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7月10日、一人の名舞姫が舞台を去った。18年にわたるステージでの活躍、その最後の舞台となったのは、デビューと同じ「浅草」。舞姫の名は「TAKAKO」。そのラストステージを見つめた。
この日は久しぶりの「日曜楽日」、しかもTAKAKOさん引退とあって混むのは目に見えていたが、それは想像を遙かに超えていた。2回目の時点で客席はほぼ埋まり、後方に立ち見客が20人ほど並ぶ。特に震災以来、客入りを危ぶむ声も聞かれていただけに、この入りには正直驚かされた。しかしこれはまだほんの序の口に過ぎなかった。
3回目終了後に、「THE浅草69」の珍さんがMCを務める特別コーナーが企画されていた。本来は「TAKAKOさん生インタビュー」だったはずだが、本人が「恥ずかしい」と辞退したとかで、代わりに友人の小野今日子さんから寄せられた手紙を珍さんが代読。さらに恒例、手紙のコピーを場内観客にプレゼントの大サービス。ところがコピーした100枚では足りないほどの客入りで、後方の観客は手に入らなかった模様(この手紙、P氏によって「THE浅草69ブログ」に全文公開されたのだが、いつもの“ネタ”じゃありませんよね…Pさん?)。
その後、記念品争奪大じゃんけん大会が繰り広げられる。賞品は1等「TAKAKOさんの今月のタイムカード」(賞品説明での「なんと、遅刻がありません!」でドッカンドッカン笑いがくることからも、場内がTAKAKOさんファンに埋め尽くされていることがわかる)。2等「TAKAKOさん直筆サイン入り小野今日子さんの手紙」。TAKAKOさんとのじゃんけん勝負に勝ち残ったのは3人。そこで急遽、3等賞品に、3回目の2景でなぜか登場した「WANTED 水島」の手配ポスターが追加され、勝った順番に賞品が授与された。 さらに立ち見客が増えた4回目。1景の海賊との対決シーンの群舞では、本来は1本だけ持つはずの棒を2本持ったTAKAKOさんがエア・ドラムに興じたり、2景の酒盛りの場面では、花道かぶりの観客に紙コップを配ってビールを振る舞ったりと、既に「楽日まつり」の自由空間に。もちろんTAKAKOさんメインの5景の盛り上がりは、一瞬「まだもう1回あるよね?」と思ってしまうほどの熱いものに。しかしこの認識が甘かったことを、約2時間後に思い知らされることになる。
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いよいよ最終回の5回目。客席はもちろんすべて埋まり、立ち客の列は、後方から上手、下手それぞれの袖まで伸び、さらにところどころ前列、後列と二重になっているほど。立ち客だけでざっと数えて80人。ということは客席も含めれば200人を超える人たちがこれから始まるステージを目に焼き付けようと集まったことになる。前盆正面には、TAKAKOさん最後のステージを見届けようという同期や後輩の舞姫、ダンサーの姿も多数見受けられた。
中休憩を挟んで、後半の予鈴の鐘が鳴る。期せずして沸き上がる拍手。幕が開く前から拍手が鳴り響く光景を初めて見た。幕が開き音楽が始まった瞬間から、会場内に充満する、これまたこれまで聞いたことのないような大きさの手拍子が始まった。居合わせた観客のほとんどが手拍子をしている。かつて、こんな光景を目にしたことはなかった。そしてその視線の集まる先、檻の中で妖しくうごめくTAKAKOさん。TAKAKOさんだけはいつもと変わらず、少なくとも見た目には変わらず、最後のメイン景を演じている。
前盆に進み、いったん静かな曲で盆に伏せるTAKAKOさん。その一挙手一投足を見逃すまいと、張り詰めた緊張感を持って水を打ったように静まりかえる場内。その時、TAKAKOさんの閉じた目に去来したものは、なんだったのであろうか。 雷鳴がとどろく。その刹那、すべてを解放するように、さらに一段、ボリュームの上がった手拍子が始まった。ジャッキアップした前盆の上から、四方八方、すべての方向に向けて笑顔とアクションを送るTAKAKOさん。劇場に集うすべての人たちへの感謝を込めた、渾身の舞のように私には見えた。前盆が着地すると同時に、通路には花束や贈り物を手にした人たちが列を作る。その数、およそ20人。花束を受け取った一人一人と握手をするTAKAKOさん。その顔は笑顔、涙はない。しかし、涙をこらえきれない後輩からご祝儀袋を受け取ったときだけ、表情がゆがんだように見えたのは気のせいだったろうか。
膨大な花束を見事に担いだTAKAKOさん。既に移動盆ははるか後方。歩いて戻る途中、どうしても落ちてしまう帽子と、いくつかの花束を移動盆まで運ぶサポートをする常連さんが頼もしい。しかしここまでで曲はほぼ終わりかけている。移動盆は既に本舞台へと引いている。曲終わりに間に合うのか、との心配は無用だった。そこには閉まる銀幕の手前で、鳴り響く拍手を受けて、手を広げ、最後の最後まで感謝のポーズをとり続けるTAKAKOさんの姿があった。劇場側も一時、進行を止めている。ピンスポを浴び、上手、下手、そしてセンターに向かってお礼をするTAKAKOさん。その顔は、笑顔であった。
