心の趣くままに

捨て猫、ミオッチ。ただいま密かにダイエット中!しかし変わらぬウエスト周りに、最近では、ゴン太と呼んでいます(^_^;)

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無事掲載が終わりました『好きだから。』
 
最終話掲載日には、13000人以上の方が訪問して下さり、ひたすら感謝です
 
登場人物の勝利と椿を私が気に入っていること、また続編を望むお言葉を頂き、頑張って書きました
 
プロット段階では「思い切りセックスがしたい」ちゃんちゃんと、軽いノリで、3話で終わる予定でした。
 
ですが、書き進めていくうちに話しは重苦しくなり、気が付けが原稿用紙142枚の大作に
 
それが、こちら
 
 
 
 
 
 普段、表情を変えない面差し同様、波立たない性格だと思っていた椿が、ドキュメンタリーや映画を見ただけでティッシュが必要なほど涙を零すこと。
 
 肉だけでなく生魚が苦手なこと。
 
 意外にも不器用で、一つのことに集中すると足元が疎かになり、何もない所で思い切り転ぶこと。
 
 香水など使用していないのになぜか甘く香る身体は、幼子のように平熱が高いこと。
 
 普段は気の強い性格が、体調を崩すと弱くなり甘えたがること。
 
 性に対し酷く奥手で、その手の雑誌を全く読んだことがないこと。
 
 唯一の黒子が、淡く陰部を覆う茂みの中にあること。
 
 絶頂を迎えた時、閉ざした瞳を覆う長い睫毛が小刻みに震え、眦から涙が零れ落ちること。
 
 椿と付き合い始めて気付いたこと、知ったことは数多い。
 
 それらの情報の多くは、恐らく勝利しか知りえないものだろう。
 
 それが心を許してくれているからこそ見せてくれる仕草、表情なのだと思うと、それだけで春の嵐に舞い上がる桜の花びらのように気分が上昇する。
 
 椿との関係を失うことを恐れ、必死になっていた頃にはまるで想像出来なかった、天国で暮らしているかのような幸福な日々。
 
 そんな密月な日々に、勝利は痛感した。
 
人の欲に際限などないのだと。
 
「あー思い切りセックスがしたい」
 
 ため息と共に思わず零れ落ちた欲望に、家にいると気が散るからと勉強をしに来ていた竜一が、座卓の向こうで渋面を作った。
 
「振られた男の前で、何言いやがる」
 
「だってよー」
 
「雪村、毎週金曜の夜、泊まっていくんだろう。好きなだけすりゃあいいじゃねえか」
 
 吐き捨てるように綴られた言葉に、今度は勝利が渋面を作った。
 
「椿は身体が弱いんだ」
 
 冬休みが開け学校が始まって以来、日曜日は航平の勉強を見たいからと、金曜日の夜から土曜日の夕食まで勝利の家で過ごすようになった。
 
 好きだという自覚のない時ですら欲した身体だ。
 
 思いを自覚し、晴れて恋人同士となった今、一つ屋根の下で同じ時間を過ごしているのに求めないはずがない。
 
 いくら性に疎い椿でも、泊まっていくのだから勝利の欲望を受け入れる覚悟はしているのだろう。
 
 行為を求めても躊躇いや戸惑い、恥じらいは見せても、明確な拒絶をするということはなかった。
 
 だから猛る心のままに喘ぎの中に発せられた許しの言葉を捻じ伏せて、意識が霧散するまで貫いた。
 
 結果、発熱した身体をタクシーで自宅まで送り届けたのは、冬休み明けの最初の土曜日のことだった。
 
 取引きとして行った行為の再来のような出来事に、勝利は猛省した。
 
 猛省したからといって甘く香る体臭に疼く下半身に、触れないことが不可能ならばと一度の吐精で開放するようにした。
 
 一度で行為を終えることに対し、色付いた面差しに安堵と困惑、謝罪の入り混じった表情を浮かべる椿が何とも切なくて、酷く申し訳ない気持ちになる。
 
 本来なら貫く行為は負担を考えて避けるべきだと思う。
 
 疲れ切った椿を前に毎回反省する。
 
