の悪い笑みが口元に広がってゆく。
「でもピアス五つも付けて紫色の頭の俺だけど、意外とお坊ちゃまで、愛情の代わりにバンバン金くれる親持ってるんだ。だから、金には困ってない」
「だったら、どうすれば……」
「金じゃなく身体で払えよ」
「身体?」
まるで意味が分からないといった様子の雪村の両手首を、立ち上がった火浦は思い切りつかんだ。
読んでやってもいいよ〜という心お優しい方は、
ムーンライトノベルズさん、 『好きだから。』 で、よろしくお願い致します。
一応、平日毎日更新を目指しています。
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おはようございます。
とうとうアップされたのですねヾ(*´∀`*)ノ
これから読ませていただきますよ。うふうふ。
2013/12/12(木) 午前 8:15
<るりけい様>


こんにちは。
とうとうアップしましたよ
読んで頂けるようで、感謝です
私もるりけいさんと銀南さんの作品が読みたくて、今更ではありますが、
『dNoVeLs』さんの方に会員登録しました。
ただ感想の伝え方が、今一つ分からないんですけど
頑張って勉強します
2013/12/12(木) 午後 4:28
読みましたーーーーvvvvvv
すっごい色っぽいっていうか、こういう空気好きだなあvvvvv
すごく透明感のある感じvvv
続き、楽しみにしてますvv
2013/12/12(木) 午後 5:37
dNoVeLsへ会員登録してくださったのですか。
まあ、ありがとうございます。
でもパソコンで読むのがつらかったら無理しないでくださいね。
感想はコメント欄がありましたっけ?
すみません、わたしもよくわからないです。
ノベ友になってやり取りする方が多いです。
2013/12/13(金) 午前 0:12
<はっぴー様>

読んでいただけましたか。
ありがとうございます
雰囲気を気に入っていただけたようで、雰囲気重視の私としましては、とても嬉しいです
続きは別サイトになってしまい、申し訳ありませんが、
よろしかったら読んでやってください。
2013/12/13(金) 午後 3:06
<るりけい様>
最近は、パソコン文章も読めるようになってきたので、
近々、読ませて頂きたいと思っています
ノベ友のアドバイス、ありがとうございました。
早速、銀南さんとノベ友になり、るりけいさんにも申請を送らせて頂きました。
dNoVeLsさんの方でも、よろしくお願い致します
2013/12/13(金) 午後 3:09