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フィナーレ終了後の「楽日あいさつ」。共演者一人一人が、それぞれの言葉でTAKAKOさんへの感謝を述べる。中でも印象的だったのが、風見渚だった。「ストリップを始めるきっかけになったのが、TAKAKOさんのステージをお勉強したことだった。初めて見て、こんなきれいな踊りをしてみたいと思った。本当にありがとうございました」と、途中は涙で詰まりながら、自らを導いてくれた大先輩への精一杯のお礼の言葉を述べていた。
その感動的な光景の後、マイクがひょいと隣のTAKAKOさんの手へ。「えっ、まだ共演者あいさつが途中では…」と、場内の心配する空気を察してか、TAKAKOさん、「ロック、サイコー!」と叫んで場を和ませる。さすが…。 共演者あいさつに加え、ダンサーからもあいさつという粋な計らいの後、TAKAKOさんがマイクをにぎる。
「18年間、誠にありがとうございました。イエーイ!!一回やってみたかった…。
これからもどうか、この劇場の素敵な夢と文化を残していってください。お願い致します。 盛り上げていってください。お願いします。」 TAKAKOさんが最後に残したメッセージは、自らが歩んできた「ストリップ」というパフォーマンスへの愛に満ちあふれる「お願い」であった。涙のない、笑顔と情熱のステージ。1993年2月1日、浅草ロック座でデビューした「TAKAKOさん」は、最後まで「TAKAKOさん」としての姿をファンに見せ続けた。2011年7月10日午後10時52分、最後の幕が下りるまで。
(一部敬称略・観劇日:平成23年7月10日(日))
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観劇レビュー【浅草】
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おはようございます!
レポートありがとうございます。
私も昨日の2回目途中から入場しましたが、ある程度は混雑を予想していましたが、ロビーから劇場内に入った瞬間、あまりの人の多さに面食らいました(苦笑)。
そして昨日は観客数だけではなく、3〜4回目間のインターバルでの演出や4〜5回目の2景のアドリブ、5回目の5景での万雷の手拍子、拍手と驚きの連続でした!
公演中は私にとりましては「至福の時」を過ごせましたが、同時に千秋楽しか行けなくて残念に感じてしまいました(涙)。
スピーチにもありましたが、このような素晴らしい文化が延々と続いていってほしいものです。
2011/7/11(月) 午前 5:59 [ ひでき/is ]
浅草楽日観劇報告、ありがとうございます。久々に、報告拝見して感動しました。当日、現場にはいませんが、貴殿の報告拝見して、何となく臨場感を味わえました。
今回のTAKAKO様の去り方は、私の理想ですね!
2011/7/11(月) 午前 7:18 [ もりもり ]
おはようございます。
昨日は色々とありすぎて言葉が思いつきません。
ただ、ひでき/isさんがおっしゃるとおり驚きの連続と、
そして本当に感動しました。
あの瞬間に立ち会えてよかったです。
2011/7/11(月) 午前 7:29 [ ひろ ]
浅草楽日レビューありがとうございます。
私は一度もこの公演を見せていただいてないですが、レビューを読んでて、もりもりさんのおっしゃるように臨場感が伝わり、心に響くものがありました。
いつもながら読み応えがありお見事です。
2011/7/11(月) 午前 8:36 [ はる ]
TAKAKOさん最後の浅草レビュー、しっかり読ましていただきました。
ありがとうございました。
2011/7/11(月) 午前 8:59 [ やじろべえ ]
千秋楽、TAKAKOさんのラストランを浅草ロック座ファンの皆さんと共有できて幸せです。あの熱い想いの空間にいて、ストリップのファンになって本当に良かったと思いました。これからも踊り子さんの魂が継承されていくことを願います。
2011/7/11(月) 午前 9:39 [ ひーこ改め、やっしー ]
TAKAKOさんの引退イベントは盛大に行われたようでね、
タイムカードは笑いました。
舞姫18年間、ご苦労様でした。
競馬が終わった後に浅草へ行ってみようかなと思っていましたが
好きな馬が大敗して、資金がなくなりました。
2011/7/11(月) 午後 5:21 [ イオス ]
お疲れ様でした。
これぞまさしくレポートのお手本ですね。
私のレポートもどきはUPする必要もないようです。
2011/7/11(月) 午後 11:47 [ U ]
「わりとアッサリまとめましたね」って言うのはハードル上げ過ぎ?(笑)もしくは嫌みですかね?(笑)正直それ程の一夜でしたね!お別れを言いに来た「踊り子サン」の想いは勿論ですが、何よりも「ストファン」の情念のようなものが渦巻いていた感じで、まさに「異空間・異次元」の世界に居たような…。五回目「友坂麗」サンが花束渡して戻りながら涙ぐんでいた姿はとても印象的でした。色々思う事が有りすぎて、昨夜は帰ってからもぼーっとしていました。あんなに濃密な空間はなかなか経験出来ませんよね…全ての踊り子サンにとって理想的なフィナーレではないかと思いますし、これからの励みになる事を願います。
ホントに行って良かったと思います、合間に盆の脇で四人でお話し出来たのも、良い想い出になりました。ありがとうございました!