だが尽きることのない欲望に二人きりになれば求め、更に強く欲してしまう強欲さを自粛させるのに精一杯で、行為自体を止められないのが現実だ。
 
「無理はさせられない」
 
「けっ、いつの間にか椿とか呼ぶようになりやがってよ」
 
 ため息を織り込んでの言葉を蹴飛ばすように、不貞腐れた面差しで竜一が強く言葉を吐く。
 
「あんなお天使様みたいな美人と毎週セックス出来るんだ。思い切り出来なくても有難いと思いやがれ」
 
「……毎週じゃない」
 
「あっ?」
 
「毎週はしていない」
 
「なんで!?」
 
「言っただろう、身体が弱いって」
 
「……確かにつれえ話しだな」
 
 掴みかからんばかりの勢いで大きく身を乗り出し驚愕の表情で叫んだ竜一だったが、勝利の下半身事情を自分の身に置き換えたのだろう。
 
 浮かせた腰をユルユルと座布団に戻すと考え込むように腕組みをし、眉間に深い縦皺を刻んだ。
 
 好きな相手と思うようにセックス出来ないことが、まるで国家の一大事であるかのように沈みこむ竜一に、自分を思う気持ちを強く感じ苦笑する。
 
「別にさ、毎週出来なくてもいいんだよ。ただ、もっと思い切り愛し合いたいというか……」
 
 セックスを覚えたての子供ではないのだ。
 
 何も三回も四回も続けざまに欲望を体内に放出したいわけではない。
 
 出来ればしたいが、自制が聞かないほど経験値が低いわけではない。
 
 勝利が思い切りセックスがしたいと言ったのは行為云々ではなく、メンタルの部分を差しての言葉だ。
 
 その心情が上手く言葉に出来ず言いよどむ勝利に、竜一は脱色した眉毛の片方だけを器用に上げた。
 
「なんだ、その思い切り愛し合いたいとかいう乙女チックな発想はよ」
 
「笑いたければ笑えばいいだろう」
 
「ダチの本気の恋を笑うほど、俺はバカじゃねえ」
 
 白松学園から比べればかなりレベルの低い高校に進学した竜一だが、以前、椿が指摘したように決して頭が悪かったわけではない。
 
 本気になれば白松学園を狙えるレベルだと勝利は思っている。
 
 ただ別のことに本気になったため、勉強が疎かになっただけだ。
 
 そんな竜一だからこそ、地方の小さな集まりに過ぎなかった集団を、広域にその名を轟かせる一大勢力へと導けたのだろう。
 
 竜一の魅力は、頭の良さだけではない。
 
 一度自分の懐に入れた人間は、性別に関わらず全力で守り抜く。
 
 損得など考えず、見返りなどまるで求めない竜一は、誰よりも情が厚い人間だ。
 
 だからこそ二百人もの人間が総長、総長と慕い、たかが追試試験に我先にと集まったのだ。
 
 総長のためなら死ねると考えている人間は、一人や二人ではないはずだ。
 
 今も組んだ腕を解かない真剣な面持ちから、小馬鹿にしたような言葉を発しながらも、勝利の恋を本気で心配しているのが理解出来た。
 
 その相手というのが、自分が思いを告げて実らなかった思い人だというのに。
 
 もし自分が竜一と同じ立場だったら、応援出来る自身は正直ない。
 
 その度量の狭さが、自分の欲望だけを押し付けるような、余裕のない恋を生み出しているのではないだろうか。
 
 気質を検分したところで、椿に対する欲求や欲望が軽減するはずもなく、その強欲さに無意識のため息が零れ落ちる。
 
「ばかじゃねえが、してやれるアドバイスもねえ。悪いな」
 
 真剣な面持ちを崩さないままの言葉に勝利は苦笑した。
 
「いいんだよ。原因は分かっているんだ」
 
「原因?」
 
「ああ。俺がもっと大人な態度が取れればいいんだよ。ガッつき過ぎてるんだ」
 
「ガッつかない恋愛なんてねえだろう」
 
「うん。でも何て言ったらいいんだろう。心に余裕がないっていうか……ガッつき過ぎて、俺ばっかりが気持ちよくて、椿は辛いだけなんじゃないかと思って」
 
「まあ野郎同士のセックスは、受け入れる側の負担は相当なもんだっていうからな」
 
 竜一の言うとおりだと思う。
 
 元々、排泄を目的として作られた器官だ。
 
