きみがそうやって生きているのは、おれがまだタマシイをつかまえているからなんだぜ―― ウヅマキ商會を営む橘河にタマシイを拾われた岬。 蛇を捕まえたり、昭和32年生まれの少年に傘を届けたり、 アルバイトとして様々な雑事を引き受けるが、背後には常に怪しげな気配が…。 時空を超えて煌く8篇の和風幻想譚。 『よろず春夏冬中』に登場した、橘河と市村の物語です。 橘河に魂の存在をつかまれている市村。 そのせいで、何でも屋の橘河の会社で、働かされることになります。 舞い込む仕事は、常識を逸脱したものばかり。 見ず知らずの花嫁と結婚させられたり、 過去の住人である少年に傘を届けに行ったり。 時には、命を落としそうにもなります。 こう記すと、市村は、とても可愛そうに思えますが、 そこは、長野さんの作品に登場する少年。 悲壮感にくれることもなく、深く嘆くこともなく、 淡々と、あるがままに受け止め、普通に日常を刻んでゆきます。 物語の後半、たましいの存在がつかめない、 市村の兄・峠の登場により、岬の秘密が明かされます。 思わず「おお〜〜〜(@◇@)」となりました。 鳥肌が立つほどの、切なさです。 この瞬間、私はこの物語が、とても好きになりました。 自分を「あめふらし」だという、怪しさいっぱいの橘河。
『左近の桜』に登場する教師、羽ノ浦と同一人物に違いない! と、勝手に妄想し楽しんでいます。 |
読書 《な行の作家》
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希いを叶える貝殻細工の小箱から…。置き薬屋が残した試供品の酔い止めから…。 朝顔市で買った夕顔の鉢植えから…。和泉屋の苺のショートケーキから…。 骨董商で見つけた蓋つきの飯茶碗から…。 思いがけないことから、彼らの運命は動きはじめる。 或るときは異界と交じり、或るときは時空を超え、妖しく煌く14の極上短篇集。 どのお話も、日常の隙間から零れ落ちたような、不思議なお話です。 全体的に、腐の薫りがします。 『左近の桜』に近い雰囲気です。 「何でそこで関係を結ぶかな(@◇@)」と思わなくもないのですが……。 まあ、それが長野作品という事でしょう。 詩的な表現で、文学を感じますが、文章が硬質に思えて、
頭の悪い私には、その世界観を堪能しきれなかったような気がします。 |
ケンタウリ・プロキシマ。 “星の名前”を教えてくれた宵里(しょうり)という名の少年は、 いつもアビを魅了してやまない。 ソォダ水のはじける音、天使の枕、流星群の観測……秋の新学期から、 翌年の夏期休暇まで、二人が過ごした一年足らずの日々を描く。 長野さんの初期作品です。 この頃の作品は、たくさん読みました。 異国を思わせるような、現存しない世界。 洋風の雰囲気を感じさせながら、美しい漢字の少年達。 日常の隙間を描く、現在の作品とはまるで違う、 幻想的で異世界を思わせる作品です。 最近の作品を読み、長野さんのファンになった方には、 異質に感じる世界観かなと、思ったりします。 世相が変わるように、人の思いも変わります。 同じように、書きたい物、書ける物も、 時と共に変わってゆきます。 「昔の作風の方が良かった」という言葉を耳にしたりしますが、 人の心は、いつまでも同じ所に留まっていられるわけもなく、 時と共に作風が変わるのは、仕方がないことだと思っています。 変化した作品を受け入れられないということは、 その作者と違った方向に心が動き、成長しているのだと思います。 昔の作品は、同性の間に愛情があるのではないかと思わせながらも、 あくまでも二人の間に存在するものは、友情である、 とうい感じの作品が多かったです。 現在の作品は、同性に思いを寄せ、時に関係を持つこともあります。 昔の作品を多数読んでいた私ですが、現在の作品は、
決して嫌いではありません。 ただ、過去の作品のような、独特な世界観の少年達の物語を、 懐かしく思い、読み返してみたいと思うのも事実です。 |
武蔵野にたたずむ一軒家。じつは、男同士が忍び逢う宿屋である。 この宿「左近」の長男で十六歳の桜蔵にはその気もないが、 あやかしの者たちが現れては、交わりを求めてくる。 そのたびに逃れようとする桜蔵だが…。 春の名残が漂う頃、「左近」の長男・桜蔵のもとに黒ずくめの男が現れて、 「クロツラを駆除いたします」という怪しげな売り込みのちらしを置いていった。 数日ののち、離れに移ってきた借家人の骸が押し入れから転がり出た。 そこへくだんの男が現れて言うには、 クロツラに奪われたタマシイを取り戻せば息を吹きかえすと…。 魂を喰う犬を連れた男、この世の限りに交わりを求める男、 武蔵野にたたずむ隠れ宿「左近」の桜蔵を奇怪な出来事が見舞う…。 うららさんや、桜鈴さんの記事を読んで、ずっと読みたいと思っていた本です。 普段利用している会社の近くの図書館にはなく、 住居のある、遠く離れた図書館に、ようやく借りに行きました。 生物学的には男性だけれども、周囲の人から「女」と呼ばれる桜蔵(さくら)。 驚くくらい襲われて、人ならざるものと望まぬうちに、身体を重ねてしまいます。 もう「しっかりしなよ!」と言いたくなるくらいに。 行為を受け入れている間は、大概意識が飛んでいるのですが、 目を覚ましても、悲愴感にくれることなく、淡々としています。 「交わってしまったものは仕方がない」といった感じです。 その辺りは、ある意味、男らしいです。 人ならざるものと交わってしまうことを考え込まず、日常の一端のように受け入れるせいか、 重くなりがちな話も引きずることなく、さらりと読むことが出来ます。 けれども、誰にでもお薦め出来る……という本ではありません。 長野作品を数多く読んだ私でも、結構、どっきり・びっくりしました。 風景描写が美しく、艶のある文章に文学を感じますが、
同性愛に抵抗のない方でないと、厳しいかなと思う物語です。 |
学生課で紹介された猫シッターのアルバイトで、一郎は“猫飼亭”なる屋敷を訪れる。 家主とその美しい兄弟の奇妙な注文に応えるうちに、彼は不思議な世界をのぞくことになり……。 庭の桜に誘われた“猫飼亭”を訪れる者たちが見た「極楽」を描く、4つの物語。 心の友、Mさんのお薦めで読んだ本です。 今頃、人生最大の修羅場の真っ最中かと思います。 どうか、頑張って下さい!! 大正時代を思わせるような、レトロな雰囲気の『猫飼亭』 その危うく、耽美な雰囲気に吸い寄せられるように、人々が訪れます。 殿方同士の性的関係を描いた、愛のお話です。 直接的な表現ではないにも関わらず、なまじっかなBLよりも艶があり、 深い色気を感じます。 四つの物語から成っているのですが、私は、提燈を届けるお話が、一番好きです。 命を絶つことで、思いを遂げようとする兄。 そんな兄の思いを、受け止めきれない弟。 長野さんの描く兄弟は、どこかもどかしく、切ないです。 『猫飼亭』には、四人の兄弟が住んでいます。
妖しい雰囲気の末弟がいいな……と、ずっと思いながら読んでいたのですが、 ラストのお話で、星君に心を持っていかれました。 他の兄弟と違って奥手で、自分に自信がないという星君が、とても可愛かったです。 |