2011/7/12(火) 午前 0:54 [ 則村 ]
みなさま、コメントありがとうございました。
大変多くの方にお読みいただき、過分なまでのお言葉を頂きましたことに、まずお礼申し上げたいと思います。
が、先ほど自ら読み返してみて、自分の筆力のなさにガッカリしました。則村さんが仰るとおりで、昨日の夜、自分が目の当たりにした光景の衝撃や熱気をなぜもっと表現できないのか…。もちろん、実際に見た体験に到底、筆が及ばないことははじめから分かっていますが、ラストステージの空間の片隅にいることを許された者として、昨夜のあの光景から受けた力や声、感情、情念を、読んでいただく方に、そして実際にいらっしゃった方にも伝わるように書き綴り得なかったことを、大変申し訳なく思っています。
TAKAKOさんがラストメッセージとして伝えたかった「残して欲しいストリップの夢と文化」とは、いったいどのようなものであるのか。これからも稚拙なレビューをまとめる中で、見つめ、考えていきたいと思っています。今後ともぜひお付き合いを賜れれば幸いです。どうぞよろしくお願い致します。
2011/7/12(火) 午前 2:15 [ 名無しの観劇者 ]
いえいえ、その場の「熱」を感じることは出来ましたよ。
そしてこれはいつもですが、観劇者さんの文章からは、ストリップに対する「愛情」も強く感じています。
難しく考えず、楽しくて、綺麗で、素敵だったのなら、それでいい!と思いますよ。
2011/7/12(火) 午前 2:22
ひかりさん、コメントありがとうございました。
どうも私は「右脳」の働きが鈍く(もしかしたら全脳か?)、「左脳」で観劇しているような気がしてきました。
芸術を感性で捉えられる方に憧れます。ストの舞台も、感性で観劇できたらいいのですが…(「慣性」で観ているだろ!とのツッコミは、先に自爆することで阻止しておきます)。
2011/7/12(火) 午前 3:11 [ 名無しの観劇者 ]
たしかにあの場所のあの瞬間の出来事を全て伝えることはできないと思います。
それだけの衝撃でしたから。
その場に居合わせた者しか味わうことができないのもまたライブ(ストリップ)の魅力とも思っていますしね。
しかし、観劇者さんのレポを読み返すと、あの日の出来事が思い出されるようです。
何度かお伝えしていますが、私の中で観劇がゆるぎない地位を築いたのも観劇者さんのレポートによるところが非常に大きいのです。
ただ、その向上心には頭が下がる思いです。
そして比較してしまうと私のレポは文章が支離滅裂で情けない限りです・・・
でもあえて訂正などはしません(笑)
それこそ、感じるままに書き連ねただけですから。
2011/7/12(火) 午前 5:29 [ ひろ ]
なんか、一人ワルモノになってしまいました…(笑)
そうなんですよね、「U」さんも書いているようにレポートなんですよね…「片恋文」の名に惹かれてたどり着いた僕はいつも「名無しの…」サンのレポはヒトの恋文を盗み見ているような感覚で読む事があります。同じ空間に居た時などは、「名無しの…」サンの当日の(冷静な中にも)ドキドキした感じを共有出来たような気がして勝手にシンパシーを感じています。
今回はやや当方の書き方も「アッサリ」し過ぎでしたね、大事な想いを茶化すような事をしてしまいました。ホントに申し訳有りませんでした。
これからも「冷静でアツい」レポを楽しみにしています。
2011/7/12(火) 午前 8:03 [ 則村 ]
ひろさん、コメントありがとうございました。
拙ブログを、観劇のきっかけや、観た舞台を思い出す手掛かりにしていただけたとしたら、とてもうれしいです。
その上で、ご自身の目でライブの舞台をご覧になって、どのようにお感じになったか、みなさまの思いをお聞かせいただきたいなぁ、と思っています。思わぬ視点や見過ごしていた魅力に気づかされる楽しみがありますので。
2011/7/12(火) 午後 0:28 [ 名無しの観劇者 ]
則村さん、コメントありがとうございました。
ワルモノだなんて…とんでもない。「自己反省」なんです。その上で、「やっぱり則村さんには見抜かれちゃったなぁ」という感じです。
しかも、私が拙ブログで目指したいと思っている方向性まで、実に的確に表現してしていただいて、とてもありがたく、うれしく思いました。
これからも「冷静と情熱」「レポと恋文」の間を彷徨いながら、書き記していきたいと思っています。
2011/7/12(火) 午後 0:30 [ 名無しの観劇者 ]