 そこへそそり立つ欲望を捻じ込むなど負担以外の何物でもない。
 
 ただでさえ丈夫でない、同性とは思えない線の細い身体だ。
 
 愉悦に震えるよりも、痛みに涙を散らし震えている時間の方がはるかに長い。
 
「何だか無理強いしているみたいで気が咎める」
 
 自分が椿だったら、欲望を内に収めるなど、とても許容出来る行為ではない。
 
 それでも受け入れてくれるのは、自分を思ってくれているからだろう。
 
 その思いは勝利にとって何よりの喜びだ。
 
 だが椿にとっては忍耐以外の何物でもないのだと、傷みに震える身体に、きつく閉ざされた眦から零れ落ちる涙に、身体を重ねるたびに痛感する。
 
「それはまあ……仕方ねえんじゃねえのか」
 
 椿に対し申し訳なく思う気持ちに、いつの間にか伏していた面差しを竜一へと向ける。
 
「あのお天使様、頭はいいけど恋愛経験はゼロなんだろう。そっち方面は幼稚園児も同じだ。幼稚園児に大人な恋愛をぶつけたところで、身体も気持ちもついていけねえんだろうよ。そこは察してやれ」
 
 至極真っ当な答え。
 
 ただ真っ当過ぎて、なぜか怒りの沸点に触れた。
 
「椿が恋愛に関して幼いのは分かっている。でも来年には結婚出来る年齢だ。大人としての恋愛を望むのは仕方ないことだろう」
 
 眉間に力を込めイラつく思いで綴った言葉に、内緒話をするように身を乗り出した竜一が、解いた右手を座卓の上に置く。
 
「ようするに雪村に思い切り喘いでほしいわけだ」
 
「いやらしい言い方するなよ」
 
「思い切りセックスがしたいとか言いやがったくせに、なに言ってやがんだ」
 
 一重の相貌で睨みあげるようにして発せられた露骨な物言いに身を引き渋面を作る勝利に、竜一が言葉を吐き捨てる。
 
「とにかく雪村を思い切り喘がせて、よがらせてえわけだろう」
 
「……まあ……な……」
 
 メンタルな面だの何だの体裁の良い言葉を脳内で取り繕っても、結局は欲望に忠実な自分に何とも情けない気持ちでいる勝利の目の前で、悪戯を思いついた幼子のような笑みが竜一の口元に浮かんだ。
 
「いいクスリがあるぞ」
 
 思いも寄らない台詞に勝利は般若のようにカッと両目を見開き大きく叫んだ。
 
「椿は身体が弱いんだ! ドラッグなんかやらせられるか!」
 
「安心しろ。危ねえクスリじゃねえ。仲間内で実証済みだ」
 
「却下だ」
 
「だったら酒を飲ませるってのはどうだ」
 
「くそ真面目な椿が酒なんか飲むはずないだろう」
 
「だったら我慢しろ」
 
 クスリだ酒だのは単なる前振りで、我慢こそが唯一無二の正解だと言わんばかりの物言いに、その正当性に咽奥がグッと鳴る。
 
「まだ付き合いだして一月ちょっとなんだろう。幼稚園児相手に、いい大人がガツガツするな」
 
 言葉を返せない勝利に諭すように告げた竜一が、机の上に乗り上げんばかりの勢いで更に大きく身を乗り出す。
 
「雪村泣かせたら、いくらおまえでも容赦しねえからな」
 
 発光したような瞳の揺らめきに、未だ椿に対し思いがあることを知る。
 
 その思いを隠して、自分の話を嫌がらずに聞いてくれた竜一は、自分よりずっと大人だ。
 
 竜一なら航平のいじめ問題を聞かされた時、セックスを強要するようなことはしなかっただろう。
 
 顔馴染みだからといって、何の見返りも求めず助けたに違いない。
 
 そんな男気気質の竜一と付き合った方が、椿にとっては幸せだったのかもしれない。
 
「わかってるよ」
 
 だからといって、今更、椿を譲る気になどなれるはずもない。
 
「わかってる」
 
 竜一の思いも、椿の性の疎さも自身に再認識させるように、閉ざした面差しでただ同じ言葉を繰り返した。
 
 
 
 
 
続き、読んでやってもいいよという、寛大な方は、こちらから宜しくお願い致します
 
 
 
 
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